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【メイド備忘録】はじめてメイド服を買った日のこと

その日私はスマホを持って震えていた。高級メイド服専門店milkyangeのリプロダクションワンピース2とリプロダクションエプロン1をカートに入れ、総計33,255円の文字を見ていた。着ていく場所なんてひとつも決まっていないのに、メイド服を買おうとしている。何日も考えてようやく買う気になった。しかも、ワンピースは商品ページに「残りわずか」と記載されていた。

椅子の上で何十分か考えて、ようやく購入ボタンを押した。やった!買った!ロングメイド服が私の家に来るんだ!

ふたたびワンピースの商品ページを見てみると、「在庫なし」の文字が出ていた。私が買ったものが最後だったのだ。

そして1週間後、ダンボールが家に届いた。不織布の袋に包まれた黒いワンピースとエプロンだった。

…美しい。

落ち着きを感じる7分丈のパフスリーブ、手首の部分のスマートさ、所々に潜む黒いレース、品の良さを感じる胸元のピンタックと共布のくるみボタン、愛らしい腰の両側のリボン、そして全円の布が生み出すAラインのシルエット!

理想的なワンピースに重ねるエプロンは、
美しいレースが施された清楚かつ控えめなデザインで、手触りはすべすべだった。

(FOOOOOOOO!!)※心の声

期待通りのメイド服を手に入れ、ワクワクしながら早速袖を通してみた。母が「可愛い!」と言いながら撮ってくれた写真を見る。

…似合わない。

手入れしていないボサボサのショートボブに、汚らしいそばかすが付き脂ぎったスッピンの顔。薄ら笑いを浮かべたムカつく表情。

メイド服は美しいが私は美しくなかった。高揚しつつやや落胆した私はメイド服を脱ぎ、丁寧にハンガーにかけた。

ーーー

それから数ヶ月間、かねてより上手くいっていなかった仕事の悩みが重なって限界が近づいていた。自分を無能だと責めながら毎日意味もわからず泣きながら働いたが、ついに見かねた上司に休職を迫られた。(なぜか被害者意識満載)

自宅のベッドで自分自身に関する問答を繰り返した。ワクワクする物事でしか動けない私が、心の底から好きな物は?これまでの人生でワクワクしてきた物は?…そして私はロングメイドが好きだと気づいた。

休職から復帰した私は、私服でメイド服を着始めた。もちろん職場にもメイド服で出勤した。そして、「メイドのヤミエッタ」という名前でYouTube動画を投稿し始めた。

世の中には素敵なロングメイド服が数多あるが、あの時はじめて手にしたメイド服が今でも私の一番のお気に入りだ。

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