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台湾の介護制度「長照2.0」をわかりやすく解説

台湾は超高齢社会(65歳以上の人口が総人口の21%以上を占める)の到来が迫っており、高まる介護ニーズに対応するため、政府の介護政策は「第2の10年に入った」と言われています。

現行の台湾の介護制度「長照2.0」は2017年から実施されていますが、それは2007~2016年に実施された「長照1.0」とどのように異なり、どのようなサービスを提供し、申請方法や給付金はどうなっているのでしょうか?

この記事では台湾の介護制度「長照2.0」をわかりやすく解説していきます。


1.「長照」とは何か?

台湾は2018年3月から高齢化率が14%を超える「高齢社会」に突入し(日本は1994年から高齢社会に入る)、2026年までに超高齢社会に突入すると推測されています。

台湾は人口が急速に高齢化しているため、長期的な介護ニーズも増加しています。

2007年に台湾政府は「長期照顧(介護)十年計画」(通称:長照1.0)を承認し、長期的な介護政策および関連業務を正式に開始しました。

台湾の「長期介護サービス」とは、「既に6か月以上自立して生活ができないかそうなると予想される人々に対して、長期介護サービスの職員や機関が提供するさまざまなケアと専門的なサービス」を指します。

長期介護政策の目的は、高齢化社会に伴う介護問題に対処し、必要な人々が基本的なサービスを受け、自分の馴染みのある環境でより良い高齢生活の質を持ちつつ、家族の介護負担を軽減させることです。

2.「長照2.0」とは何か?「長照1.0」との違いは?

長期介護政策が導入されて以降、台湾の介護サービスのニーズは多様化し、要介護高齢者・認知症高齢者が増加したことから、長照1.0十年計画に続き、政府は2017年から「長期介護十年計画2.0」(通称:長照2.0)を実施し、介護政策を継続して推進しています。

長照2.0と長照1.0の最大の違いは、サービスの範囲と対象の拡大であり、家庭、在宅、地域から施設介護に至るまでの多様なサービスを提供し、地域を基礎とする介護サービス体系を構築することを目指しています。

具体的には、長照2.0ではサービス項目の増加と請求方法の改善に加えて、過去の時間をベースとしたからサービス項目をベースとした価格計算に移行しました。

また、機能レベルとサービスの方向の違いに基づいて、「長照ABC」という3種類のコミュニティ拠点を設立しました

さらに、「1966長照サービスプロジェクト」を設立し、全国の22の県市に長期介護管理センターを設立するなど、介護サービスが「見つけやすく、利用しやすく、利用範囲が広がる」ような取り組みを行っています。

「長照2.0」のサービス項目は元々の8項目から17項目に増加

  1. 介護サービス - 訪問サービス、デイサービスおよび家庭託老サービス

  2. 交通送迎 - 受診や介護サービス利用のための交通サポート

  3. 給食サービス - 自宅での食事が難しい要介護高齢者のための食事サービス

  4. 介護用品販売、レンタルおよび住環境の改善

  5. 訪問看護 - 専門の訪問ケア職員が高齢者の自宅で要介護高齢者をサポート

  6. 在宅および地域リハビリ - 作業療法士や理学療法士が自宅や地域でリハビリサービスを提供し、体力と日常生活の自立能力を向上させる

  7. レスパイトサービス‐家庭の介護者に休息を取る機会を提供し、認知症や要介護高齢者の家族のストレスを軽減

  8. 長期介護施設のサービス - 合法的な長期介護施設が提供するサービス、および専門のスタッフが施設の種類に応じてサービスを提供

    長照2.0で新たに追加されたサービスは以下の通り:

  9. 認知症ケアサービス - 認知症高齢者の異なる段階に応じて必要な介護と医療サービスを提供

  10. 先住民地域の包括型サービス - 資源が不足している遠隔地や先住民地域に介護リソースを提供し、地域の介護サービス能力を強化

  11. 小規模多機能サービス - デイサービス、訪問サービス、一時的な宿泊サービスを提供し、利用者が必要に応じて柔軟に利用できるサービスを提供

  12. 家庭介護者支援サービス拠点 - 家庭介護者サポートのためのリソースを強化し、介護リソースの紹介、介護技術の指導、感情サポート、レスパイトサービス、経済的サポートなどを提供

