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台湾の漫画の学校に行ってみた

このタイトル、わかりにくいですね…。正確に言うと
台湾にある日本漫画の学校に行ってみた
です。
台湾にある台湾漫画の学校に行ってみた
ではありません。

KADOKAWAはクールジャパン政策、クールジャパン機構のバックアップを受けて国外に日本の漫画の学校をいくつか作りました。その一つ、台灣角川國際動漫教育に行き授業を見学してきたのです。
この学校は6年前に台湾・台北市に作られました。東京で言うと銀座4丁目に該当するような繁華な場所にあります。

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台湾はちょうど総裁選真っ盛りでした。雑居ビルの6階1フロアを占める学校は、中央にフリースペースがあり、取り巻くように教室が作られています。大学のように授業ごとに教室を替える仕組みなので、学生たちはこのフリースペースを通ります。互いの動きがわかりながら、ちょっとした秘密の空間もあって、なかなかしゃれたレイアウトになっています。

授業は二つ拝見しました。一つは日本人講師によるもの。前半はネームの作り方。講師自身の経験が反映された、明晰でわかりよい授業でした。
後半は個別指導。一人終わるたびに通訳がその学生の指導内容要約を中国語に訳して全員に伝えます。これがまた良いタイミングで、個人指導の時間帯というのはバラバラした雰囲気になりがちですが、この要約が教室を引き締めていました。

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二つ目は台湾人作家による講義。あるmvをみせます。歌が流れます.背後では歌とあまり関係なさそうなお芝居が展開しています。そのお芝居の絵コンテを作るのです。
これは非常に難易度の高い課題でした。歌とあまり関係がない、とは言いましたがもちろん無関係でもない。歌の盛り上がりにあわせてお芝居も盛り上がります。絵コンテはお芝居を描写しながら歌の盛り上がりも感じさせるようにしなければなりません。学生たちもなかなか苦戦していました。

学生たちですが、二学年制で一クラス10~15人くらいでしょうか。運営上はともかく教える人数としては非常に良い。全員に目が行きますから。
年齢は20代前半が平均のよう。最初かなり高度な講義をこなしているのに驚いたのですが、台湾は二十年くらい前に日本の文物流入OK としています。ですので彼らは漫画ネイティヴといえる世代だったのですね。

今後、ここを卒業した学生たちはどのような仕事をやっていくのでしょうか?
これは世界中の漫画の学校が抱えてる問題で、国ごとで解答の出し方は違うでしょう。
例えばフランスは、先行する隣接ジャンル・BDの専業作家がほとんどいない状態。美術教師をやりながらBDを描いている、というような兼業者でジャンルができあがっています。それが漫画家志望者にもモデルケースになるようです。
日本ならとりあえず漫画家のアシスタントという道があるでしょう。
台湾動漫では仕事を見つけてきてなるべく紹介しているようです。10年くらい前から「クール台湾」とでも言うような国策が発動してて台湾製の二次元商品を国際的に売ろうと国が動いてるそうです。
「そこまでやるならオリジナルメディアが生まれて良さそうなんですが」と竹内さんに聞くと「台湾はパイが小さいから」。少数民族も含め2400万人だそうです。
今後の展望としては大陸に活路を見いだすことが大事なのだそうです。政治的な揺さぶりを苦々しく思う人がいても、サプライチェーンとしての中華人民共和国はやはり大きな存在なのでしょう。卒業生が大陸で売れているライトノベルをコミカライズしたりしてます。


「台湾はパイが小さい」問題は日本に帰ってからも考えています。そして二つの見方から台湾が新しいパイになる可能性があるのではないかと思いました。
一つは、今の日本のコミックスのような大量投下、大量消費ではないビジネスモデルをつくること。
人口密度や国民性の違いがあるので一概に並べられませんが1990年代の香港は、台湾の五分の一くらいの人口で出版社が乱立しレーベルごとのファンがいました。アメリカンコミックに似た薄い平とじ、オールカラーで回転が速い。小さな地域でそれなりに稼げる構造を作り上げていたと思います。そんな中でもルー・クフルンのような世界レベルの描き手も現れました。

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もう一つはフランスのように少し高額でも大切にしてくれる人のために作っていくこと。
誠品書店・信義店に行ったのですが「台湾の人はなんと本好きだろう」と驚きました。かつての新宿ジュンク堂や梅田・蔦屋書店を倍にしたような規模の店舗なのです。ドラマが輸入されたのでしょう、村西とおる『全裸監督』が大量に平積みされてもいました。ボクはここでScott McCloud『Making Comics』と Brian Maclachlan『Draw Out the Story』の繁体字訳を買いました(読めないけど)。軟らかい本から堅い本まで並ぶ大型書店が何店舗もあるのですから、台湾の人は本好きだと感じたのです。
こういう国では丁寧な装丁の漫画『中華民国史』のようなものを学者の監修を受けながら作れば、ゆっくり長く売れるような気がします。


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