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【原稿】日本の幸福度を世界一にするために【はじめに】

 
 私は今まで、バカなふりして生きてきた。
 それが私の、生存戦略だった。
 
 天才は潰された。凡庸が良しとされた。
 私は学校が嫌いだった。
 
 
 2022年8月17日〜9月7日、私は単身でデンマークに渡った。
 仕事で出会うたくさんの人が、「デンマークの教育を見ておいで」と勧めてくれたからだ。

 私の仕事は臨床心理士。大学院時代のインターンから行政組織で心理士をし、県職員として児童相談所や一時保護所、非行少年の支援センターや中学校、高校でのスクールカウンセラーなど、公的機関で働いた。
 同時に自ら若者のための居場所組織を立ち上げ、公務員とした働く傍ら、土日はボランティアとして働いた。昨年、公務員をやめ、今は自分のNPO法人に注力して活動している。

 私は昔、ギャルだった。高校に入ってグレた。つけまつげを二枚重ねて、眉毛は全剃り、直径の大きなカラーコンタクトをつけて、武装して夜遊びをしていた。そんな私は心理学に出会い、いろいろなことが知識化されて客観視できたことが幸いし、更生することができた。
 このような経緯もあって、私のNPO法人は、名を「やんちゃ寺」と言い、「やんちゃ」な子どもたちを対象としている。

  日本社会で未だに蔓延る「罰」や「禁止」、そして「権威」による「指導」。これらがいかに無意味か、例えば体罰について言えば、脳が萎縮し「何によって罰を受けたか記憶していない」ことが明らかになった研究は児童相談所勤務のときにも記事が回覧で回ってきたほど一般的な知識と思う。

 にもかかわらず、今でも非行支援の機関は元校長先生の天下り先として設置されているなど、「お前は悪いやつだ」「教職の自分が指導してやる」といった、行動ではなく人格の全否定、そして自動的に発生する権威を使った締め付けがなされている。
 これらが再犯予防に繋がらないことは、日本の再犯率を見れば一目瞭然だ。

 人間、まず聞いて欲しい。わかって欲しい。この人は味方だとわかって初めて、本当の解決方法を考えることができる。

 非行支援一つをとっても、その人の言い分や背景、「その人なりに妥当な理由」をまず理解し、その上で一緒に考える姿勢がいかに大切か、根本的な解決を考えたときには誰もが理解できるにもかかわらず、日本において、支援者の目的が「子どものため」「加害者・被害者を増やさないため」「人々の幸せを増やすため」ではなくただ「自分の権威を保持するため」にすり替わっていることの多さに、私は何かがしたかった。
 
 私はたまたま、日本に生まれた。ただ産んでもらった。それに関して、私は何もしていない。なのに、屋根があった。そして、ごはんをもらえたのだ。

 行政機関にいたとき、文科省の交換視察でドイツに渡った。シリアなど近隣の国から難民としてたくさんの人が逃げてきておられた。私の中で、自分の生まれは全てたまたまだと、心底感じた。

 私は何もしていないのに、与えてもらって生きてきた。それも、たまたま。
 だから私は、自分にあるものは、与えて生きて当然だと思った。

 私にたくさんのお金はないし、何があるかと考えて、何があるでもなかった。
 でも、心理士になった私は、自身が非行に走っていたときの感覚、幼い頃から感じていた権威や思考停止に対する疑問など、必ず誰かのために使えるものが私の中にもあると感じた。
 
 だから私は、デンマークに渡った。今、私の収入源は自身のNPO法人に関連する講演依頼やカウンセリングの依頼、個人に対する仕事依頼による不定期なもので、ほとんどないに等しい。貯金を使って生きている。そんな私に、デンマーク行きの飛行機往復、そして宿泊費(民泊のようなとても安い宿泊先、Airbnbを活用した)を出すだけの貯金はあった。
 
 私は明日死ぬかもしれない。生物なら皆そうである。
 だったら、今の私にできることは、今やってなんぼ。
 
 明日の私に、今の私にあるお金の価値があるかは、わからない。
 であれば今日、使っておこう。
 それが、人のためになるのなら。
 
 デンマーク滞在はわずか3週間。その中で私が学んだことは、今までの人生を全て振り返らざるを得ないほど壮大なものだった。
 本当にたくさんの人が私を助け、教えてくれた。
 
 一人でも多くの、日本で生きづらさを感じている人に、私の学びが力となって届くと嬉しい。

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