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なぜ日本人は不正直になった 

1月7日付産経新聞 オピニオン面 数学者の藤原正彦氏の寄稿

政治資金パーティでの政治資金規正法に触れる裏金隠しが起きた真因について分析している。

”福沢諭吉は「学問のすすめ」の中で、「この人民ありてこの政治あるなり」と喝破した。政治は国民の鏡ということである。すなわち、「政治とカネ」は、国民が正直と誠実をないがしろにするようになったことの鏡像にすぎないのだ。”

”ということは、不正直や不誠実は、自民党ばかりでなく野党をも含めた国会議員、さらには県会議員、市会議員にも広がっているはずである。不正直や不誠実はビッグモーターやダイハツだけでなく、程度の差こそあれ、ほとんどすべての企業で、いや、ほとんどすべての組織で行われ、看過され、隠蔽されているのではないか。”

”日本人の道徳について古くは三世紀の「魏志倭人伝」に、「盗みや訴訟をせず礼儀正しい」と記されている。十六世紀に布教に来たザビエルは、「礼節や名誉を尊ぶ」と書いたし、十八世紀に長崎出島に来たスウェーデン人医師ツェンベリーは、「率直にして公正、正直にして誠実、勇敢にして不屈」と記した。”

”幕末に日米修好通商条約を結び六年近く日本に滞在した米外交官タウンゼント・ハリスはこう記した。「この国には一見したところ富者も貧者もいない。人民の本当の幸福の姿とはこういうものだろう。私は時々、日本を開国させ外国の影響にさらずことが、果たして彼等をより幸福にするかどうか、疑ってしまう。日本は世界中のどの国とも違い、質素と正直の黄金時代にあるからである」。”

"明治の文明開花以来、西洋からの新しい思潮にすぐに飛びつくという悪弊が生まれた。帝国主義、マルキシズム、ファシズム、そして戦後は、原爆投下という大罪を犯したアメリカの自己正当化にすぎないGHQ史観に他愛なく染まり、反日史観にとりつかれ、グローバリズムに流されている。”

”慈愛、誠実、惻隠(弱者への涙)、勇気、卑怯を憎む、などを主とする武士道精神までが衰微したのは大きかった。日本人は形を失ったのである。”

”哲学者の唐木順三は「現代史への試み」でこんな趣旨のことを述べた。「基盤となる形を持たない個性は新しい思潮に常に圧倒される」。”

”家庭と学校で、古くからあった日本人の情緒と形を育むことが、日本の迷走を食い止める唯一の根本策である。”

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