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映画『すくってごらん』


⚠️ネタバレを含みます


一度目に見た時の率直な感想は
「泣けた!笑えた!!楽しかった!!!」
「見終わった時にスッキリした♪」
「もう一度観たい!?」

1度目に観終わった直後は興奮してしまい、友人にラインを連投してしまいました。久しぶりに興奮して、『誰かとこの映画を語り合いたい!』と思えたので、NOTEにまとめてみようと思います。


目次
・ミュージカルアレルギーが起きにくい工夫

・引き算の音楽的演出

・ラップを使った言葉の強調

・音楽を使った心情の対比


「ミュージカルアレルギーが起きにくい工夫」

 私はミュージカルに慣れていないし、どちらかといえば「不自然に歌い出すのは違和感がある」と思っていました。違和感は映画を楽しむ上では非常に厄介で、物語の世界から急に現実世界に連れ戻される原因にもなります。
 そんな私でも違和感なく見る事が出来た理由を考えてみました。

1、音楽が流れ出す理由
 冒頭の『左遷銀行員』ではカーラジオのスイッチを入れた事をきっかけに音楽が流れ出し歌に入ります。この描写が入る事で音楽が流れている事が不自然ではなくなり違和感を感じづらくしています。

2、音楽がなっている状況
 『今でも眩しくて』や『すれ違いのラブソング』では、ライブハウスでバンドの演奏風景も映す事で状況的に違和感を薄くしています。

3、意外と多くの人に経験がありそうな状況
 『Numbers』ではキーボードを叩く音をきっかけにラップへと入っていき、足を踏み鳴らす音等と共にストンプへと発展していきす。自分の出しているちょっとした生活音をリズミカルに鳴らしてしまうという経験がある人は多いのではないでしょうか。

4、歌で想いが伝わらない
 『オンリーユー・オンリーミー』が歌われる場面では、香芝の歌には生駒はのってきません。重要な場面で、敢えてミュージカルらしくない演出を選んだように見えました。

 このように、丁寧に少しずつ違和感を薄めることでミュージカルが苦手な人にも届くように工夫したのではないでしょうか。実際に、私は違和感を感じる事なく映画を楽しめましたし、同じように今までミュージカルが苦手だった人も楽しめるのではないかと思います。


「引き算の音楽的演出」

 全体を通して感じたのはなるべくシンプルに音を作っているのかな?という事です。これは感じ方に個人差があるとは思いますが、意図的に演出されたものではないでしょうか。

1、物語の舞台が田舎町である
 見渡す限りの田園風景を主人公が歩いている場面から始まり、人通りの少ない田舎町を舞台に物語は進んでいきます。そのような景色には、やはりシンプルな楽曲が合うのではないでしょうか。

2、魅力的な歌を聴かせる
 尾上松也さん、百田夏菜子さん、柿澤勇人さん、石田ニコルさん、矢崎広さん
皆さんの歌が本当に魅力的で素敵でした。あれだけ魅力的な歌があれば、聴かせる為に楽曲はなるべくシンプルにってなりますよね。

3、エンディングで流れる主題歌の為に
 沢山の劇中歌が少しずつ混ざり合って『赤い幻夜』の空気を創るような、、、
ちょっと考えすぎかもしれないですが、それぞれが一つの楽曲でありながら、物語の一つの要素であり、主題歌の一つの要素なのかな、と考えてしまいました。

 楽曲はどれもまっすぐ心に響くものばかりだったし、そのおかげで物語に素直に感動出来ました。それぞれの楽曲を聴くだけでも、映画を観た甲斐があったと思わせてくれました。


「ラップを使った言葉の強調」

 劇中では香芝の心情を表す方法としてラップが用いられています。心の声がラップで歌われるのですが、わかりやすくコミカルに表現されていました。

1、テロップを使って単語を強調
 ラップのパートでは歌詞全体ではなく単語だけを表示して、その時の心情を表す言葉がわかりやすく強調されていました。

2、対比される単語で韻を踏む
 元々ラップでは、対比したい言葉で韻を踏む事で強調します。劇中では、東京と田舎であったり、自分と上司過去と現在などの対比がラップによって表現されていたのが印象的でした。

3、本音と建前
 劇中では、香芝が建前の時は普通に喋っていますが、本音はラップで(心の中で)歌っていました。この本音と建前のルールがある事で、感情が暴発してしまう場面での、ラップなのに周りの人に聞こえてしまっている場面も伝わりやすかったです。

 視覚的に強調し、対比を分かりやすくする事で、状況が伝わりやすい工夫がされているように感じました。


「音楽を使った心情の対比」


 劇中では同じ曲を別の人が違う歌詞で歌うという演出がいくつかありました。

1、『左遷銀行員』と『ブレない男』
 左遷銀行員の中では香芝と王寺それぞれのこの田舎町の対する思いが歌われ、そして、ブレない男では矢崎の思いが歌われています。同じテーマにのせて歌われることで、それぞれの思いの違いが伝わってきました。

2、『虚無日々』と『ささやき』
 対照的である香芝王寺。決して交わる事がなさそうな二人ですが、この二曲を聞くと、実はどこか似ているような、心の奥に同じようものを持っているのではないだろうかを感じます。だから、香芝は王寺の鼻歌が心に染みたのではないでしょうか。

 同じ曲を使うことで対比をしている事がわかりやすく。この街の状況や、そこに対するそれぞれの思いを想像しやすかったです。



『まとめ』

 映画を思い返しながら感想を書いていると、また見返したくなってきました。何度も見返したくなるような素敵な映画でした。印象的な映像の見せ方であったり、それぞれの登場人物の見せ方だったり。すごく綺麗なインテリアもあるし、注目するポイントを変えるだけで色々な楽しみ方が出来そうです。映像が好きな人も、美術が好きな人も、人間ドラマが好きな人も、笑いが好きな人も、音楽が好きな人も、それぞれが楽しめる映画ではないでしょうか。 
 パンプレットを読みながら、もう一度思い返して楽しみたいと思います。


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