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【秋葉原アンダーグラウンド】第2章 25話

一刻の猶予も許されない状況だった。ワンは息をしていない。

「リン、そんな顔をするな!呼吸は止まっても心臓はまだ動いている!早く、オレをサラのところへ連れて行ってくれ!」

リンは涙を拭い、シンに肩を貸しサラの元へと急いだ。サラは何事もなかったかのように、穏やかに眠っていた。

「サラ、ワンに力を貸してくれ!」

培養液を抽出し、ワンの元へと急いだ。ワンの心臓は完全に止まっていた。リンはワンに覆いかぶさるように泣いた。

「リン、ワンの腕を貸してくれ。これから投与する。」

でも・・・というリンに、大丈夫だ、サラを信じろ、とシンは言い、注射を開始した。

1分・・2分・・・3分・・・・

1秒1秒がとても長く感じた。リンは神に祈る気持ちでワンの顔を見ていた。
5分が経った頃、ワンの顔色に変化が現れた。青白かった顔が、みるみるうちに血色がよくなっていく。

「っはぁぁ!!」

ワンは急に目を開き、息を吹き返した。リンは思わずワンを抱きしめていた。

「なんで男の子って・・・無茶ばかりするのよ・・・」

リンはまたも泣いていた。シャンプーのいい匂いがする。ワンはそう思いながら、リンの頭を撫でた。

「そうだ!オレっ・・・」

そう言って針の刺さった腹の辺りをさすってみたが、傷ひとつなかった。

「ワン、おかえり。」

そう言うとシンはその場に倒れてしまった。傷は深くはなかったが、弾の当たった箇所が多く、失血が多かった。
ワンとリンは急いで医務室へとシンを運んだ。

・・・・・

シンは目を覚ますと、目の前にワンとリンの顔があった。医務室の入口付近にはイジュンが立っていた。

「シンくん、失血死寸前だったんだからね?」

「とりあえず輸血が間に合ってよかったよ。」

一体誰が血を分けてくれたんだ?同じ血液型の人間はこの中にはいない。

「サラくんだ。」

シンは驚いた。確かにサラとは同じ血液型だ。だが、サラの力を持ってすれば輸血なんかする必要はない。

「サラくんは何かのために、予め血液を提供してくれていたんだ。この地下に来るずっと前にな。」

知らなかった。サラからも何も聞いていなかった。おそらくロンやイジュンと共に研究をしていたときだろう。サラの性格を考えれば当然のことだったのかもしれない。

「サラくんの培養液を打っても良かったんだがな。おそらくシンのことだからそれは嫌がるだろうってその2人が。」

シンは再びベットに倒れ笑ってみせた。こいつらはオレ以上にオレのことを知っていやがる。とんだ腐れ縁だよ。

「ところで、今日の10名はどうなった?」

シンはイジュンに尋ねた。

「現在、力の確認できているのは、トガ、ライ、モズの3名だ。もしかしたら、他の7名も発現する可能性がある。」

そうか。シンはそう言うと、目をつぶった。これから毎日のように患者がくる。その度にロンの言う人類兵器が誕生してしまう。この流れを阻止できる方法はないものだろうか。

「シン、お前の考えていることはわかるよ。サラさんを救うには、みんなを救うしかない。でも、救ったらおまけがついてくる。」

「別の方法を見つけるまで、今はこれを続けるしかないと思う。それに、みんなロンみたいに悪いやつばかりじゃないと思うよ!」

ワンとリンは、シンの頭の中を覗いていたかのように話した。

「みんな考えていることは同じだな。そうだ3人とも!オレはしばらく動けそうにないから、3人で・・・いや、リンはマリとルリのそばにいてくれないか?2人は患者の相手をしてくれ。大変だろうが頼む。その間にオレは新しい理論を構築する!」

リンは双子ちゃんは隣のおばちゃんに見てもらってるから大丈夫だけど、朝と晩だけは帰って一緒に過ごし、残りの時間はラボに来てくれるといった。ワンとイジュンも異論はなかった。

そのとき、ドアをノックする音が聞こえた。
イジュンが恐る恐る扉を開けると、そこにはアキモトの姿があった。

#創作大賞2023  

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