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MarketSurge(旧MarketSmith)の紹介

この記事では、Investor’s Business Daily(IBD)というアメリカの会社が提供しているサービス、MarketSurge(旧MarketSmith)に関して紹介します。IBDはIBD Digital, Leaderboard, SwingTrader, MarketSurgeといった様々なサービスを提供しており、特に順張り投資をする際に有用です。The Montley FoolやThe Oxford Clubといった特定の株式を推奨するようなstock pickingサービスではなく、株価の動き(technical)と業績(fundamental)を踏まえて、自分で調べて株式の選定を行うstock researchサービスです。fundamentalとtechnical、両方を使用し個別株投資を行うtechni-funda手法において、必要な情報が簡潔に記載されており、直感的に企業を把握できる、使いやすいサービスです。

※この記事はMarketSmith時代に作成したもので、MarketSmithの時の画像を使用しています。
キーワード:Investor’s Business Daily, MarketSurge, stock research service


1. MarketSmithの画面

チャート画面がメインでリスト一覧が下に少し表示されている基本レイアウトで、日足チャートを表示している。画面右下青丸の3つのボタンで好きなレイアウトを選択できる。

MarketSmithは画面中央にチャートが大きく表示されていますが、チャート画面やリスト一覧の割合といったレイアウトの変更、日足や週足といったチャートの種類を、クリック1回で変更できます。

上図は基本レイアウトの日足チャートですが、日足・週足・月足・日内足(1, 5, 10, 15, 30, 60分足)をボタン1つで変更することができます(画面左上黒四角)。中央にはチャートが大きく表示され、その下には出来高が棒グラフで表示されています。上昇日は青い色、下落日は赤い色で統一されています。インジケーターは、株価の値動き、出来高、出来高50日平均線、移動平均線、Relative Strength (RS) ratingとRS lineしかありません。ストキャスティクスは追加で表示できますが、その他のMACDやボリンジャーバインドといったインジケーターは使用されず、シンブルな作りとなっています。移動平均線は、デフォルトで50日移動平均線(赤line)と200日移動平均線(黒line)が表示されており、カスタムで緑とピンクのlineを追加できます(カスタムで単純から指数平滑移動平均線EMAへの変更も可能です)。

画面左下(緑四角)にはお気に入りの銘柄一覧やscreen結果を登録しておくことができます。My listでは保有している株式やETFのリスト、過去に保有している株式のリスト、これからentryを考えている株式のリストなど、自分の好みに設定することができます。ここではAdvance-Decline Lineやその他のTechnical indicatorも登録ができるので、速やかにいつも見たいリストやチャートを確認できます。

最新の株価と出来高は右上に表示されます(画面右上赤丸)。出来高は、20分程度の遅れはありますが、50日平均出来高量と比較して、その日の予測出来高量が%で表記されます。例えば、50日平均出来高が100万として、寄付2時間で出来高が50万である場合は、Marketは6時間30分ありますので、予測出来高(projected volume)は同じペースだと162万程度が予想されるため、+62%と表記されます。最終的には取引終了時間を過ぎてからその日の出来高が決まりますが、株価の上昇の起点であるpivot pointからのbreakout時には、出来高量が少なくとも+25%以上が望ましいとされているので、breakout traderにとって予測出来高があることは非常に有用です。

リスト一覧を非表示にしたチャート画面のみのレイアウトで、週足チャートを表示している。週足チャートでは、企業のfundamentalが確認しやすくなっている。

上図はチャート画面が最大のレイアウト(画面右下青矢印)の週足チャートですが、画面左に企業のfundamentalの情報が記載されています。週足チャートで企業を把握しやすくなっており、四半期ごとのEPSやSales、PER、ROE、その銘柄を歩数しているfundsの数などのfundamentalが簡潔にまとめられています。さらに、EPS rating、他の産業セクターと比較した相対的な強さを表す指標であるgroup RS rating (RSに関しては後述)、業績の強さをまとめたSMR rating (Sales, profit Margin, ROE)、どれだけ機関投資家に買われているかを表すAcc/Dis ratingなど主要評価項目がA, B, C, D, Eの5段階で表記されており、その企業の強さを他の株式と比較することが簡単にできます。

