―歌詠みの国― 野伏翔(映画監督)
新緑が五月の風に揺れ、陽の光に白く輝いて美しい。タンポポの黄色に始まり桃や桜のピンク、つつじの燃える紅。色とりどりのハナミズキ、そしてチューリップやバラも日本の春を装い私たちの目を楽しませてくれる。更に真夏の深緑、秋の紅葉と冬の雪景色。日本の四季は一年中日本人の目を楽しませ心を癒し続けてきた。故に日本民族は古来より自然を愛し歌を詠み、江戸時代に完成した俳諧は世界に類を見ない季語を必要条件とする最も短い詩の形を生み出した。
しかし日本人の歌心は神代の時代から延々と続いている。