看護師国家試験 前日の過ごしかた

保健師国家試験を受けた。看護師国家試験も受けなければならないが、保健師試験と同日ではなく、翌日でもなく、二日後だった。なぜかといえば、そのあいだに助産師国家試験があるからだ。

田舎者である私は、国家試験を受けるため県境をまたぎ、ホテルに泊まっていた。つまりどういうことかと言えば、見知らぬ土地、しかも都会で、翌日に看護師国家試験を控えるストレスのなか、丸一日ひとりですごさなければならないということだ。

一緒に勉強するような友達もいないため、ひとりで時間を潰さざるを得ない。ずっとじっとホテルにこもるというのも、精神を崩しそうだった。私は駅へ行くことにした。知らない土地の大きな駅は知らない店で埋め尽くされており、すべてが知らない人でごった返していて、旅行のたび毎度思うことなのだが、その知らない人たちが私の知らない人生を確かに真っ当に懸命に生きていること、そして、その人生のどれとも私は真剣に向き合わなくていいという事実に、ひどく安心した。

駅のベンチで長いこと往来を見ていた。あるとき左からおじさんの声がした。俺をよお、と彼は言った。助けてくれたんだよ、優しくてよお、と、ベンチに座る人ひとりひとりに話しかけて回って、無視されている。帽子の太っちょのジャンパーのおじさん。私はおじけづくと同時に、都会らしいな、と思った。そしておじさんに近付いていった。

(続く)

ハワイが危機になったらハワイキキなんですかね?