山桜アリョウシカ

母はよく「ウチにはイワンがいなくてヒロはアリョーシャだ」と言っていた。ヒロとは私で、う…

山桜アリョウシカ

母はよく「ウチにはイワンがいなくてヒロはアリョーシャだ」と言っていた。ヒロとは私で、うちの家族をカラマーゾフ家に喩えた言葉と思う。先立った父の不品行を妬んでフョードルと罵ったのであろう。しかし、父は単なる放埒者でも拝金主義でもなかった。実存主義的理想に燃え清貧に身を投じたのだ。

最近の記事

「鳥獣戯画」とドストエフスキー

日本最古のマンガともいわれる「鳥獣戯画」。  蛙、うさぎ、猿が、歩き、踊る、笑っている。  生きとし生けるものが人と同じように生きているという視点。 山川草木悉皆成仏的視点。 それは現代人が最も求めている思想と言える。 現在陶芸の森では現代陶芸作家による「Human and Animal」展(※1)が行われている。館では近年リサラーソンのユニークな動物作品も好評を博した。動物たちの愛らしい姿。  ところが、現代人は経済の繁栄を目指し、生命の価値にまで値段をつけている。 岡本

    • 「神がなければ、全てが許されている」

      僕の親は実存主義に影響を受けた世代でしたが、僕らはサルトルなどあまり読まなくても感性として「実存が本質に先立つ」という感覚をサブカルチャーなどを通じてカッコいいと刷り込まれていました。でも、その時代精神を経て日本は良い方向へ向かったでしょうか? この視点から当時のロシアの状況と現代日本の状況は本質的に似たような課題を持っていると思います。 僕自身がそうでした。高校ぐらいの頃、今「ペスト」で話題になっているカミュの「異邦人」に強い共感を持ちました。それは「太陽のせい」で不条理に

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