見出し画像

まなび #1サービスデザインとは

まなびの第一弾として、サービスデザインとは何かということについて考えたいと思います。


サービスデザインを勉強していると言うと、9割以上の確率で「サービスデザイン」とはなにか?と聞かれます。そして、人それぞれで定義が異なるので、毎回答えに困ってしまいます…が、私なりの解釈を紹介します。

サービスデザインとは?

まず最初に、私がサービスデザインを通して実現しようとしているのは次の2点です。

  • ユーザー、提供者、社会(最近は地球)にとってWin-Win-Winの仕組みをデザインすること

  • ビジネスとデザイン間など、異なる立場間でのコミュニケーションギャップを埋めること

ビジネス側に寄った説明としては、ミラー(2015年)は、サービスデザインとは、顧客のニーズとビジネスのニーズのバランスを取りながらサービスをデザインするアプローチであり、シームレスで質の高いサービス体験の創造を目指すものであると説明しました。これは、顧客とサービス・デリバリー・チームを巻き込むための共同作業的手法を用い、デザイン思考に根ざしています。このデザインにより、組織はサービスを理解し、包括的で有意義な改善を促進することができます。

また、モーリッツによると、サービスデザインは、サービスにイノベーションを起こし(新しいものを作り)て(既存の)サービスを改良し、クライアントにとっては有益で使い勝手が良くて望ましいサービスを、組織にとっては効率的かつ効果的なサービスを、実現するのに一役買う。ホリスティック(全体的)で多分野にまたがる統合的な新しい分野である(2005)、とのこと。

実例として、イギリス政府がサービスデザイナー、エンジニアなどを中心に、'Government Digital Service' (GDS)という組織を立ち上げました。彼らは、公共サービスのWebページのガイドライン作成やプロタイプを通じて、デジタルトランスフォーメーションをより低コストでユーザーフレンドリーなサービスの提供をしています。(イギリス公共組織関連のサイトのUIは統一されていてとても見やすいです)

近年では、経済産業省が2018年にデザイン経営宣言を出し、日本でもこのデザインアプローチを経営に取り入れ、よりユーザーを中心としたサービス設計をすることが注目されています。

しかしながら、このデザインアプローチにはUI・UX・マーケティングも関わっており、何を「サービスデザイン」と呼ぶかは人それぞれ定義が異なると思います。
個人的には、抽象的になりますが、サービスデザインは「(人・対象を)理解する」ためのツールだと思っています。これはある種、マネジメントとは逆の概念と考えていて、MBAが組織のマネジメントの方法を学ぶのであれば、自身が通っているサービスデザインのMFAでは、人などを理解する方法を学ぶと言えると思います。

なぜサービスデザインが必要なのか?

VUCA (volatility, uncertainty, complexity, and ambiguity)と呼ばれる、不確実性が高く将来の予測が困難な時代になっていることが一つ挙げられると思います。例えば、誰がコロナウィルスの流行を予想でき、それに備えることが出来たでしょうか。このように、過去からのロジカルな分析だけでは太刀打ちできないという点で、「デザイン」を活用することへ注目が集まっているといえます。サービスデザインでは、デザインリサーチと呼ばれる手法を活用しながら、迅速にプロトタイプを作り、トライアンドエラーの反復を繰り返しながら開発していくのが強みです。完璧を目指すのではなく、課題に対応できるだけの最低限の機能を迅速に作っていきます。

どうデザインするのか?

様々な方法論がありますが、ダブルダイアモンドと呼ばれる、2つの発散・収束のプロセスを経ながら開発を進めていくことが多いです。(実際はこのダイアモンドの中で何度も発散と収束を繰り返します)

ダブルダイアモンド,  かじしま さちこ (2018)


サービスデザインは人間中心に作り上げていくため、開発の段階からユーザーやステークホルダーと共に、インタビュー、ワークショップやプロトタイピング等の様々なツールを使いながら、一緒に開発していきます。また、一つの視点からだけでなく、システムマップというものを用いて、社会や組織のシステム全体から包括的にアプローチしていきます。思い込みや偏見を減らし、開発していくことができるのが、多様な今の社会での強みだと思います。

プロトタイプの例

サービスデザインの課題

ここまで良い面を説明してきましたが、個人的には特に日本の従来のロジック偏重の風土の中で、インパクトの数量化が難しいデザインをどう取り入れるか、理解してもらうかということが課題だと思っています。最近は上述の通り、デザインを取り入れる風土を醸成する動きが国からも出ていますが、短期的にはロジカルシンキングの考えも取り入れながら、デザインを説明する作業が必要なのではないかと考えています。

参考文献

Design Council (2023). The Double Diamond - Design Council. [online] www.designcouncil.org.uk. Available at: https://www.designcouncil.org.uk/our-resources/the-double-diamond/ [Accessed 21 Jul. 2023].

GOV.UK (2023). Government Digital Service. [online] GOV.UK. Available at: https://www.gov.uk/government/organisations/government-digital-service [Accessed 21 Jul. 2023].

かじしまさちこ (2018). ダブルダイヤモンド. [online] UX TIMES. Available at: https://uxdaystokyo.com/articles/glossary/doublediamond/#:~:text=%E6%AD%A3%E3%81%97%E3%81%84%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%82%92%E8%A6%8B%E3%81%A4%E3%81%91%E3%82%8B%E6%AE%B5%E9%9A%8E [Accessed 21 Jul. 2023].

Miller, M.E. (2015). How many service designers does it take to define Service Design? [online] Medium. Available at: https://blog.practicalservicedesign.com/how-many-service-designers-does-it-take-to-define-service-design-6f87af060ce9 [Accessed 21 Jul. 2023].

Moritz, S., (2005). Service design. Practical access to an evolving field. Köln International School of Design.


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?