見出し画像

気になる琉球新報記事

 2022年8月7日付『毎日新聞』1,3面<語る「戦世(いくさゆう)」きっと伝わる 津嘉山さん沖縄朗読劇>。沖縄出身の役者、津嘉山正種(つかやままさね)さん(78)の半生を紹介しながら本土の沖縄への差別・偏見をテーマにした大原稿。芝居を学ぶために上京した本土で、家を貸さないなどの差別を受けた時代を生きてきた。「沖縄というだけでどれほどの屈辱に打ちのめされただろうか。」そういう時代を生きてきた人の生の言葉の持つ力、迫力が伝わった。

 とくに記事で言及された「人類館事件」、この史実のあまりの愚劣さに唖然とした。皆さんご存知でしたか。記事では<1903年4月に大阪市で開かれた政府主催の内国勧業博覧会で、『異人種』として琉球人(沖縄の人)が、アイヌや台湾先住民らと並んで見世物として「展示」された事件>と説明する。大阪市内の沖縄出身者が気付いて憤激し、琉球新報に連絡。同紙が怒りのキャンペーンを張った結果、同月下旬には展示が中止されたという。

 私は毎度の不勉強ゆえに知らず、我がパートナーに教えてもらい、貸してもらった参考資料『国際化時代の人権入門』(日高六郎監修、神奈川人権センター発行、1996年、pp.194-195)を読んだ。そこでカットとして挿入された明治36(1903)年4月11日付『琉球新報』の「人類館を中止せよ」の記事を拾い読みしたところで、また驚いた。

 曰く「……学術の美名を借りて以って利を貪らんとするの所為と云の外なきなり吾輩は日本帝国に斯る冷酷なる貪欲の国民あるを恥つるなり彼らが他府県における異様の風俗を展陳せずして特に台湾の生蕃北海のアイヌらと共に本県人を撰みたるは是れ我を生蕃アイヌ視したるものなり我に対するの侮辱豈これより大なるものあらんや本県人如何に無神経なりと雖も如何に意気地なしと雖も此侮辱を甘受するものあらんや……」

 琉球人に対する差別を糾弾する琉球新報は、自分たちを台湾の先住民やアイヌと同列に見ているとして「これ以上の侮辱はない」と怒っているのである。この差別の連鎖。めまいがする。

 同紙を購読できる地域に住んでいないので、ネットで関連記事がないか調べてみた。この問題でシンポジウムが開かれることもあったようで、出席者から同紙の差別的記述の指摘や批判は行われているようだ。しかし残念ながら、琉球新報自体がこの記事の中でアイヌや台湾先住民への差別的記述を掲載したことへの謝罪や記事取り消しなどを行ったという情報に接していない。調査不足であろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?