総じて、MarketSmithでは必要最小限の情報がひと画面に集約されており、画面をみるだけで視覚的に銘柄を把握できます。

2. Relative Strength (RS) rating

週足チャートでは長期的なRS lineの方向性を確認しやすい。

IBD, MarketSmithの最大の魅力はRS ratingとRS lineがあることです。これは、他の銘柄と比較した株価の値動きのratingです。過去12ヶ月の株価の値動きを他の銘柄と比較して評価されています。直近の値動きに最も加重が置かれており、直近の四半期では40%の比重で、他の3四半期でそれぞれ20%の比重で計算されています。RS rating 90とは、株価の値動きが、他の銘柄90%を上回っていることを示しています。またRS rating値だけでなく、RS lineをみることも大切です。例えば、上図は資本材(Industry)セクターの大型トラックメーカーの$PCARですが、2022年のSP500の指数も弱気相場で株価は下がっている中(赤矢印)、$PCARのRS lineの推移は堅調で、SP500指数とは逆相関(divergence)があり、よい兆候です。RS lineも移動平均線が設定でき、上図はSP500と比較した10週移動平均線の設定をしていますが、長期的にみて右肩上がりであることが確認できます(オレンジline)。

RSは基本はSP500との比較だが、おなじ産業グループ内での比較に変更することができる。

またSP500との比較だけではなく、NASDAQとの比較や、同じ産業セクター内での比較もすることができます。同じ産業セクターと比較したRS lineも右肩上がりであれば、その企業はセクターを牽引するセクターリーダーである可能性が高いです。少し見づらくなりますが、最大2つのRS lineを表示することができます。ある企業のRS lineが、SP500とのRS lineが右肩あがり、かつIndustryとのRS lineも右肩あがりであれば、マーケットの先導株として観察すべきです。

個別株投資をする目的、それは指数の投資、つまりSP500への投資をout performする目的に他なりません。つまり、個別株の値動きがSP500と相対的に比較されたこの指標は、個別株投資をする上で、大いに参考するに値する指標です。

3. ベース判定

ガイドのベース判定では、近くにカーソルをもっていくと、抵抗線の株価数値、長さ、深さといったベースの詳細を確認できる。

MarketSmithではCup-with-handleやDouble bottom, flat baseなどのentryする際の基準であるbaseの判定を緑の線でガイドしてくれます(赤矢印)。ガイドの近くにカーソルを合わせると、baseの深さやhandleの程度、形成された期間やpivot pointが表示されます(赤四角)。最初のうちは、このbaseガイドを利用してbreakoutのpivot pointを把握するだけで理解が深まると思います。もちろん、あくまでガイドですので、そのbaseが自分のentryの基準にあっているかは自分で判断します。例えば、Cup-with-handleはhandle部分の出来高が少ないことが望ましいので、base認定されていてもhandle部分の出来高が高く基準に合わなければentryを見送る、などです。

4. 機関投資家の情報を知る

週足チャートでは4四半期毎の保有しているfund数や、現在の経営陣の保有割合が簡潔に表示されている。

その株価の値動きの素晴らしさを物語るには、投資信託などの大口の機関投資家の保有状況を知ることは大切です。MarketSmithでは、四半期ごとの機関投資家の株の保有状況を知ることができます。画面左には1年間の四半期ごとのfund(投資信託)の保有数が簡単にリストアップされています(赤枠)。四半期ごとに保有するfund数が増加するのは好ましいことですが、右の”Related Information”(オレンジ)からみる機関投資家情報では、保有fundの「質」をみることができます。

fundの詳細はRelated Informationに記載されている。8四半期毎のfund数の推移、IBD Mutual Fund Indexに認定されているfundの保有の推移が確認できる。

