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ウミガメと泳げる日が来るなんて

夏は好きだけど、ちょっぴり苦手な子供だった。

8月生まれの夏男にも関わらず、泳ぎが大の苦手。所謂、カナヅチってやつ。正確に言うと今でもそうだ。泳げないせいで、プールの授業が大嫌いだった。

小学校低学年までは宝探しとかお遊びみたい授業ばかりだったから、泳げなくてもそれほど問題はなかった。

でも小学校高学年からは地獄だった。みんなが25メートル泳いでいる中、自分は端っこでビート板を握りしめて、ひたすら練習。運動神経が著しく悪いのに加えて、泳ぐセンスが皆無だった自分は、毎年ひとりだけ泳ぐ練習をしていた。

だけど、正直なところ泳げないことはまったく恥ずかしいとは思わなかった。それどころが、泳げない自分が可愛いとすら思っていた。恐ろしいほどのポジティブ魂。

「泳げなくてもいいや、だって可愛いし」と本気で思っていたから、どれだけ先生に教えてもらっても上達しなかった。勘違いも甚だしい。

それでも水泳のテストはやってくる。そして、結果はいつも悲惨なものだった。友達はクロールで25メートル、30メートルと軽々と泳ぐ中、自分の記録はたったの3メートル。ケノビで力尽きた。唯一の救いは、友達がその様子を見て笑ってくれたことだった。

高校受験の際、自分はプールのない学校だけを受験した。成績が水泳で台無しにならないようにするためだ。もし「愛知県カナヅチ委員会」があれば、きっとすぐに役員に選ばれていただろう。

そんな自分が、ひょんなことから島旅にハマり、海が好きになるなんて想像もしていなかった。シュノーケルセットという魔法のアイテムに出会い、ついに泳ぐことが好きになったのは、22歳の夏だった。

それから色々な出来事あって、沖縄県座間味島に住むことになった。そこはまさに日常的に泳ぐ環境だった。

座間味島にはウミガメが生息していて、運が良ければポイントに入ると可愛い可愛いウミガメたちに出会える。自分はその後、数えきれないくらいウミガメと一緒に泳いだ。

ふと思う。学生時代の自分は、この未来を想像しただろうか。海の近くに住み、ウミガメと泳ぐ自分の姿を。

人生って、本当に何があるかわからない。あの時、泳げなかった自分が、今ではウミガメと泳いでいるなんて。人生って面白いな、と改めて感じる。

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