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初北海道4日目 1989年7月27日-① 弟子屈〜根室

4日目の朝は弟子屈にある鐺別温泉の宿で迎えた。町はずれのとてもアットホームな雰囲気のある小さな宿だった。食事も美味しく宿の皆さんもとても親切で、宿泊費を少しサービスしてくれた上に出発の時にオニギリを2つ持たせてくれた。ひとり旅の若者にそんなあたたかい心遣いが本当にありがたかった。今はどうなっているのかなと調べてみると、残念ながら2020年現在その宿は営業していないようだった。でも僕の中であのオニギリの思い出はずっと消えない。

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雨の朝だった。もちろん晴れた日のほうがいいに決まっている。でもせっかくきた北海道。無理矢理にでも「雨の北海道を楽しむぞ!」という前向きな気持ちを持って、その萩の家旅館を出発した。

北海道ひとり旅も残すところ2日。明日が最終日だ。明日の夕方、釧路空港を飛び立つ飛行機に乗って僕の旅が終わる。最終日にあまりバタバタしたくなかったので釧路湿原を中心にその周辺をまわろうと考えていた。そんな理由から今日の宿泊地は釧路市内にするつもりでいた。初日に空港を出発してすぐに通過した釧路だ。

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昨夜布団の中で地図を見ながら、道東に来たんだしやっぱりとりあえず北海道最東端には向かわないといけないよなと思ったので、まずは納沙布岬の町である根室に向かうことにした。宿を出ると初日にも一部分を走ったR243号線をひたすら東に向かって走り続けた。

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道東の牧草地の真ん中を真っ直ぐに伸びる国道は初日に夏の日差しの下を快走した道だ。いつの間にか降っていた雨は上がり、初日も通過した本別海まであっという間に到達した。初日はそのまままっすぐ海まで進んだが、今日は右折して奥行臼方面に向かった。周囲の景色は平坦な牧草地帯から、小さなうねりが遠くまで続くテレビなどでよく見るアラスカの大地を思わせるような景色になった。

奥行臼の町で再び右折し、風蓮川を越えてどんどん南下する。ただただ南下する。根室を目指して。

残念なのは当時の僕はこの周辺についての知識があまりに少なすぎた事だ。インターネットもなかったこの時代、目立った観光地のない奥行臼周辺は、ガイドブックには観るべきもの寄るべき場所の記載が皆無だった。今なら丸一日かけられるくらい魅力的な訪問地が山ほどあることを知っている。最東端の納沙布岬のことしか頭になかったこの時の僕は、全く寄り道もせず車を停めもせずひたすら走ってしまった。今さら後悔してもどうしようもないけど、本当にもったいないことをしたなと思う。

30年以上経ってそんな気持ちになるなんて事を知らない僕は、厚床でR44号線に右折し最東端を目指してひたすら東に向けて車を走らせた。青看板には「根室」の文字が見え始めていた。



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