IBD Mutual Fund Index (オレンジ枠)は、IBDが選び抜いた、短期的かつ長期的にパファーマンスの高い約20程度のfundのリストです。優れた成績をあげたfund投資信託が、四半期ごとにその企業の株を買い進めていれば、優れた機関投資家に買い支えられている何よりの証拠となります。IBD Mutual fund index内のfundが株式を保有していれば表示され、四半期で保有数を増やしていれば青色、減らしていればピンク色で表示され、色で簡単にその保有傾向を把握できます。

5. stock screening, stock research

5-1. MarketSmith Growth 250 (G250)

G250は最も優れたscreenerのうちの一つです。G250は、O'Neilのポートフォリオマネージャーが設計した30個のスクリーンから算出され、RS ratingやEPSなどを加味した、大きな成長が見込める250個程度の選抜された銘柄のリストです。このリストを使用することで、銘柄選定の時間を大幅に減らすことができます。毎週金曜日の引け後に更新されるので、土曜日や日曜日にルーチンで確認すると良いと思います。

5-2. 株価のstage分析

まずは株価のstage分類について説明します。株価のstage分類とは、株価が底打ちして底固めをしている第1ステージ、株価の上昇局面の第2ステージ、株価が天井近く頭打ちをしている第3ステージ、株価の下落局面の第4ステージの4分類のことです。成長株投資では、もっともおいしい局面、つまり株価の上昇局面の第2ステージでの投資を基本としています。『頭と尻尾はくれてやれ』という格言は、まさにこのstage2の局面で投資することを比喩しています。U.S investing championであるMark Minervini先生は、『パーティーが始まる前に参加してポツンと待つよりも、パーティーが盛り上がっている時に参加したい』と表現されています。

5-3. Minervini up-trend template

Minervini先生のup-trendの基準である、株価 >150日移動平均線、株価 >52週安値 x1.25、株価 >52週高値 x0.75、50日移動平均線 >150日移動平均線 >200日移動平均線、200日移動平均線が少なくとも1ヶ月は上向き、RS rating >70を満たしている銘柄のscreeningが見ることができます。単独だけでなく、他のscreeningと併用して使用することもできます。1-4 monthは200日移動平均線が1ヶ月以上、5 monthは5ヶ月以上持続しており、5 month Wideは株価 >50日移動平均線とRS rating>70の条件が除外されており、より強いトレンドの銘柄をスクリーン外にならないように工夫されています。

5-4. 自分好みのscreen設定

自分で好みのscreenを設定することもできます。直近の決算で前年同期比のEPSが+X%伸びている銘柄や、機関投資家に買われている(Accumulation/Distribution ratingが高い)銘柄、Cash flowがEPSよりも年間で上回っている銘柄、指数との値動きの相関を示しリスクを示す標準偏差であるβ(Beta)が高すぎない銘柄(指数の調整局面でより下落しない)、指数に対する超過収益の指標であるα(Alpha)が高い銘柄(指数が1年間変動しなかったと仮定した場合の日次での上昇率が高い)、流動性が低すぎない銘柄(1日出来高 以上)などです。3期増収増益(code33)screenもあります。自分好みにカスタマイズできます。

6. excellでデータ取り出し

筆者が毎週作成しているexcell file。株式情報の分析、記録ができるため、ある程度のexcellの知識も持っているとMarketSmithを最大限に活用できる。

上記のG250や自分で設定したscreen結果を、excellファイルでダウンロードし保存しておくことができます。過去のデータを記録することができるのはもちろん利点ですが、excellを駆使すれば複数のscreenerをoverlapする銘柄を選定することもできます。複数の条件を取り入れた複雑な1つのscreenerでトレード候補を探るよりも、個々のscreenerをそれぞれ見比べて選定した方が良いです。ほとんどの基準を満たしているがある基準のみ満たしていない、そのような銘柄を見逃してしまう可能性があります。1つのnagativeではじくのではなく、複数のpositiveに重みづけをします。具体的には、上図のように、選抜されたG250、トレンド基準である5mW or 1-4m、自分で設定したMinervini基準の4つのscreenをかけ、excellでまとめて管理し、銘柄を選定します。その際はIF関数とCOUNTIF関数を使用し、G250リストを基準として、5mWのscreen一覧に被っているようであればアスタリスクをつけて、他のscreenと合わせてoverlapしているか確認しています。慣れれば5-10分程度でリストを作成できます。

