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福島・柳津観光協会に来てからの話。

お久しぶりです。あれやこれやと動いている間に、花火大会が終わってから半年も経過していました。

「観光協会」という組織の中に居させてもらっている以上、柳津町の観光名所だったり、お寺や名物の由来だったりをここに書いて情報提供をするべきだというのは重々承知なのですが、それはまあ、HPをご覧になっていただいたり、実際にご来町いただけたらと思います。

実際に柳津町へ来たくなるようなPRをする、というのは言葉にしてしまえば簡単なのですが、実行するには相当な根気と労力がいるもので、労力はなんとかなるにしても根気はどうにもなりません。性格もあるんだと思いますが、根気も一種の才能ですので、凡人は気まま更新が一番なのです。

前置きが長くなりましたが、今回は、やる気だとか根気だとかとはまるで無縁の担当が、この柳津観光協会でお世話になってから心が動いたエピソードに少しだけお付き合いいただければと思います。


スピード感のある若いお兄さんたちの告白

2022年9月。柳津町に本店を構える老舗・小池菓子舗がリニューアルオープンをした当日、担当を含む事務局スタッフ2名はさっそくお店にお邪魔していました。

すげえ!カフェスペースある!ケーキもある!うわ花すげえ!小池菓子舗やっぱすげえ!

世の中のちびっ子たちにはぜひこんな大人にならないようお願いしたいところですが、店構えがガラリと変わった店舗を見た担当の心情は大体こんな感じでした。

育ちのいい口調でなくて実にすみません。心から感動しつつ「このお店はとても素晴らしいですね」などとにこやかに品のあるコメントを出せるようになれば、お客様からのお電話を受けても「あの、うぅえ、圓藏寺のあの、うらがわにょ」だの「国道の横の、大きくて比較的巨大な施設」だのと言わずに済むんでしょうか。

「大きくて巨大」など、サイズのたたみかけもいい所です。まして、「比較的巨大な」なんて一体何と何を比較してご紹介しているのかまるでわかりません。

さて、新しく仲間入りした洋菓子と定番のあわまんじゅうを本日のおやつに買い込み、事務局スタッフが店主と世間話をしているのをお店の隅で待っていると、お会計の列に並んだ3人組の若いお兄さんたちの会話が聞こえてきました。

「あわまんじゅう久しぶりに食うわー」
「俺も。なあなあ、最高記録、何個?俺6個」
「俺8個だわ」
「俺10個」
「嘘つけ!」
「嘘じゃねえし!」
「なんで2個ずつ増えてくんだよ!」
「そりゃ偶然だろ」

文字にすると何とも微笑ましい会話なのですが、「俺8個」あたりから動画の1.25倍速→1.5倍速を見ているような速さで進んでいました。ズレたたとえかもしれませんが、卓球の高速ラリーをどんどん倍速で見ていく感覚です。もはや何が起きているのか分からなくなるギリギリのレベルで、お兄さんたちの会話は進んでいました。

決して大声で話されていたわけではないので、他のお客様や店舗スタッフの方々がお兄さんたちの会話にお気づきになられていたかは分かりません。
しかし、時間がゆっくり流れる穏やかな田舎で、まるで短文・即レスでやりとりされるLINEのような会話のスピードに妙なギャップを感じてしまい、スタッフを待ちながら笑いをこらえていました。

トドメはその後の会話です。お兄さんたちは、レジの前で仲良く団子になりながら、会議の最終局面を迎えていました。

「おいどうする? 20個いっとく?」

3人で20個をどうやって仲良く分けたのか今でも気になってしかたがないので、お心当たりのあるお兄さん達はぜひ事務局までご連絡ください。


「人は見た目が9割」は「時と場合による」

近年よく書店や通販サイトで見かけるようになった「9割シリーズ」。

「見た目」「聞き方」「話し方」、現段階で出版されている全てのものを足すと、項目2つめにしていきなり10割を超えるため、もしかして全部試したら人体が破裂するのか、と見当違いの不安を抱えていたのは記憶に新しいところです。

柳津の観光案内所にも様々なお客様がいらっしゃいます。

駐車場の場所や赤べこ親子の所在地、おすすめの食事処など、お話しする内容は本当に様々で、ご家族やご夫婦でいらっしゃる方、お一人でいらっしゃる方も、最近は多く見受けられるようになりました。いやはや、ありがとうございます。

ある日、事務所のスタッフが自分以外、全員出払っていた時のことです。一人で留守番をしていると、案内所に1組のご夫婦がご来所されました。

いらっしゃいませ、と挨拶をしたあとはなるべくお客様の時間の邪魔をしないよう、お客様からお声掛けをいただくまでは潜むようにして仕事をしています。視線はなるべくPC画面に固定し、万一に備えて耳は案内所内へ向けておくという技をやっと身に着けた担当は、その日のお二人の様子も盗み聞きにならないよう注意しながら耳で聞いていました。

