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老齢年金を繰り下げして受給すれば、得するのですか?

年金の繰り下げの上限年齢が75歳に引上げられたことから、年金の繰り下げについて関心がある人が増えていると思われます。昭和27年4月2日生れ以降の人は、従来の70歳までに加えて、70歳を超えて75歳まで年金の受給開始を遅らせることができます。繰り上げ増額率最大84%となります。

繰り下げると年金の受給額が増えることは魅力的であり、検討するに値すると思います。そのためには、繰り下げ期間に代わりの収入があることが前提となります。企業年金などは70歳まで受給できることが多いので、その間は年金の繰り下げも可能となることとなります。

また、65歳を超えて仕事を継続し、給与収入がある場合も同様に考えられます。しかし、在職老齢年金の制度により、厚生老齢年金と給与を合計して47万円を超えると老齢厚生年金が支給停止となり、厚生老齢年金を繰り下げて実際には受給していなくとも、支給停止分については年金が増額しないことに注意が必要です。

また、繰り下げは、基礎年金と厚生年金とは別々にできるので、片方だけでの繰り下げも選択肢となります。なお、配偶者の厚生年金加入期間が20年未満であれば、厚生年金に加給年金が加算されるので、厚生年金は受給し、基礎年金だけを繰り下げるという選択肢も考えられます。

さらに、企業年金や給与収入がある場合、さらに老齢年金を受給することで、収入が増えて税金も増えてしまうことから、企業年金や給与収入がなくなる70歳あたりで受給を開始するという考え方もあります。

一方、自分自身の身体能力も重要です。個人差はありますが70歳までであれば、ほとんど身体的な不自由がなく自ら動ける人が多いと思われます。しかし、70歳を超えると身体的能力が下がってきて、すばやい動きができなくこともあります。

80歳くらいになると体に支障が出て、90歳になると元気と言われながらもひとりで生活することが困難になってくることが多いと思われます。自らの両親の亡くなった年齢も考慮し、自らの健康状態から、どのくらいまで元気でいられるのかということを考え、また、それぞれの年齢をどのように過ごしていくかも一応考えることも有益です。

2019年の数値では、健康寿命が男72.68歳、女75.38歳、平均寿命が男81.41歳、女87.45歳となっています。健康寿命は、支援や介護が必要せずに自立的に生活できる年齢です。70歳代までは趣味や旅行などを楽しむことが重要かもしれませんが、80歳以降となると入院や介護の費用が必要となる可能性もあります。

ここで注意すべきことが75歳以上の後期高齢者の医療費自己負担割合の改正です。年金収入とその他の所得の合計額が383万円(夫婦とも後期高齢者の場合は520万円)以上の場合は3割負担ですが、これに加えて200万以上(夫婦とも後期高齢者の場合は320万円)以上の場合は2割負担となります。令和4年10月1日から適用となります。

老齢厚生年金と基礎年金を併せて受給している人の場合は、かなりの人が対象になると思われます。また、この200万円以上という金額は、与党内の妥協の産物と言われ、今後さらに引き下げられる可能性もあります。政府は、後期高齢者医療費の自己負担割合を最低でも2割以上にしたいと考えていると思われます。

あえて、年金収入を200万円未満とすることはお勧めできないのですが、繰り下げで年金額を増やすと、逆に損をする場合があることも念頭に置いて考える必要はあります。

なお、ここでは老齢年金のことを考えていますが、今まで障害基礎年金を受給していた人が老齢基礎年金の方が金額が多いと選択替えすると、老齢基礎年金に変更したことで、税金、国民健康保険料、介護保険料、NHK受信料、年金生活者支援給付金等、広く影響します。その他市町村の福祉サービスを受けられなくなることもあります。

老齢年金についても、所得に応じて、税金、国民健康保険料、介護保険料は変わってきます。社会保険料の負担についても考えないといけない場合があるかもしれません。しかし、年金事務所の窓口では、税金や保険料について明確な回答を避けて、税務署や市町村の窓口を案内されると思われます。

住民税非課税世帯であれば負担する費用を最小限に抑えらる代わりに、慎ましく最低限の生活水準となります。なお、給与や年金など100%捕捉されてしまうもの以外で、収入や資産があれば良いかもしれません。なお、預貯金や不動産は調査される可能性があります。

日本の高齢者が受給できる年金額は、他国と比較しても決して高額ではありません。だからこそ、年金額を増やすことを考えることは、一般的には良いことであると言えます。ただし、他の負担が増えることも考慮しないといけないと言うだけです。

毎年の収入と支出をシミュレーションをしてどうするか考えることが大切です。

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