メディアの話その97 311とコロナと歴史と。

子供のころ習った歴史の教科書は、考えてみるとけっこうヘンテコなものだった。

なにせ、人殺しばっかりがでてくる。

時代を変えるのはたいがい「戦争」だ。

で、「戦争」がもっとも得意な人が次の「王」になって、新しい時代が始まる。

人間の歴史は、人殺しのうまさで進歩してきた。

そう読み取れる。だから、「〜戦争」「〜の乱」「〜革命」ばかりを私たちは覚えさせられた。

どうやら、歴史を変えたのは「人殺し」ばかりじゃないぞ、いやむしろ「人殺し」をうながしたもっとおおもとがあるぞ、ということに、私たちは2010年代に2度の経験でようやく気づいた。

そう、311と新型コロナウイルスである。

地震と津波と感染症。

つまり、自然の大変化が世界を大きく変える。私たちの意識を変える。生活を変える。

過去の歴史も、天然痘やペストやさまざまな大地震や火山の噴火や小氷期などで動いた。貧しくなったり、食べられなくなったりしたひとがたくさんでてきて、で、「〜戦争」や「〜の乱」や「〜革命」につながった、ことが何度もあった。

ジャレッド・ダイアモンドは「銃・病原菌・鉄」で、地理的条件がその国の文明の進化のパターンを規定する、と記した。地震も津波も感染症も地理的条件がもたらすものだ。そして、人間が根本的には克服するのが相当大変なことだ。

「条件」をひっくりかえすのは難しい。「条件」を前提として生きるしかない。

新型コロナウイルスを勝手に克服したことにしても、ウイルスはもはや「条件」だから、その「条件」を前提としない限り、対応はできない。ウイルスの存在は、人間の営みにすぎない経済とトレードオフできる対等な関係ではないのだ。地震や津波と経済をトレードオフできないのといっしょである。

続きます。




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