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藤岡夕里子『教えて、くま先生!こんなときどうする? 社会保障あんしん教室』日本法令

日本の社会保障制度の全体について理解することは難しいと思われますが、それを10の事例により、普通の人でもわかるように解説しています。事例の中では、【くま先生】と【こはるさん】が会話形式で、トーク&スタディを行っています。

事例としては、次のものを取り上げています。
事例1 がんと診断:今後の生活は?
事例2 発達障害:退職
事例3 失明の危機:老齢年金との調整
事例4 脳出血が原因で半身不随
事例5 親が認知症で要介護状態
事例6 定年退職
事例7 会社が倒産
事例8 夫が死亡 残された妻子
事例9 知的障害のある子どもの将来が不安
事例10 持病が悪化。仕事ができずアパートを追い出されそう

事例1は、がんと診断された鈴木さんです。専業主婦の妻、大学生、高校生の子どもがいます。

まず、受診した病院に併設されたがん相談支援センターに相談に行きました。医療ソーシャルワーカーの相談員の山田さんに、会社から言われた傷病手当金の受給の取得について尋ねました。2週間の入院のあと2ヵ月後には復職が予定されていることから、傷病手当金は生活に困窮していないならば、あとから請求できます。今回は取りあえず請求しないことにしました。

有給休暇の取得については、今後の抗がん剤治療で、たびたび休みを取らないといけないので、そのとき取得したほうが心理的に休みを取りやすいとアドバイスされました。

高額医療費の限度額適用認定証を取得して、入院中の医療費に関して、多くの自己負担金を支払わずに済むように手続きをしました。

医師から、治療の際には会社に配慮してもらうように話してくださいと言われたことを聞いた相談員の山田さんは、産業保健総合支援センターに相談することをアドバイスしました。鈴木さんは、会社の上司とも相談し、治療と仕事の両立支援を受けることにしました。

しかし、1年後、再発を宣告されてしまい、再手術で人工肛門をつけなけらばならなくなりました。鈴木さんは、非常にショックを受けて退職を考えましたが、相談員の山田さんは、休職して入院し、復職するかしないかは退院する時点で会社と相談するように言いました。

この時点で、生活費がかなり厳しくなったので、傷病手当金を前回休んだ2ヵ月分も含めて請求しました。また、人工肛門をつけたことから、障害者手帳の交付請求し、今後人工肛門にかかる装具費用の受給ができるようにしました。

退職すると、傷病手当金は1年6ヵ月分で終了してしまうこともあり、障害年金の請求を社会保険労務士に相談することにしました。また、国民年金保険料の免除申請、国民健康保険の保険料の減免を受けることにしました。

再手術で健康が回復し、再就職をめざすことにしました。ハローワークで仕事を探しながら、雇用保険の基本手当(いわゆる失業手当)を受給することになりました。障害者など就職困難者と認定されれば、より有利に受給できます。

雇用保険の基本手当を全部もらい切らずに再就職すれば、再就職手当や就業促進定着手当が受給できることもあります。

65歳になれば、老齢厚生年金を受給できるので、障害厚生年金と比べて有利なほうをもらうよう個別に判断することになります。

社会保障制度の活用方法には、正解はなく、また人それぞれによって異なっていることと思われます。しかし、困ったことが起きたら、自分ひとりで悩むのではなく、それを相談できる所を見つけてつながることが必要と思われます。この本で、どんな制度や、どんな支援があることを知ることが、その一助となると思いました。


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