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名所絵

めいしょえ

「諸国の名所を屏風や障子に連作で描く絵画様式。平安時代から江戸時代に継承」

歌枕(和歌に詠み込まれた歌ことばで、狭義にはその地名を指す)などとして知られる諸国の名所を選び、それらを連作として屏風や障子などに描く絵画様式です。四季絵などとともに日本の風景や風俗を描いた平安時代の大和絵にすでにその様式が見られ、大和絵の主要なジャンルとなっていました。名所絵の構成は、和歌に詠まれた名所の情景を描き、主題となった歌が画中の短冊形の色紙に能筆をもって書かれ、絵画・和歌・書を三位一体として鑑賞しました。名所絵の伝統は中世にも引き継がれ、縁起物や高僧伝に採用されており、鎌倉時代の『西行物語絵巻』や『一遍上人絵伝(いっぺんしょうにんえでん)』も名所絵の側面をもつといえます。室町時代後期に成立した『洛中洛外図』、さらには近世の寺社の祭礼図などにも名所が描かれており、江戸時代後期の歌川広重作『東海道五十三次』や葛飾北斎作『富嶽(ふがく)三十六景』などの浮世絵版画シリーズも名所絵の伝統を継承しています。

東海道五十三次之内 蒲原  広重筆  東京国立博物館蔵
冨嶽三十六景・五百らかん寺さゞゐどう  飾北斎筆 東京国立博物館蔵
冨嶽三十六景・相州江の嶌  葛飾北斎筆 東京国立博物館蔵

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