マガジンのカバー画像

【倒産後記〜今だから言えること、言いたいこと】

70
創業105年の老舗スーパーの社長が「倒産」してからの出来事や心情を綴ります。
運営しているクリエイター

2022年10月の記事一覧

【自己紹介: 初めまして!】

2017年12月、家業だった山梨のスーパーマーケット「やまと」を倒産させ、自分も破産した三代目社長の小林 久と申しますm(__)m 最盛期16店舗、年商64億円、創業105年の老舗スーパーでしたが、私の経営努力が足りず信用不安を引き起こし、業者からの納品停止の後あっけなくその歴史に幕を下ろしました。メディアでも取り上げられたので、ご存じの方もいらっしゃるかも知れません。 「地域土着」などと格好をつけ、様々なことをしてきました。そして倒産時から現在に至るまで、従業員や取引先

【倒産後記① 一番みじめな場所から始めよう!】

2017年末、負債総額17億円で経営破綻した山梨県限定で有名な「スーパーやまと」。その社長が恥ずかしげもなくその顛末を綴った本を出版する。 その名も「こうして店は潰れた」 「会社を潰したヤツが何を今さら!」と競合他社からは本の広告や書評さえも握り潰される始末。そこには業界の暴露話が盛り沢山に記されている。 「いいさ、それならまだ買い手がつかない潰れた店先で売ってやる」という想いで『最高に惨めな場所』に自分を晒し、店舗の店先に机を並べ、妻と2人で書籍を売り始めた。 「10

【倒産後記② 絶対に座りたくない椅子】

甲府地方裁判所大ホール、負債総額17億円、債権者700名超。地元老舗スーパーの破綻のニュースにメディアも殺到! まあ、当の自分も一番遠い立場だと思っていましたが、最終的にこのパイプ椅子に座る結果となりました(泣)。これで一巻の終わり、あとは人目を忍んで霞(カスミ)を食べて生きていく人生、これまでの努力もすべて水の泡…。 残るは夜逃げか自◯のみ。 全店閉鎖から3か月半、年度末3月の最終日、私の弁護士に「こんな日にやるんですか?」と尋ねたら、「裁判所の配慮じゃないですかね?」

【倒産後記③ 「スーパーやまと」が潰れた5つの理由】

2017年12月、105年の歴史に幕を下ろした家業の「スーパーやまと」 (山梨県ではその知名度はそこそこあった(^^ゞ) その3代目である私の社歴を簡単に説明すると、 ⦿ 先代の赤字を引き継ぎ、短期間で業績を回復 ⦿ 倒産したスーパーの居抜き出店で成長、「地域土着」を貫く ⦿ 競合店の進出等で資金繰りがつかず、納品してもらえずに倒産 これだけで済んでしまう😅💦 『note』に思い出話や自画自賛ばかりを並べ、自分に都合の悪いことを書かなければ、人の参考にもならないし、ただ

【倒産後記④ 地獄の沙汰も金次第】

「倒産するならあらかじめXデーを決め、支払いも遅らせろ。その後の生活費も必要だから、少しづつ資金を社長の個人口座以外にプールしておけ。そしてしばらくは家や会社に戻れないから、居場所を確保しておくように!」 倒産したことのない物知り顔の友人がそう言う。あるある話だ。 金融機関の支援の下、久しぶりに黒字転換した我がスーパーは「信用不安からくる問屋の一斉納品停止」の一撃で突如倒産したためそんな余裕はなかった。というより、もしそう決断したとしても、頑張ってる従業員や長年の取引先やお

【朝日新聞「ひと」】

倒産から9ヶ月後、(株)商業界から『こうして店は潰れた~地域土着スーパー「やまと」の教訓~』を出版して間もなく、商工会議所や経済団体・学校から講演依頼が来るようになりました。 倒産の当事者が話すのは「怖いもの見たさ」もあって人気となり、それ以外にも沢山のメディアに紹介して頂きました。倒産経験をお話しできることは、自分にとっても心の整理にもなり、落ち着くとともに寂しさも感じます。 写真の記事は、HISやハウステンボスの経営をしている澤田秀雄氏が主宰する、次代の経営者やリーダ