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メンタリストDaiGoの生活保護受給者・ホームレス蔑視発言-経済的困窮者の実態から-

「生活保護の人とホームレスは社会にいらない。生活保護に食わせる金あるなら猫救え」

「邪魔だしプラスになんないしいない方がいい」

この過激な引用は、登録者247万人(2021/08/13時点)のYouTubeチャンネルを運用しているメンタリストDaigo氏による発言です。

記事を進めていくにあたってもう少し原典にあたりたいと思います。非常に苦しいものになりますが、発言者の批判を行う上で、原典を元に検討を重ねなければならないと感じているため、お付き合いいただければ幸いです。

「僕は生活保護の人たちにお金を払うために税金を納めてるんじゃないからね。
生活保護の人に食わせる金があるんだったら猫を救って欲しいと僕は思うんで。
生活保護の人生きてても僕は別に得しないけどさ、猫は生きてれば得なんで。

猫が道端で伸びてたらかわいいもんだけど、ホームレスのおっさんが伸びてるとさ、なんでこいつ我が物顔でダンボール引いて寝てんだろうなって思うもんね。

人間の命と猫の命、人間の命の方が重いなんて全く思ってないからね。自分にとって必要ない命は軽いんで。だからホームレスの命はどうでもいい、どちらかっていうといない方がよくない?ホームレスって、言っちゃ悪いけど、いない方がよくない?
みんな確かに命は大事って思ってるよ、人権もあるから一応形上大事ですよ、でもいない方がよくない?正直。
邪魔だしさ、プラスになんないしさ、臭いしさ、ねぇ、治安悪くなるしさ、いない方がいいじゃん。 猫はでもかわいいじゃんって思うけどね僕はね。

もともと人間は自分たちの群れにそぐわない、社会にそぐわない、群れ全体の利益にそぐわない人間を処刑して生きてるんですよ。犯罪者殺すのだって同じですよ。犯罪者が社会にいるのは問題だしみんなに害があるでしょ、だから殺すんですよ、同じですよ」

人が生きる権利とは

後述していくにあたって、一度感情論を差し引いてここでは生存権についての整理を行いたいと思います。

生存権 日本においては生存権とは、日本国憲法第25条に規定される「国民が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」である。

つまり、我々は出生や性別、居住地に限らず、生まれながらにしてそこに存在し、文化的な最低限度の生活を営む権利を有しています。これは日本が法治国家としての体を成す以上いかなるモノ(者)にも侵害されないものです。

これらを踏まえ、今回のメンタリストDaiGo氏の発言は人権蔑視であると言えるでしょう。また、これらを247万人のユーザーに届けていることに私は大きな問題意識を持っています。YouTubeというプラットフォームは製作者の思想を100%乗せることができます。そこに(様々な意味で)興味を持った人々が集まり、「チャンネル登録」という形でその思想及び人物の「顧客」になり得るわけです。当然、今回のメンタリストDaiGo氏の発言を受け、247万人が彼に賛同しているとは思いませんが、それだけの人数、あるいはそれ以上の人数に向けて平気で人権蔑視発言を行えることに、嫌悪感を通り越してある種の恐怖すら感じているため、記事の執筆に至りました。

なぜ実態を提示した記事を書くのか

メンタリストDaiGo氏の発言は前述したように、多くのチャンネル登録者を抱えているがゆえに大きな影響力を持っています。視聴する人の中には生活保護受給世帯およびホームレス当事者、その人たちと関わりのある人も含まれる可能性が否定できません。あるいは、現段階で当事者と全く関係のない人が誤った認識を得てしまうことも考えられます。それらを、筆者の実体験に基づいて否定したいと考えたためこのような構成を取っています。また、実態を提示することでメンタリストDaiGo氏の考え方を変えたいんだ!届け!みたいな熱量はありません。認知が歪んだまま成長してしまった大人は残念ながら変わりません。この記事は、目に止まった方が立ち止まって「貧困」と向き合えるものになることを願っています。

学習支援事業から見た生活保護世帯及びその子どもについて

※筆者が何者かについての詳細は別記事に書くので、興味を持たれた方はフォロー(?)をしていただければと思います。

私は、4年間に渡ってとある自治体に根を張り学習支援事業に携わっていました。世間的な認知もそれほど高くないと推察できるので学習支援事業について簡単に説明をしておくと、国民の経済格差が広がる中で貧困世帯の子どもの学習する権利をはじめとし、子どもの居場所を保障する取り組みです。地域によっては無料塾なんて呼ばれているかもしれませんね。また、私の活動していた学習支援事業では、片親世帯をはじめとし、その多くが生活保護受給世帯の小1〜高3の子どもたちでした。

