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vol.45 知識民主化の新たな波 (生成AIと活版印刷革命)

はじめに

先日、GoogleからGoogle Notebook LMというサービスが発表されました。

同サービスは、Googleの開発した生成AI Gemini 1.5 Proを活用したリサーチツールであり、ユーザーが指定した特定のデータ (例: PDF、スライド、ウェブURL等) を学習の上、チャットを通じてこれらのデータセットに基づいた回答を得ることができます。

今後「ある特定の専門データを参照して人間と自然言語でやりとりを行う生成AI」という分野はどんどん伸びていき、特に会計士等の士業において様々なチャットボットが出てくるものと想定されます。

そこで、今回は生成AIが士業に与える影響を、グーデンベルグの活版印刷革命と比較しつつ、「知識民主化の新たな波」として記事にまとめてみようとお思います。


生成AIとは?

最近はこの言葉 (生成AI) を見ない日はない、といっても過言ではないですが、一応最初にまとめておこうと思います。生成AIとは、大量のデータを基にテキストや画像、音声などを生成する人工知能技術です。特にGPT-4はその代表例であり、自然な言葉での対話や文書生成が可能となっています。

GPT-4の現状

GPT-4は、2023年4月までの公開情報を学習データとして持っています。しかし、多くのユーザーは、独自の情報を基にやりとりをしたいというニーズを抱えています。たとえば、企業内の機密情報や特定の業界の専門知識を活用したい場合があります。このような場合、どのようにして生成AIに独自の情報を追加するかが課題となります。

独自情報の追加方法

生成AIに独自の情報を追加する方法にはいくつかあります。以下にその代表的な方法を紹介します。

(1) プロンプト

プロンプトは、生成AIに特定の情報を基に応答を生成させる方法の一つです。ユーザーが明示的に指示を与えることで、AIはその指示に従った応答を生成します。しかし、プロンプトだけでは文字数制限等の限界があり (日本語で約25,000字)、より高度な方法が求められます。

(2) RAG

RAG (Retrieval-Augmented Generation) とは、生成AIの性能を向上させる手法であり、特定の独自情報 (例: GPT-4がカバーしていない最新情報や社内の機密情報) を参照させ、それを基に生成AIに回答させる技術となります。

記事の冒頭で触れたGoogle Notebook LMに加え、最近ソフトバンクが提携を発表したPerplexity AIもよく見るようになりました。

また、コードの知識がある方はLangChainというライブラリも有名かと思います。

これらRAGに関連するツールを使用すれば、生成AIと最新の情報や専門的な知識を反映したやりとりが可能となります。

(3) ファインチューニング

ファインチューニングは、特定のデータセットを使用してAIモデルを再学習させる方法です (例: GPT-4のモデル自体を追加学習によって変える)。これにより、特定の分野に特化した応答が可能となります。

専門分野における生成AIの活用

毎日のように生成AIが世界に与える影響といった記事を目にするようになりましたが、今後前節で述べたような方法と共に、独自情報をベースに自然言語でやりとりできるチャットボットが増加すると、士業のビジネスに多大な影響を与えるものと考えられます。

例えば、判例や法律の解釈 (弁護士や税理士)、あるいは会計基準の解釈や監査上の判断 (会計士) に関し、従来、これらの仕事は士業という「ギルド」内での独占業務でした。

しかし、これらの情報がデータセットとして整理され、生成AIと組み合わさることにより、法務、税務、会計といった専門分野に関し、クライアントからの質問をAIが受け付け、適切な回答を提供するといったチャットボットが今後いくつも出てくるものと想定されます。

実際、Open AIのGPTsを見ると、いくつも専門分野にカスタマイズしたGPTsが出てきています。

グーデンベルグの活版印刷革命との類似性

私は、最近のこのような爆発的な生成AIの普及が、グーテンベルクの活版印刷革命に似ていると感じています。

15世紀にグーデンベルグが発明した活版印刷技術は、情報の伝達方法を劇的に変えました。それまで聖書は神父だけが解釈し、独占していましたが、印刷技術の普及により、一般の人々も聖書を読むことができるようになりました。これにより、聖書解釈の民主化が進み、知識が広く共有されるようになったのです。

同様に、生成AIは専門知識の民主化を促進しています。かつては限られた専門家だけが持っていた知識が、AIを通じて広く共有されるようになっています。これにより、多くの人々が専門知識にアクセスできるようになり、今後専門家との情報の非対称性が一気に縮まっていく可能性があります。

まとめ

生成AIとグーデンベルグの活版印刷革命について、情報のアクセスと利用に関する大規模な変革をもたらした点で比較を行い、「知識民主化の新たな波 (生成AIと活版印刷革命)」としてまとめてみましたがいかがでしたでしょうか?

生成AIの爆発的な発展により、今後様々な専門知識が広く共有されるようになり、多くの人々が知識にアクセスできるようになることが期待されます。生成AIはテキストのみならずマルチモーダル化が進んでおり (例: GPT-4o)、今後は画像、音声、及び動画を通じた生成AIとのやりとりも進むものと思われます。

これにより、社会全体が知識に基づいた意思決定を行い、より良い未来を築くことができるでしょう。歴史は繰り返されると言われますが、生成AIによる新たな知識革命は、まさにその好例と言えるでしょう。

おわりに

この記事が少しでもみなさまのお役に立てれば幸いです。ご意見や感想は、noteのコメント欄やX(@tadashiyano3)までお寄せください。

この記事に記載されている内容は、私の個人的な経験と見解に基づくものであり、過去に所属していた組織とは関係ございません。

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