  13. 地域包括型サービスセンター、複合型デイサービスセンター、および巷弄介護ステーションの設立

  14. 地域介護予防 - 地域の初期介護予防サービスを構築し、高齢者が地域で適切なケアサービスを受けられるようにし、老化と要介護状態の悪化を防止

  15. 要介護予防サービス(筋力トレーニング、生活機能の回復訓練、嚥下訓練、栄養摂取、口腔ケア、認知機能向上など)

  16. 退院準備サービスの拡充 - 病院が患者退院後の地域連携サービスを強化し、退院後に必要な介護サービスとリソースをすぐに提供できるようにする。退院後の日常生活の障害を軽減し、生活の質を向上させる

  17. 在宅医療 - 要介護や疾患により外出が難しい患者に、住まいの近くで医療ケアを提供

3.台湾地域包括ケアシステム「長照ABC」とは?

地域は高齢者にとって馴染みのある環境であり、最も基本的な生活の場です。地域での高齢者支援の実現という政策目標を達成するために、「長照ABC」は、以下の3つの異なる種類のユニットを結びつけて地域内のサービス提供能力を強化しています。

  1. A級地域包括サービスセンター(長照旗艦店): 長期介護サービスが必要な利用者またはその家族が要求を出した場合、各県市の介護管理センターの専門員が要介護度評価を行い、その後A級拠点のケアマネージャーにケアプランの策定を委託します。そして多職種の専門的なケアチームが「カスタマイズ化」および「個別化された」サービスを提供します。

  2. B級複合型サービスセンター(長照専売店): A級地域包括サービスセンターがケアプランを策定した後、特約B級拠点にケアを委託し、訪問サービス、デイサービス、交通送迎サービス、家庭託老、在宅看護、地域および在宅リハビリなどのサービスを主に提供します。

  3. C級巷弄(こうろう)長期介護ステーション(長照雑貨店): 地域のあらゆる場所に深く浸透する巷弄長期介護ステーションは健康、亜健康、または認知症や要介護の初期段階にある高齢者を対象としています。高齢者の住まいの近くで給食サービスや仲間との交流や社会参加を促進し、健康促進活動を実施し、要介護の予防と悪化防止を目指します。また、短時間の介護サービスやレスパイトサービス(一時的なケア)も提供します。

4.「長照2.0」のサービス対象者は?

各県市の長期介護管理センターの評価により、「長照需要等級(要介護度)」が2級以上であり、以下の条件のいずれかを満たす場合、長照2.0のサービスを申請できます:

  1. 65歳以上の高齢者

  2. 55歳以上の先住民

  3. 50歳以上の認知症の方

  4. 身体または精神障害者

5.「長照2.0」のサービス項目と申請資格、給付金は?

「長照2.0」は以前のさまざまな介護サービスを4つの主要なカテゴリーに統合し、「長照四包銭」と呼ばれるものにまとめました。以下は「長照四包銭」の4項目です:

  1. 介護および専門サービス:在宅サービス、デイサービス、小規模多機能サービス(一時的な夜間宿泊サービス)、家庭托老、専門サービス

  2. 交通サービス:自宅から地域型の長期介護施設への往復や医療施設への交通支援。

  3. 介護用品のレンタル、購入、および居宅のバリアフリー環境の改善

  4. レスパイトサービス:家庭の介護者が適切な休息を取れるようにするためのサービス。在宅と施設および地域におけるレスパイトサービス。

長照サービスの申請後、「長照需要等級」評価に基づいて長照等級2から8までの異なる給付金を受けることができます。また、経済状況(一般世帯/ 中低収入世帯)に応じて、提供される給付金の額が異なります。

