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【秋葉原アンダーグラウンド】第2章 第3話

-今から約20年前-

とある大手薬品メーカーの一室で、とある研究が行われていた。正式名称は忘れてしまったが、人そのものが元々持っている再生能力を超活性化させ、一瞬で体を回復をさせる薬品を開発するというものだった。

「ダメだ!これじゃ再生が強すぎて生きた細胞まで殺してしまう!」

「うーん。あとちょっとな気がするんだけどにゃ~?回復はしているんだし?」

「マウスとヒトの細胞は根本的に違うからな。もしかしたら細胞分裂のスピードが速すぎるだけかもしれない。そろそろ対象を変えてみるか。」

研究は、シンとワンという男性2名、リンという女性1名で行われていた。3人とも同じ大学の研究室で育った仲だった。

「シンさんよぉ。対象を変えるって、チンパンジーでも用意するのか?そんなことして失敗でもしたら、それこそ地下行き確定よ。」

「ならいっそ地下で研究を進めないか?この2年、全く成果が出ていないことにスポンサーも金を出すことに渋り始めている。」

「あっちゃ〜。出だしは良かったんだけどにゃ〜。お偉いさんたちは待ってられないって感じかにゃ〜?」

華々しいデビューだった。元々大学で研究をしているときから、ヒトの免疫細胞に働きかける新薬を発明しており、もっと大きな機関で研究を続けないかということで誘われた施設だ。入所後、僅か1年であのIPS細胞を促進させる新薬の研究結果を発表。世の中の期待は増すばかりであった。

「オレはもうヒトに試しても良いと思っている。対ヒトとしては完璧な理論だからな。」

「でもでもでもぉ~。被験者なんてだぁれも出てこないってばっ!」

「シンが第一次被験者ってことで一票〜。」

ふざけた会話に聞こえるが、3人が打ち出した理論は誰が見ても完璧だった。いや、わかる人間からしたらというのが正解かもしれない。それほど複雑だったが、間違いなく天才的だった。

「別に、構わん。」

「おいおい、マジかよ〜。」

「じゃあほんとに地下にでも潜っちゃう?アタシはもっと伸び伸びとやりたいなぁ〜。」

だが、地下といってもこれほどの研究を続けられる施設は存在せず、一から新しいものを作るしかない。それこそ莫大な金がかかり、スポンサーの存在は必須である。それも国家レベル級の。

「まぁ3人の退職金を合わせれば、ある程度は揃えられるんじゃないか?」

「それこそ非現実的ぃ〜。アタシ、ブランドのバック買いたいも~ん。」

「リン、お前はもう少し先のことを考えろよ。ちょっと我慢すればエルメスでもグッチでも買いたい放題なんだぜ!」

「買いたい放題・・・にょほほほほっ♪」

リンは私欲を抑えられないときがある。頭は良いんだが・・・

「よし。そうと決まれば善は急げだ。1ヶ月後にここを出ていけるように、今から荷物をまとめよう。」

「シン、善は急げの使い方間違ってるぞ。」

「にょほほほほ〜♪エルメスにグッチにシャ〜ネ〜ル〜♪」

3人は翌朝、上司に退職の意思を伝えた。当然猛反対を食らったが、3人の意志は固い。せめて席だけでも残してほしいと懇願されたが、適当な理由を付けその場を後にした。

「我々の身勝手に、一般市民を巻き込む訳にはいかないからな。」

「シンくん、やっさしぃ〜♪」

「よぉし!ちゃっちゃと片付けてズラかろうぜ〜!」

しかし、3人が実質フリーとなることをどこで嗅ぎつけたのか、ある男たちが3人の前に現れた。

「君たちの活躍は聞いている。どうだろう?私の元で働かないか?もちろん、君たちのやろうとしていることに口は出さないし、口外もしない。ただ、君たちの研究を間近でみさせてくれればそれでいい。」

首相のアボと側近のロン。それにアキモトの姿がそこにあった。

#創作大賞2023  

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