バス停から叫び

私は道を歩いていた。気づくと左に男子学生三人組がいて、つまり私は彼らとしばらく前から併走しているというわけだが、いま、学生のうちのひとりが、「あ、バス停あるじゃん、じゃあ俺バスで帰るわ、じゃあな」と残りの学生ふたりに告げ、バス停のそばに立ち止まった。だから私は今後、バス停に留まった以外のふたりと併走していくことになる。

少し歩いたとき、背後から声がした。「おーい」。おそらく、バス停に留まった学生の声だった。大声だ。つまり、彼と我々の距離はすでにかなり空いているわけだ。

「今日って何日?」バス停の学生が叫んだ。彼はおそらく、停留所に貼られた時刻表を見ているのだろう。でもよく考えてみると、時刻表を見るとき気になるのは時間か曜日で、日にちを気にする必要はないはずだ。しかし、彼が日にちを知りたがっているということは、彼には日にちを知る必要があるに違いなかった。

「ねえ、何日?」バス停の学生が繰り返した。すると、私と併走していたふたりのうちのひとりが振り返り、「3時51分」と、がなった。彼はがなりながら後ろ歩きをし、足を止めることはなく、そして、残りの学生は前を向いたままだった。

「いや、そうじゃなくて」バス停の学生がまた叫んだ。「今日って何日?」

すると後ろ歩きの学生が、後ろ歩きのまま、「だから、3時、51分」

「いや、そうじゃなくて」

そばにいて、私はもどかしかった。でもどうすることもできない。黙っていると、

「今日って何日?」バス停の学生がまた叫んだ。

すると、前を向いていた学生が振り返った。後ろ歩きしながら口を開いた。そして、「3時、51分」と、声を張り上げた。

そして、後ろ歩きしていたふたりは同時に前へ向き直った。やはり歩みは止めなかった。つまり、バス停の彼との距離はどんどん開いていき、あっというまに、バス停の彼からの声は聞こえなくなってしまった。私はもどかしかった。結局、今日は何日なのだろうか。

ハワイが危機になったらハワイキキなんですかね?