見出し画像

トレーニーの日常 【筋収縮・伸展編】

人間の動作は、筋肉の収縮と伸展により実現されている。
筋肉は腱を介して骨に接地しており、収縮を行うことで骨を引っ張るのが仕事だ。その筋肉の仕事のおかげで、我々は肘や膝などを曲げ伸ばしできるわけである。

収縮と伸展とは書いたものの、実際に筋肉が自力で行えるのは収縮だけだ。つまり、筋肉は一度縮むと自分ではもとの状態に戻れないのだ。縮んだまま筋肉が戻らないということは、一度関節を曲げると伸ばすことができなくなると言っているに等しい。そんなことになれば、みな体を折りたたんだ状態から戻れなくなってしまい、歩くこともままならないだろう。でも、そんなことにはならない。ちゃんと筋肉は伸展もする。

では、筋肉はどのように伸展しているのか。実は、他の筋肉に伸ばしてもらうことで伸展するという仕組みになっている。

肘を曲げ伸ばしする運動を考えよう。肘を曲げる時、主に上腕の前面の筋肉が働いて前腕の骨が引っ張られる。そうすることで、前腕が上腕に接近し、肘が曲がるわけである。この時、上腕前面の筋肉である上腕二頭筋などの収縮が行われている。

さて、この肘の曲がった状態から、今度は肘を伸ばす動作を行なってみる。肘を曲げる時に働いた筋肉は上腕の前面の筋肉であった。今度はその逆の動作を行うので、使われる筋肉も逆面にある筋肉となるのは理解できるだろう。つまり、上腕の後面の筋肉である、上腕三頭筋が主動となって肘を伸ばす運動を行うのだ。

上腕三頭筋が収縮することで肘が伸展していくが、この時の上腕二頭筋の状態に注目したい。上腕二頭筋は肘を曲げる動きで収縮したのだから、肘を伸ばす動きでは逆に伸展することになる。つまり、上腕三頭筋が収縮する一方で、その反対に位置する上腕二頭筋は伸展しているのである。これが、筋肉が収縮して伸展するカラクリだ。要するに、自分とは反対の位置にある筋肉の収縮の助けを得て、縮んだ筋肉
は伸びることができているということとなる。

さて、トレーニングの動作において、筋肉の収縮を意識することは大事であり、トレーニーなら当たり前にできていることだろう。しかし、筋肉の伸展を意識しながらトレーニングをすることも大事だということは、初心者の段階では気づかない場合が多い。
トレーニングにおいて伸展を意識するのは、いわゆるネガティブと呼ばれる動作で、挙げた重りを下ろすシーンにおいてである。重い重量を力任せに振り上げて、そのままストーンと下ろす人は結構多いが、あれはトレーニングの効果を大いに低減させていると言わざるをえない。

挙げた重りをゆっくりと下ろす行為は、重りの力に逆らって筋肉を収縮させようとする行為となる。ダンベルを握って肘を曲げ伸ばしする種目(ダンベルカール)を例にとると、ダンベルを上げる局面では上腕二頭筋が収縮を行うことで持ち上がるが、今度は下ろす時は上腕二頭筋は伸展する。それを、ゆっくり耐えながら下そうとすると、意識としては上腕二頭筋を収縮させているのだが、実際はダンベルの重さにより上腕二頭筋は引き伸ばされていくという、相反した状態が生まれる。この状態の時、筋損傷が発生しやすいといわれており、つまり筋トレ効果が高まるのである。

トレーニングとは究極的には筋肉の収縮と伸展という単純な動作の繰り返しといえる。しかし、その単純な動きは突き詰めれば奥が深く、追求すればするほどに様々な発見がある。ぜひ色々考えて工夫してトレーニングをしてもらいたい。

次回はトレーニングの頻度について書きたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?