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泉房穂、ひろゆき『少子化対策したら人も街も幸せになったて本当ですか?』KADOKAWA

子育て政策が評価されている明石市の泉房穂市長と、討論番組の論破王とも言われているひろゆき(西村博之)氏との対談となっている。

明石市は、18歳までの医療費と、第2子以降の保育料を無料にしている。さらに、0歳児のオムツ定期便、中学校の給食費無料、プールや博物館など子ども施設の入場無料と、5つの無料化を所得制限なしで行っている。

所得制限をかけないことにより、ダブルインカムの納税者が入ってくるので、お金を落とすから、地域の経済が回り出して、税収もどんどん増えている。

オムツ定期便で、子育て経験のある女性配達員が、オムツやミルクを無料で届けることで、ドアを開けてもらう。お母さんの話を聞いてあげることにより、コミュニケーションが生まれ、赤ちゃんの様子も伺える。孤立防止にもなる。

母子健康手帳を発行する場合も、1時間程度のヒアリングをする。ヒアリングをすると5千円のタクシー券を支給する。それが面倒だとする人は、大体ワケアリだから、怪しいとわかる。深刻な事情があれば、後で家庭訪問をする。

子どもの定期検診に来なければ、翌月から児童手当の支給を止める。お子さんと一緒に役所まできてもらって、母子の健康が確認できたら、お金を渡す。

予算をつけるだけなら極めて簡単である。むしろ、児童相談所の職員の数を国の基準の2倍以上に増やし、医師や弁護士などの専門職の方も入れる。そして、怪しいと思ったら毅然と保護し、間違ったら市長がすぐさま謝る。

高齢者と商売人を敵に回さない。子育て政策をやってから、コミュニティバスの無料化など高齢者サービスを充実させた。子育て政策がうまく機能して家族連れが増え、明石駅前は過去最高の好景気で反発もなくなった。

道路整備や災害対策は、土建業者にお金を落とすことが目的だから、そのあたりを適正にする。

泉市長の4つ下の弟が、先天性の脳性麻痺で、近くの小学校ではなく、遠くの養護学校に通うように言われた。両親が交渉して同じ小学校に通えるようになったが、誓約書を書かされ、毎日登下校を共にした。しかし、誰も手を貸してくれなかった。泉市長は、冷たい社会をやさしくしてみせるという誓いを立てた。

障害者や貧乏人に冷たい社会への復讐心からで、障害者福祉が原点である。手話言語などの利用促進、スロープ費用の助成、優生保護法の被害者の支援、インクルーシブ条例の4つの条例を制定した。

市営住宅の建設中止、下水道工事の削減をやり、全政党、業界団体、ほとんどの市役所職員を敵に回したことから、3年前の暴言騒動。今回、市議会議員に対する暴言の責任を取って、2023年4月で退任することを表明している。

少々ユニークで、けんか早いところがある泉市長ではあるが、政策の先を見通す力はすごいところがある。中間層を対象として、所得制限なしで子育て政策をしなければ、全く効果がないことがわかる。貧困層にしぼればお金はかからないが、効果は得られない。さらに、地域経済も好循環する。

しかし、どこの地域でも一律の政策が効果があるかどうかは疑問だとする。地域に合った政策にする必要はある。

子育て政策が目玉になる時代となった。子育て政策のヒントを得たいのであれば、本書を読んで、泉市長の深謀遠慮を理解することが近道のように思える。



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