2023/2/27 高校時代のとある思い出

高校2年生の時、宗教の勧誘に遭ったことがある。

部活の友人と地元の繁華街で遊んでいて、同じ年頃の女の子2人組に声をかけられたのだ。
友人(ここではNちゃんと呼ぶ)と2人、ゲームセンターでプリクラを撮るためにウロウロしていたら、「何高ですか?」というような感じで話しかけてきた。

そんな風に他校の子と交流する機会もなかったため新鮮でうれしく、流れで一緒にプリクラを撮ることになった。

その後お茶でもしようという話になり、マクドナルドへ入った。
2人とも派手でもなく極端に地味でもない親しみやすい子で、どのあたりに住んでいるかなど、その年頃の子達が初対面で話すようなことで盛り上がった気がする。

ところが、30分くらい話し込んだところで突然2人が私たちに尋ねてきた。
「◯◯様って知ってますか?」

聞いたことのない神様の名前だった。

唐突な質問にあっけに取られた我々は、またたく間に相手のペースに呑まれた。
詳細は忘れたが、彼女たちの話はおおよそこんな感じだった。
「近々世の中に大変な災いが起きる。◯◯様を信じ修行をする者は難を逃れ、そうでない者は呪われる。」

高校生だった私は、それが宗教の勧誘であることにも気づかなかった。
というか、宗教の勧誘というものがこの世に存在することすら知らなかったのだ。

少し前まで楽しく話していた新しい友人が豹変しこちらを脅してくることに、ただショックを受け、怯えた。

彼女たちは畳みかけるように神様の話をし、呪いから逃れるためにはこれから自分達と電車で一駅離れた修行場へ行ってお祈りするしかないと、選択を迫ってきた。
とても強い口調だった。

どのぐらいの時間話を聞いていたのか覚えていないが、修行場へ行く行かないのやり取りはとても長く感じた。
日は暮れかけ、帰る時間も迫っていた。

出口のない押し問答に頭がぼうっとなった私は、ほんの少し修行場に顔を出せば彼女たちが許してくれるのではないか...?と、相手の説得に負けそうになった。

その時だ。
Nちゃんがトイレに行きたいと言い出し、私も一緒に連れ出してくれた。

マクドナルドのトイレで、数時間ぶりにNちゃんと2人きりになった。
どうしよう、と私が困り果てていると、いつも穏やかで控えめな彼女がめずらしく、けれども、きっぱりと言った。

「呪われないから、帰ろう。」

それから2人でもう一度彼女たちのところに戻った。
Nちゃんは「修行場には行けません。呪われても良いので帰ります。」と言った。

それを聞いた2人はますます怒り、祟りが来ますよなどと帰ろうとする私たちに向かって叫んだ。
私たちは足早に店を出たが、2人は追ってこなかった。
駅に向かって急いで歩く間も、心臓は早鐘を打っていた。


宗教二世の話をニュースで見かけることが多くなり、ふと高校生の頃のエピソードを思い出した。

今までは、ヘンな目に遭ったなとしか思っていなかったけれど、よく考えたら、私と同じ年頃だったあの子たちも、きっと何かの二世だったのではないだろうか。

高校時代の貴重な休日を使って、勧誘できそうな子に狙いを定め、声をかけていた彼女たち。
プリクラからマクドナルドへの流れがとても自然だったから、初めてではなかったと思う。

どんな気持ちでやっていたのか、今頃どうしているのかと、思いを馳せた。

Nちゃんともここ10年ほどで疎遠になってしまったから、もう2人でこの話をすることはできないけど、あの時トイレに連れ出してくれてありがとう、冷静でいてくれてありがとうと、切に思う。
(たぶん大人の勧誘だったら途中で席を立たせないだろうから、彼女たちも子どもだったのよな...としんみりしてしまうが)

今でも同じ神様を信じていてもいなくても、幸せでありますように。

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