「ちょっと、お手洗いに行ってくるね!」
「ああ、うん」

奥様はとても明るい口調で旦那様に話しかけ、お手洗いの方へ向かっていったようでした。なんとも単純な話で、案内所内に入ってこられた際のお二人の雰囲気と声色だけで「奥様=明るい方」「旦那様=寡黙な方」と勝手に推測していたのですが、次の瞬間、それは取るに足らない推測だったと思い知らされたのです。

「すみません」

所内で赤べこグッズをご覧になっていた旦那様にお声掛けいただきました。

「はい」
「…これ!めっちゃかわいいですね!?赤べこ、っていうんですか!赤べこのべこって、どういう意味ですか!」

これほどまでに「人は見た目が9割」を思い出した瞬間はありませんでした。恥ずかしながらタイトルだけしか存じ上げていないので、本編ではきっともっと違った角度からお話が展開されているのだと思うのですが、その時の私は「必ずしもそうとは限らない」と思いつつ、赤べこの説明や由来などを旦那様にお話ししました。

しばらくして奥様が戻られ、旦那様は手に持っていた赤べこグッズを奥様に見せながら、さっきとは打って変わってわくわくしたような弾んだ声で話されていました。

「可愛いから買おうこれ!いっこ!ねえ!いいよねこれ!」

そうだね、買ってこうか、と笑っていた奥様もとても素敵でした。

見た目、話し方、聞き方。それが何割を占めていようと、旦那様も奥様も素敵なお客様であったことに変わりはありません。数値化できない喜びみたいなものがそこにありました。

誰の身体も破裂こそしなかったものの、担当の心に温かい何かがドスンと刺さって、予想外の幸せのおすそ分けに悶えています。

お買い上げありがとうございました。またお越しくださいませ。


源泉よりはるかに温度の高い「柳津応援人」

柳津観光協会が事務局となり、柳津町では「会津やないづ歴史検定」なるものを実施しています。

初級・2級・準1級・1級と4段階でステップアップしていく様式を取っているのですが、なぜか「どの級から受検してもOK」というストライクゾーン広めな設定のため、初めから1級に挑んでもいいというある意味トンデモ検定です。

ただ、ネットに答えが載っていない設問がほとんどなので、受検すると決めたら一度は柳津町にお越しいただかなくてはなりません。誠に恐れ入りますが、受検のためでも観光のためでも休憩のためでも、柳津町にお越しいただけたらこんなに嬉しいことはありません。どうぞよろしくお願いします。

さて、各級の合格者にはそれぞれ合格証(書)と赤べこグッズをプレゼントしています。晴れて1級に合格すれば、柳津の観光大使としてご活躍いただくため、フルネーム入りの名刺と名刺ケースを差し上げています。

ありがたいことに観光大使の数も3桁を超え、毎月少しずつ観光大使の輪が広がっていっているのですが、先日、観光協会が運営するSNSにある観光大使の方からDMを頂きました。

許可をいただいていないのでお名前も詳細も載せられないのですが、要約すると「柳津にかなりの頻度で宿泊しています」とのこと。ありがたいなあと思いながら「またぜひご来町ください」とお返事をさせていただき、その後も何度かメッセージをいただきました。それがまたすごいメッセージでして。

言葉を選ばずに言うと、とにかく「アツい」メッセージを何通もいただきました。そのアツさに若干圧され気味でもありましたが、これは嬉しさ余ってびっくりしている感じです。

いやこの方すごいな、さすが観光大使、とスタッフ間で盛り上がっていると、スタッフの一人が「ここらへんの源泉より熱い方ですね」と、本当に何でもないように呟きました。

それを聞いた全員が膝を打ったのは言うまでもありません。言うまでもないついでに「膝を打った」のは物理ではないこともお伝えしておきます。全員が同時に物理的に膝を打ってたらただの変な集団です。当協会は日々真摯にお客様と向き合っている組織ですのでご安心ください。

しかし、微力ながらも柳津町のPRを進めている身からすれば、こんなに上手い喩えを出されてしまってはぐうの音も出ませんでした。

なるほど「源泉より熱い柳津応援人」というのは、観光大使の二つ名として採用していきたいところだ、と4問くらいしか正解できなかった自分の1級の解答ハガキをみてしみじみ思うのでした。



そんなこんなで毎日少しずつ、色んな出会いがあります。いろいろ上手くいかなくて凹む日のほうが多くを占めますが、美味しい物と睡眠を大量摂取して乗り切っています。訪れる人も住む人も、心からゆっくり出来る場所。柳津がそんな風に続いていけばいいなあと思います。

お相手は柳津観光協会事務局でした。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。



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