本稿では、その学習支援事業というフィールドで私が体験した生活保護受給世帯との関わりから、メンタリストDaiGo氏の発言の残酷さを提示していきたいと思います。

1.進学への希望を持ちにくい子どもたち

多くの子どもが直面する困難が中学及び高校卒業後の進路についてです。経済的不安を家庭に抱えていることに起因して、非日常体験の不足(文化資本格差)も含め、どのような進路選択をすれば良いか、また、未来への希望を描きづらいケースが散見されます。そんな中でも学習支援事業での支援者や学校での友人や教員との関わりの中で小さいながらも展望を描き、(行政側の視点として)脱貧困を掲げ、進路選択を行なっていきます。脱貧困を子どもの学力獲得に依存するという点においては私も疑問や不安を覚えていますが、現行の行政からの支援制度の中でこれは一つの現状です。また、中には最後まで進路への展望を描けず、アルバイトと並行して定時制や通信制に通う子どももいますが、子ども達は必死に生きようとしています。我々支援者は、支援中にその成果が出なくとも、いつの日か「なんかあのおっさん、こんなこと言ってたなぁ」と、我々の関わりが子どもの人生の前向きな何かをつくるきっかけになれるよう思いを寄せて活動しています。

2.ヤングケアラーの子どもたち

「ヤングケアラー問題」を簡単に説明しておくと、子ども親及び兄弟世話をすること、また、それによって疲弊することを言います。生活保護受給世帯の中では、保護者が何らかの原因(病気含め)によって社会生活及び家事を行うことが困難で、その世帯の子どもがケアラーとなることが多く見られます。そういった子どもは、子どもらしくあること、また、子どもらしくあれる時間が非常に少なく、疲弊しています。しかし、その子どもたちが保護者を悪く言うことは決してありません。これも、子どもに依存するという点において行政支援の不十分さを指摘したいところではありますが、本題から逸れてはいけないためその話はまた別の記事で。いずれにせよ、子どもは従順に、親(家庭)の力になろうと必死に生きようとしています。

3.生活保護受給世帯の保護者(親)たち

生活保護受給世帯の保護者(親)が全て「働きたくても働けない」という括りの中にいるかと問われれば、疑問を抱かざるを得ない親がいることも事実です。しかし、「働くことが困難」であることに変わりはなく、それを個人の自己責任として消化するには無理があります。また、その人たちも含めての人権であることに変わりはありません。

これらの生活保護という社会保障の恩恵を受けた子ども及び親はメンタリストDaiGo氏の言うように社会にいらない存在でしょうか。競争的な社会構造(資本主義社会)の中で生まれた格差というものは、競争に敗れた者をいらないと規定するのでしょうか。

違いますよね。そのための保障された権利(生存権)です。

非一条校から見た生活保護受給世帯及びその子どもについて

一条校と非一条校についてご存知でしょうか。こちらも軽く説明しておくと、一条校とは

学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
— 学校教育法(昭和22年法律第26号)第1条、「第1章 総則」中

上記のように学校教育法に規定される「学校」だと思っていただければいいのかなと思います。
私は現在、それらの「学校」に該当しない学校(これを非一条校とする)で教員をしています。
対象は15〜18歳のいわゆる高校生に該当する世代の子どもたちです。

非一条校についてはまた別記事にて詳細を記述したいと思いますので、本稿ではかなり簡易的にそこに通う子ども達を言い表すと

困っている子どもたちです。

「困っている」の所在は、家庭での不和を原因にした小中学校時の不登校をはじめとし、社会背景に依存する部分も多く、多岐化しています。本記事でフォーカスをあてる「生活保護」受給世帯の子どもは多く在籍しています。その子どもたちの抱える困難や生き様を知っていただきたいと思います。

1.彼ら彼女らの進級・卒業とは

生活保護受給世帯の子どもたちはその他の子どもと比べて「進級・卒業」に対する熱量が圧倒的に強いです。家庭の経済的不安を知っている彼ら彼女らに「留年」は許されないのです。前述の学習支援事業で挙げたような困難を抱えながら進級・卒業を目指すことは並大抵ではありません。これもまた、必死に生きようとしています。


2.就学支援金書類を書けない世帯

就学支援金とは、いわば修学に関する行政からの支援金です。これには、各家庭に配布された就学支援金の書類を記載して学校に提出しなければなりません。必要なものは

(1)配布書類に必要事項を記載すること。

(2)生活保護受給世帯であれば受給証明書の原本

となっています。しかし、これには持論を交えますが、支援の必要な世帯は、このような必要書類を書けないし提出できないからこそ支援対象である側面があります。

書類は届いているけれど保護者は書いてくれない(書けない)。

では、どうするか。皆さん想像がつきますか?

