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トレーニーの日常 【背筋編2】

懸垂を腕のトレーニングと認識している人は多いのではないだろうか。確かに腕も動員するが、腕だけを鍛える目的としては効率がよくない。
実際には、懸垂は背中を鍛える種目である。誤解されるのは、背中の筋肉がどのような動作において動員されるかが理解されていないことによる。

背中の筋肉は主に、上腕の伸展と内転、それから肩甲骨の動きに貢献する。背中のトレーニングはロウ系とプル系に大分されるが、それぞれ、物を前から後ろに引っ張る動きと上から下に引っ張る動きに該当する。

前述の懸垂を例に挙げると、頭の上にある腕に向かって上体を引き上げていく動きはプル系となり、物を上から下に引っ張る動きに相当するため、上腕の内転が作用する。上腕の内転は主に広背筋や大円筋が担当するため、それらの筋肉が鍛えられる。さらに、上腕が上に上がっている際は肩甲骨が上方回旋した状態であり、腕を引く動作によって肩甲骨の下方回旋が伴う。これにより、僧帽筋の下部も収縮し鍛えられる。
他にもマシンを使用したラットプルダウンなどがプル系の動作になる。

一方、ロウ系のトレーニングとして、ベントオーバーロウがある。上体を前方に倒し、両手で持ったバーベルをへそ辺りに向かって引き上げるトレーニングだが、前から後ろに物を引っ張るこの動作では、上腕の伸展、肩甲骨の内転が作用する。
他にもプーリーロウ、Tバーロウ、ワンハンドダンベルロウなどが、ロウ系種目として存在する。

一般に、プル系は背中の広がりを、ロウ系は厚みをつける目的で行われることが多い。プル系は初動で上から下に力を発揮するため、筋繊維も上下に走っている部分が収縮する。プル系では肘が体方向へ寄っていくにつれて力の発揮方向が、地面と垂直方向から水平方向へ徐々にシフトしていく。それにより、徐々に横方向に筋繊維が走っている筋肉の働きへと遷移していき、動きの中で使われる筋肉が変わっていくのが特徴だ。
一方、ロウ系では前から後ろへ力を発揮するため、横方向に走っている筋繊維が常に動員されやすい。肩甲骨の寄せも行いやすいため、僧帽筋など厚みを演出する筋肉がより強く働く。

背中のトレーニングで注意したいのは、腕で強く引っ張らないことだ。腕に力が入って腕が先に疲れてしまうと、背中に余裕があるうちに動作が行えなくなってしまう。
そうならないようにするためのコツとして、グリップを強く握らないという方法がある。そして、できるだけ小指側で握るように意識するとよい。親指側で握ると腕の力が入りやすく、肩甲骨も柔軟に動かなくなってしまうためだ。

また、背中のトレーニングでは肩甲骨の動きが重要になる。背中の筋肉のほとんどが肩甲骨に付着しているため、肩甲骨周りが硬いとどんな動作をしても背中にヒットしにくい。トレーニング前に肩甲骨周りをよくほぐし、トレーニング時には肩が上がらないような意識で動作すると、背中に入る感覚が掴めるだろう。

背中トレーニングは非常に難しいため、練習を重ねることが大切だ。トレーニング時に考えなくてはならないことをなるべく減らすため、数をこなして自然と効く動きを獲得できるようになりたいものである。

次回は胸について書いていきたい。


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