【インタビュー】MOTORHEADレミー・キルミスター 映画マニア・インタビュー 2003

レミーと会話するのは毎回楽しかったです。知識が豊富でヒネリが効いていて、言葉のキャッチボールというか、時に顔面や股間にボールをぶつけてくる感じでした。
初出は映画秘宝誌。
 
 
●生まれて初めて見た映画は？
 
覚えてないな。もしかしたら『ピクニック』(55)だったかも知れない。ウォーレン・ベイティが出てたっけな？あと『緑色の髪の少年』(48)もガキの頃に見た記憶がある。
 
●子供の頃にしては渋いラインアップですね。
 
うん、女の子と暗闇の中にいられるならどんな映画でもよかったんだ。
 
●アクション映画などは？
 
アクション映画好きの女の子と暗闇の中にいられるから、よく見にいったよ。女の子はアクション・スターが好きなんだ。カーク・ダグラスとかジョン・ウェインとか。グッド・ルッキングなタフガイは女の子にキャーキャー言われるものだよ。最近じゃスティーヴン・セガールがそうだろ？
 
●他にどんな映画を見ていましたか？
 
誰でもそうだろうけど、ホラー映画が好きだったよ。『First Man On The Moon』っていう映画があって、小便をちびるほど怖かったのを覚えてる。『First Men On The Moon』っていう映画もあるけど、それではなくて、宇宙船の中で伝染病が蔓延するって話だ。あとはハマー映画をよく見た。タイトルは忘れちまったけど、『帰ってきたドラキュラ』だか『ドラキュラの母ちゃん』だか『ドラキュラの隣りの家に住んでる奴のイトコ』だか、山ほど見たよ。『私は十代のドラキュラだった』なんていうのもあったかな？
 
●『ティーンバンパイア』はありましたが、ハマーではないですね。
 
そうか？まあいいや。ホラー映画といえば『エクソシスト』も名作だな。
 
●『エクソシスト』が公開された1973年にあなたはLSDでラリっていた筈ですが、リアルタイムで見ていたのですか？
 
ああ、今よりもマメに映画館に行ってたぐらいだ。頭がバカになってて、一度見ただけじゃ理解できなかったから、同じ映画を何度も見にいったりしたよ。ある日LSDでぶっ飛んでるときに宇宙船のポスターが貼ってあるのを見て、「SF映画か。見てみよう」と思って映画館に入ったら、それが『2001年宇宙の旅』だった。70mmの大スクリーンであのラストを見せられて、衝撃を受けたんだ。凄いトリップだった。当時俺は何人かの友達と空き家に不法占拠してたんだけど、帰るとすぐに「おい、みんな。今すぐLSDをキメろ。映画を見にいくぞ！」って言って、映画館で全員であああああってなってた。その中の一人のイラン人学生は、二日間戻ってこれなかったよ。何を言っても「あああああ」って（笑）。
 
●よくガンベルトをしていますが、それは西部劇からの影響ですか？
 
その通りだ。ガキの頃からずっとローン・レンジャーになりたかったけど、ガンベルトなんて高価いものは手に入らなかった。大人になってもまともなギャラをもらえなくて買えなかったけど、モーターヘッドでようやく印税が入るようになったから買ったんだ。最近ウェスタンってジャンルが廃れちまったのは残念でならない。『アラモ』とか『チザム』『ソルジャー・ブルー』...クリント・イーストウッドの出てくるイタリアン・ウェスタンは特に好きなんだ。『夕陽のガンマン』『続・夕陽のガンマン』は舞台がメキシコ国境近くだから、本当は"ウェスタン"と呼ぶのはおかしいんだけどな。『荒野のストレンジャー』もお勧めだよ。カーク・ダグラスもウェスタンで有名だけど、彼が出てくる史劇物は良いね。『スパルタカス』とか『バイキング』での彼は最高だったよ。息子のマイケルも良い俳優だと思うけど、親父には及ばない。冒険物・アクション物をやればいいのにな。『ナイルの宝石』とかは面白かったんだから。ただ、体重を落とさなきゃダメだな。セックスだけじゃフィットネスにはならないよ。そういえばこないだカーク・ダグラスの自伝を読んだ。ユダヤ系ポーランド人のゴミ拾いの息子で、本名はカークでもダグラスでもないんだぜ！
 
●映画俳優の伝記はよく読みますか？
 
特に意識して読んでるわけじゃないけど、気がついたら何冊か読んでるな。新作映画の公開に合わせてでっち上げたようなものが多いんだけど、イングリッド・バーグマンの自伝は良かった。彼女の人生はロック・スターよりも波乱の連続だからな。デヴィッド・ニーヴンは何故か何冊も自伝を出してて、そのうち2冊を読んだけど、やっぱり面白かった。あとマイケル・ペイリンの本はいつだって傑作だ。彼の自伝もそうだし、旅行記もすごく楽しめるよ。
 
●マイケル・ペイリンはモーターヘッドのアルバム『ロックンロール』(87)にゲスト参加していますが、彼とはどのように知り合ったのですか？