子どもが書くんです。子どもが生活保護の受給証明書を家から探してくるんです。受給証明書のありかがわかるのであればまだマシで、筆者は該当の子どもと共に自治体の児童福祉課に受給証明書の発行をお願いしにいったこともあります。これは、実は子どもの自尊心を大きく傷つけることになり得ます。けれど生きることの希望を捨てていません。他者との違いをまざまざと認識しながらも必死に生きようとしています。


実態は何を明らかにしているか

上記に筆者の実体験からの実態を2つのフィールドを通して数点列挙しましたが、どのように感じられたでしょうか。

「・・・こんな実態があったなんて・・・!!!」

「でもこれって生活保護受給者を問わず、誰にでも起こり得ることだよな」

「みんな必死に生きようとしているんだなぁ」

様々な感想を持たれたことが推察されます。

この実態が生活保護受給者全てを的確に表せているとは思いませんが、質的な考察としては十分なものとなり得るのではないでしょうか。

彼ら彼女らは生きようとしています。そして、生きています。その権利は日本国内では保障されており、誰にも侵害することはできません。

メンタリストDaiGo氏の発言の問題点

以前からの彼の動向から鑑みて、おそらく炎上商法に似通った思惑に基づいての発言であると推察することができます。しかし、この発言は人権擁護の観点からも許されるものではありません。以下に、問題点を列挙したいと思います。

1.当事者の気持ち

私が先述した当事者たちはこのメンタリストDaiGo氏の発言を受けてどう感じるでしょうか。当事している人は子どもであれ大人であれ、すでに自己肯定感を大きく傷つけています。そういった状態に追い討ちをかけてチャンネル登録者数247万人を誇るYouTuberから「社会にいらない」と言われ、ひどく落ち込み、傷つくことは容易に想像がつきます。また、今後の社会復帰への大きな妨げとなるかもしれません。

2.視聴者の扇動

当ライブ配信のコメントは概ね

「メンタリストDaiGo何言ってんだ・・・?」

といったものが占めているように感じましたが、随所には肯定的なコメントも散見されました。

我々に命の選別をする権利はありません。


メンタリストDaiGo氏は救えないが、我々にできることはある。

上記は、私の友人(って言っていいのかな?)のSDGsマンさんが上げられている動画になります。是非参照していただきたいと思います。

以前、私はこのようなインフルエンサーの不祥事や問題発言に対して

じゃあ動画見なければよくない?再生数減るやろうし

このように思っていましたが、どうやらこれはYouTubeの性質上間違っていたのかもしれません。動画上でもSDGsマンは言っていますが

YouTubeというプラットフォームは問題があると思ったことを無視することでそのチャンネルを成長させてしまう仕組みにある。【SDGsマン/動画引用】

としています。

では、我々がYouTubeの利用者としてできることは、「おかしいな・・・」と思ったことを「通報」というアクションを通してYouTube側にその「おかしさ」を突きつけることではないでしょうか。

まとめ

今回、このメンタリストDaiGo氏の騒動を受けて、生活保護受給者と現在進行形で深く関わりを持っている私だからこそ書ける記事という所に要点を置いて記事を書きました。この記事を通して

「生活保護受給者って可哀想なんやな・・・」

と感じて欲しいわけではありません。不遇な現状は確かに存在します。しかし、そうでない人も含め、みんな生きています。そして、誰かに「生きてていいよ(悪いよ)」などと言われなくても、当たり前に生きられる権利がこの国には確かに存在しています。私の実体験の中では「生活保護受給者」にフォーカスを当てた記事を書くことしかできませんが、メンタリストDaiGo氏によって槍玉に挙げられたホームレスの方々も同様です。それを脅かすこと、多くの人に間違った思想を提示することは看過できません。

私は、前項の「メンタリストDaiGo氏は救えないが、我々にできることはある。」で触れたYouTubeチャンネルの通報に加えてこの記事をみなさんに共有することで、この一件の抗議姿勢とさせていただきます。


筆者は何者なのか

本来は自己紹介的なことをはじめにするべきなのでしょうが、本件に関しては皆さんの興味がどこの誰かもよくわからない筆者に移行してしまっては本末転倒だと思い、最後にさせていただきました。ここまで記事を読まれて、なおかつ

「こいつ何者やねん」

と思ってくださった方はTwitterをチェックしていただけると幸いです。

名前:ヤニカスちゃん(ときにヤニカス先生)

Twitter:(@yanikasusensei)https://twitter.com/yanikasusensei


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