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初北海道3日目 1989年7月26日-③ 阿寒湖〜阿寒横断道路

阿寒湖では結局、車から降りることはなかった。雨が降り続いていたことと湖畔の温泉街が観光地にありがちな路上駐車がひどくて、すぐにでもそこから離れたくなってしまったからだ。観光客で混雑している観光地から離れたかった。自分だって観光客のくせに勝手なもんだ。

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R241、通称「阿寒横断道路」を東に向けて走る。スケールのでかいワインディングロードだ。霧雨が降り続いていて、晴れていればすぐ近くに雄阿寒岳が見えるはずはずだけど、それすらも靄の向こうにぼんやりとしか見えない。仕方なく走り続けると道路の右に双湖台の駐車場が見えたので車を入れた。

駐車場には車は一台もなく、この天候だし湖も見えないのかなあとあまり大きな期待をせずに展望台への坂道をあがっていった。すると嬉しいことにその予想に反するように展望台からは森の中にひっそりと佇む2つの湖(ペンケトーとパンケトー)をきれいに眺めることができた。

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展望台から手前側に見えるペンケトーは北海道の形に見えると言われていて、確かにその姿は地図でよく見る北海道の形によく似ていた。パンケトーはペンケトーの上に小さく見えたが、実際には何倍も大きな湖だと後で知った。阿寒湖で休めなかった分その展望台でしばらく休憩。10分ほどいただろうか、その間に誰も訪れる人はなく、まあやっぱり今回は徹底的に自分は一人旅なんだなあとしみじみと阿寒の大自然の中で感じた。

再びR241に戻る。弟子屈方面に向けて阿寒横断道路を走行中にこの旅で初めてのキタキツネに遭遇した。北海道ではもっと簡単に野生動物を見かけることができるんだろうなあと想像していた。ただ自然の宝庫の知床で会えなかったので、もう無理なのかなと多少諦めていたけどようやく初対面だ。2頭のキタキツネは国道の路肩で観光客からもらった何かを食べているようだった。結局この旅の間で遭遇したキタキツネはこの時だけで、ヒグマはもちろん残念ながらエゾシカにも会うことはできなかった。

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前半はワインディングロードだった阿寒横断道路は弟子屈に近づくにつれて徐々に北海道らしい真っ直ぐな道に姿を変えてきた。いつの間にか雨はほぼ上がっていて、ワイパーがガラスと擦れ合う嫌な音を立てていた。手つかずの大自然を誇る阿寒の深い森林地帯を抜けたこともあり、外の明るさを感じるようになってきた。そしてその長かった阿寒横断道路の終盤で、僕はこの旅で最も強く印象に残る場面に出会うことになる。

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