ハイテクがなんだ!(久住昌之)



SFマンガが予言した未来がことごとくはずれているのは、パーソナルコンピュータの出現を予測できなかったからだ、という言説を読んだ気がします。
確かに、子どものころに読んだ未来予想図には、一人一台のコンピュータなど描かれてはいませんでした。
では、パソコンが登場してから描かれたマンガは、2023年という未来を予想し得たでしょうか?

未来のパソコンはどうなっていると思いますか?の問に対して、A、B両氏はこう答えました。
A「音声入力が実現されてキーボードは不要、文庫本サイズになる。え?文庫本サイズパソコンで何をするかって?そうだな、えーとパソコン通信交換日記……ってダサいか…」
→ダサい!と罵声を浴びる
B「マンガ・アニメ世代が社会の中心になるのでビジュアル対応が進む、折り畳み式カラー液晶で地図帳サイズ(B4サイズ)となる。しかもマンガもアニメも映画も音楽もニュースもすべてがパソコン通信で送られてくるのだ!」
→大歓声と拍手喝采を受ける


以上は1992年発行の「久住昌之のハテイクがなんだ!」に収録されたオリジナルマンガです。
まだWindows95が登場しない、パソコンを使うにはMS-DOSが必須という時代によくぞここまで予測した!

音声入力可能な文庫本サイズはスマートフォンを思わせますし、B4サイズ折り畳みはともかくとして、カラー液晶でマンガもアニメもリアルタイムに楽しめるとは、
まさに現代のタブレット端末そのものです。
まあ、インターネットという概念が普及していないので「パソコン通信経由」というのは致し方かないトコロでしょう。

作者の久住昌之氏は、本書の巻頭、初期の東芝DynaBookに悪戦苦闘します。
MS-DOSをエムエスディーオーエスと読み、DOSの起動ディスクを抜いて一太郎のディスクと入れ替えるタイミングがわからない。
一太郎の起動画面が表示されるまでに要した時間、実に7時間半!

「一太郎のディスクを入れたら一太郎になって、三太郎を入れたら三太郎になるようにしてくれ!」と泣きながら叫ぶイラストは、笑いながらも激しく首肯せずにはいられません!

それくらいパソコンが苦手な久住氏だからこそ、音声入力が実現とかカラー液晶のマシンとメディアが直結するという夢を見て語ることができたのでしょう。
テクノロジーの進歩は素人の夢が後押ししていると言っても過言ではありません。

今では、一太郎のディスクなど入れずとも、一太郎の小さな絵をクリックするだけで一太郎になる時代ですからね。
インストールしてさえあれば!