低収入世帯は政府からの全額給付を受けることができ、中低収入世帯は自己負担が5〜10%、一般世帯は自己負担が16〜30%となります。

1.介護および専門サービス:要介護等級2から8の人々は、等級に応じて月額10,020元から36,180元(最大16%の自己負担)の給付を受けることができます。

  • 2等級:10,020元(約45,000円)

  • 3等級:15,460元(約70,000円)

  • 4等級:18,580元(約84,000円)

  • 5等級:24,100元(約108,000円)

  • 6等級:28,070元(約126,000円)

  • 7等級:32,090元(約144,000円)

  • 8等級:36,180元(約163,000円)

2.交通サービス:要介護等級4以上の人々は、交通の距離や居住地の県市町村の分類に応じて、月額1,680元から2,400元(最大30%の自己負担)の給付を受けることができます。

  • 第一類:1,680元(約7,600円)

  • 第二類:1,840元(約8,300円)

  • 第三類:2,000元(約9,000円)

  • 第四類:2,400元(約108,000円)

3.介護用品のレンタル、購入、および居宅のバリアフリー環境の改善:3年ごとに最大で4万元(最大30%の自己負担)の給付金が提供されます(4万元は約18万円)。

4.レスパイトサービス:要介護等級に応じて、年間323,440元(約146万円)から48,510元(約22万円。最大16%の自己負担)が給付されます。在宅レスパイト・施設レスパイト・デイサービスセンター・小規模多機能(夜間臨時)、巷弄長期介護ステーションなど、5つのレスパイトサービスがあります。

出典:衛福部長照専区

6.「長照2.0」は要介護度をどう評価する?

「長照需要等級(要介護度)」(CMS)は1から8のレベルに分けられ、数字が大きいほど被介護者の長期介護ニーズが高いことを示します。

長期介護サービスを申請した後、県市の介護管理専門員または地域包括サービスセンターのケアマネージャーが高齢者の自宅を訪問し、評価を行います。

長照需要等級の評価基準には、日常生活活動機能(ADL)または道具的日常生活活動機能(IADL)の2つの活動基準が含まれており、利用者が日常生活で必要な活動(食事、排泄、入浴など)を自身で行えるか、または地域での自立した生活(買い物、洗濯など)に必要なスキルを持っているかどうかを評価します。

7.「長照2.0」の申請方法と申請手順は?

  1. 申請提出:長期介護サービスを利用したい方は、以下のいずれかの方法で申請できる:

    • 携帯電話または市内電話から直接「1966長照専用ライン」に電話する

    • 「地元の長期介護管理センター」に連絡する

    • 入院中に、各医療施設の「退院準備と長照サービスの連結チーム」に問い合わせる

    • 各県市の介護管理センターのウェブサイトからオンラインで申請する

  2. 訪問評価:介護管理センターは専門員を派遣して自宅で評価を行う。

  3. ケアプランの立案:被介護者の長期介護ニーズ評定レベルに基づいて必要なサービスを立案する。

  4. 長期介護サービスの提供:評価結果とカスタマイズされたサービス内容に基づいて長期介護サービスを提供する。

訪問調査の評価結果は給付金の額に大きな影響を与えるため、被介護者と主な介護者が評価を受ける際に同席し、関連情報を準備しておきます。

例:被介護者にはどのような介護ニーズがあるか(入浴、食事の準備、外出のサポートなど)?提供できる介護力や家計状況はどうか?情報がより明確であれば、ケアマネージャーによるニーズに基づくケアプラン作成と関連するサービス立案にとって有益。

訪問調査の評価結果が長期介護サービスの資格を満たさない場合でも、地域内の長期介護サービスポイント(介護関懐ポイント、巷弄長期介護ステーション、文化健康ステーションなど)を利用できます。これらの場所では、健康促進、共同食事、介護予防および悪化防止サービスが提供されています。

8.まとめ

冒頭で述べたように、台湾は3年後の2026年に超高齢化社会を迎えると言われています。台湾政府は現在、来るべき超高齢社会に向けた介護システム構築を急いでいますが、介護サービスの提供には人材育成が欠かせません。台湾が今後どのように介護サービス人材を育成していくのか注目してきたいと思います。

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