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【秋葉原アンダーグラウンド】第2章 4話

3人に不満はなかった。十分なカネ、十分な施設。国策となるが、それでも自由にやっていい。誰も文句は言わない。注目されている。自分たちは間違ってなんかいない。

シン、ワン、リンの3人は、東京の地下深くへと案内された。

「うぅっ、何だか気味悪くなってきたよぉ・・・なんで東京の地下にこんなのがあるのぉ・・・?」

リンは泣きべそをかきながらそう呟いた。

「戦時中の防空壕か、もしくはバブル期に行われた都市開発の残骸か。あるいは・・・いざという時の核シェルターかもしれないな?もちろん総理官邸専用のだが。」

シンは冷静に言い放った。確かにそのどれもが正しそうだなと、ワンは心の中で呟いた。

「素晴らしい!流石はシン君だ!だがね、ここの施設はそのどれでもないのだよ?」

首相のアボはいやらしい笑みを浮かべながら答える。地上での表情とはまるで別人のようだ。施設と言ったが、そこらにある研究室とは比べものにならないくらい最新鋭の機械が揃っている。そして、最近まで使われていたような痕跡もあった。

「まるでオレらがここに来ることを知ってたかのような場所だな。」

「あぁ。それに、このベッドには最近誰かが寝たような形跡がある。それに、薬品の臭いが少し残っている。」

「ええっ?・・・なんだか怖いよぉ・・・」

3人は施設内の機械を見て回る。徐ろにシンはこう言い放った。

「ここで、人体実験でもしてたんですか?」

なぜそう思ったのか?ワンがシンに聞こうとしたその時、

「本当に素晴らしい男だ!いや、勘の鋭いといった方が正しいか?何より私の、いや、彼の目に狂いはなかった!」

アボはそう言い放ち、ロンの方を向く。なるほど、アボはただのスポンサーであり、指揮をしていたのはロンの方だったのか。となると、アキモトもスポンサーの一人か?とシンは心の中で呟く。ここまで一言も喋らないアキモトに、シンは不気味さを覚えた。

「勿体無いお言葉。恐れ入ります、総理!」

ロンは今度はシンに向け言った。

「どうしても我々の力だけではこの先に進めないことがわかった。どうだろう?その頭脳、その力を貸してくれないだろうか?」

人体実験をしていたという話を聞けば、倫理上誰もがそれに加担しなくなると思ったロンは、深々と頭を下げていた。

「この先って・・・あんたらどこまでやってんだよ!?」

ワンは黙っていられず、シンが口を開く前に叫んでいた。

「ワンくん、ちょっと!」

慌ててリンが止めに入る。

「すまない、順番が逆だったね。こちらに案内しよう。」

ロンはそう言うと、3人を研究室の奥へと案内した。

#創作大賞2023  

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