7.  iPadでの閲覧

iPad画面の4分割チャート。高値からの下落や乖離具合がすぐにわかる。
Web版より画面が小さいため、直近の値動きがわかりやすい。

パソコンのwebsiteでサービスを使用できるのに加え、iPadやiPhone等アプリケーションでの使用も可能です。特にiPadでは、それぞれチャートが図のように4分割や9分割されて表示できるため、一度に4 or 9銘柄の閲覧が可能です。高値付近にある銘柄や、高値から一旦小幅に下落しbaseを形成している銘柄を素早く確認できます。筆者はパソコンでの使用が中心ですが、自分の好みのベースを見つけるために4分割のiPadも多用しております。iPadの4分割画面でG250を52週高値の銘柄から降順に並び替え、日足チャートを確認し高値から一旦下落しbaseを作っている銘柄を見つけています。週足チャートもup-trendで理想的であれば、excellでscreenとの条件を照らし合わせ、fundamentalを確認し(SMR ratingやfundsの保有数の推移など)、かなりentryが濃厚になってきたら、会社のwebsiteにいき事業内容や直近四半期の決算報告書を確認しています。筆者は、ある程度fundamentalとtechnicalな要素が反映されたMarketSmith G250を基準にして、株価の動き→大まかなfundamental→細かいfundamentalの順で絞り込んでいく流れで、投資銘柄を選定しています。

8. チュートリアルやWebinar

通学しているかのような豊富な教育コンテンツ。全部みると時間がいくらあっても足りない。

IBD, MarketSmithの素晴らしいところは、教育コンテンツが多いところです。MarketSmithを購読すると、使用方法や株式投資の基本的な考え方など、Webinarでいつでもレッスンを受けることができます。数分単位の動画コンテンツで、スライドやMarketsmith画面を参考に、テーマごとに解説があります。日本語対応はありませんが、ある程度英語ができる方は、英語字幕をつければ大部分は理解できます。またMicrosoft Group Transcribeで文字を起こし、DeepLやchatGPTで和訳すれば、まったく英語ができなくてもある程度内容を理解できると思います。またMarketSmithを購読しなくとも、YoutubeでIBDが配信している無料の動画をみることができます。

9. MarketSmithの利用料

MarketSmith使用料は、$149,95/月 or $1,499/年が基本で、お試し期間(trial)として$29.95/3週で使用できます。日本円で換算($1=¥130)すると2万円/月 or 20万円/年と高額です。年間で20万円程度ですので、金融資産が1,000万円でも2%/年で資産を消費していく、スポーツカー並の燃費です。指数のout performを目標とし、高いαを求める、やる気の強い方向けのサービスといえます。ご自身の金融資産や価値観と併せて、無理なく使用してください。

10. 学習定着率

Learning pyramidには根拠がないが、大いに実感できるのはなぜだろうか。

上図はlearning pyramidと呼ばれる学習定着率の理論モデルです。アメリカの国立訓練研究所(NTL)が1960年に提唱したモデルと言われていますが、特にその数値などには根拠はありません。そもそも学習定着率は集中の度合いや個人差にもより、根拠がないので「ゾンビ学習理論」と揶揄されることもあります。しかし、「受け身だけの学習(passive learning)より参加型の学習(active learning)の方が学びやすい」「動画コンテンツの方がデモンストレーションやシミュレーション感がでるため学習効率が高い」「他者に教えることほど自分が学習できているものはない」など、根拠ではなく納得させられるものがあります。MarketSmithも、まずは自分で実際にサブスクライブして体験した方が、より実感すると思います。そして何より、失敗経験であれ、成功体験であれ、一度経験しそこから学んだことは、誰にも奪われない自分自身の財産となります。

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