古い城跡での怪奇譚

これはまだ自分が学生だった頃に聞いた話

友達のお姉さんの友達が夏休みに入ったので何時も一緒に遊んでいるP子と一緒に温泉へ出掛けた。そこはあまり有名では無いが温泉も良湯で料理も山の幸を中心だが美味しかった。そのまま部屋でゆっくりするも直ぐに時間を持て余していた。しばらくP子はパラパラと本をめくりだし、にんまりしながらこちらに振り向き、ねぇ この温泉の近くにお城の跡が有るらしいよ。肝試し気分で行ってみようと言う。即賛成し着替えて自分達の車でその城跡に向かおうと旅館の玄関に向かう途中、女将さんから声を掛けられた。

少し観光がてらに近くのお城に行こうと思いますと言うと、女将さんは昔にそのお城で酷い戦が有ったから

夜には行かない方が良いと言う。P子は

大丈夫ですよ、2人で行きますし、ライトも有りますから。もし変な事が有れば自分達の車だから逃げてきます、と笑って答えた。

温泉からしばらく走ると城跡の看板が見えた。

近くの駐車場に車を停めて歩く。

夏なのでまだうっすらと明るいからライトは使わなかった。この城は一つの山を丸ごとに築城されていて回るのに時間が掛かりそうだったからとりあえず今歩いているこの山道を進んで行った。しばらく歩くと白い看板で城の跡が印してある。此処であの有名な三姉妹の運命を狂わせた戦いが有ったのね。とP子が呟くとさわさわと風が吹いて来た。

なんか怖くなってきた…帰ろ…と私が言うと

P子はゆっくり頷き元来た道を戻り始める。

2人の足音がジャリジャリと響く。

少しばかり早足に成って歩いていると、

足音に何か違和感の有る音が混じって居るのに気づく。それでも止まらずどんどん帰りの道を進むとそれに合わせてその音もどんどん近付いてくるとその内音が変わる。

ガチ、ガチャ、カチ、ガチャ、ぼたっ…

カチ カチャリ、ぼたっ カチリ

恐怖心と好奇心の混ざった何とも言えない気持ちに成って2人は振り返る。

そこには大きな黒い影が此方に向かって歩いてくる…先程の音を立てながら。

しかし何か気持ち悪い…

P子はひっと声に成らない声を出し

震えている。

その影は暗く成った小道に唯一照らされた月の光で姿を表した。

落ち武者…ボロボロの鎧を着て矢が何本も刺さった状態で立っている。

然もそれは首が無かった。

2人はその場で気絶した…

一瞬ビクッとするも気付くと旅館の部屋で

寝ていた。 

起きましたか?体調は?と女将さんが聞いてくれた…大丈夫です。すいません…

女将さんが言うには余りに帰りが遅いから

見に来てくれてお城への小道で倒れている2人を見つけて旅館の人と部屋に運んだらしい。

体調が悪く成ったら遠慮無く言ってくださいね。それと何が有ったかは聞きませんが、もう夜にはあの城には近付いちゃいけませんよ。

けしてね…。

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