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社会人野球日本選手権〜晩秋の片隅で

大阪ドームでの日本シリーズが終わり、すぐに社会人野球日本選手権が開幕した。日本シリーズより楽しみな大会。今年で48回目を迎える。

11月8日(水)から19日(日)までの12日間、前年王者トヨタ自動車をはじめ、予選を突破した32チームが優勝旗である「ダイヤモンド旗」を争う。決勝の日は東京ドームでアジアプロ野球チャンピオンシップを追いかけているので観戦できない。

来年はプレミア12と重なるので、どうしても今年のうちに見ておきたい。7月の都市対抗野球で大ファンになったヤマハの1回戦がある11月10日(金)に足を運んだ。


社会人野球日本選手権の歴史

http://archive.jaba.or.jp/jabataikai/index.html

東の都市対抗野球が太陽なら、西の選手権は月。WBCとプレミア12と似ている。第1回大会は1974年(昭和49年)10月28日。阪神甲子園球場。都市対抗の第1回大会が1927年(昭和2年)で神宮球場。日本選手権は47年後輩にあたる。初代王者は三協精機。

http://archive.jaba.or.jp/jabataikai/index.html

それまでは夏の都市対抗、秋の日本産業対抗野球大会(後楽園球場)が行われていたが、両方とも東京開催。日本選手権によって関西の全国大会が誕生した。その後、大阪球場、グリーンスタジアム神戸と場所を移し、1997年から大阪ドーム(京セラドーム大阪)に定住。

都市対抗も産業対抗も補強選手(同地区の地方予選で敗退したチームから最大3選手をレンタルできる制度)があるが、社会人野球日本選手権は純粋な自社の企業戦士のみ。都市対抗に対抗して「単独チーム日本一決定戦」とも呼ばれる。

11月10日(金)

新宿からの深夜バスに揺られ10時間、大阪は秋雨に濡れていた。5日前まで日本シリーズがあったとは思えない閑けさ。平日の金曜の朝から野球観戦なんて、セレブか老後かニートくらい。食っていくためには仕事が必要だが、そんなこと知ったこっちゃない。

Honda熊本 vs. JFE東日本

4番ゲートから入ってP列を探しても見つからない。スタッフに聞くと超ラグジュアリーな席。しかも選手は眼の前。これで1,200円だから信じられない。初めての野球観戦は社会人野球に限る。

10時プレイボール。先攻はHonda熊本。くまモンが応援に駆けつけ、誰よりキレッキレのダンスに場内が騒然。

今大会注目のひとり山本卓也がリードオフマン。九州代表決定戦で5打点を挙げただけあっていい振りをしている。

JFE東日本の林桂大も150キロ超えの直球。予選を勝ち抜いてきたチームが集まる社会人野球日本選手権はレベルが高い。

目についた選手はHonda熊本のキャッチャー丸山 竜治。ヤクルトの中村悠平と間違えるほどのキャッチング。

めちゃくちゃ良い捕手では?と思ったら去年、社会人の侍ジャパンに選ばれていた。名キャッチャーの構えは横綱の立合いのような雰囲気がある。

Honda熊本は1点を先制されるが、丸山のホームランから6-4で勝利。ホームランはこの日3試合の重要なキーワードになる。

日本新薬vs.信越クラブ

第2試合が始まる前に球場を追い出され、10分ほどで再び入場。試合前の球場メシは『いてまえ猛牛カレー』1,200円とメロンソーダ300円。どこまでも庶民の味の甲子園カレーと違い、欧風の少し高級感ある味。

初めて観た社会人野球が2015年7月25日、第86回都市対抗野球大会(2回戦)ENEOS vs.日本新薬だった。スポーツニッポンの校閲部でアルバイトしていてタダ券をもらえた。だから日本新薬を応援。

日本新薬は選手は入場時、お辞儀。感謝と喜びを表現していた。

社会人野球になると、1回を完璧に抑えられ投手戦かと思いきや、2、3回から急に捉えだす。

打席に立たなくてもベンチから僅かな時間で相手ピッチャーの球を見極める。これが学生野球との差。いいピッチャーにも力負けしない地力(パワー)と技術(経験)がある。

気になったのは日本新薬が2点差で負けていて3番の橋本に送りバント。クリーンアップでスモール・ベースボール。高校野球ならまだしも、長打力のある打者に不思議だ。次の4番がチャンスで倒れる。

すると2本のホームランで突き放される。2-5で敗戦。下位打線ならまだしも、3番が送りバントは不思議。ホームラン40本の坂本勇人に送りバントさせた原監督を見本にしているのか?

ヤマハvs.日本通運

イオンモールで時間を潰し、トリプルヘッダーの最後。いよいよ贔屓チームのヤマハ。

バックネット裏、最前列、ホームベースの真後ろ。 これで2,700円の破格。生で野球を観たことないひとは、ぜひ社会人野球へ。

スピルバーグの映画の中に「紫の美しさを感じなければ神も寂しがる」とあるが、ヤマハのユニホームは、そのとおりの麗しい色。

シートノックが抜群に美しいヤマハの守備。コーチも上手い。

右腕を見ればわかるが、日常生活のなかでやらない筋肉の使い方をするのが野球。だから野球は非日常性に溢れている。

オリンピックに出るアスリートですら始球式でワンバンしてしまうのは、野球の筋肉の使い方ができていないから。

ホームベースに美しい円が描かれる。

ヤマハは応援もガチ。プロ野球の応援を凌ぐ。

日本通運は踊り子のチーム。さすがの人数。WBCのスポンサーだけある。

試合前にエールの交換。社会人野球がアマチュアリズムである所以。

ヤマハの網谷は一目散に守備位置に駆けていく。さすがメインイベンター。風格がある。

ヤマハの先発は九谷青孝、33歳。

都市対抗の決勝でもリリーフで登板。かなりクセのある投球フォーム。果たして奏功するか。2回を0点に抑える好調な滑り出し。

日本通運はエース格の古田島成龍を投入。これが奏功。

150キロを超える直球にヤマハ打線は沈黙。

3番が矢幡 勇人が空振り三振。

ここで、またもや不思議作戦。2回裏、相手のエラーでノーアウト一、二塁のチャンスを作ると6番の大本拓海(DH)にバント。一、二塁は野球で最も難しいバント。タッチなしでアウトになる。

2回表に同じ場面で日本通運も犠打を試みて失敗している。投手の立ち上がりが不安ならスモール・ベースボールではなくヒッティングに行くべきだと思うが。バントをするのは、むしろ1点差を争うクロスゲームの終盤だろう。

無得点に終わると3回表、日本通運は俊足の手銭竜汰の内野安打から先制点。

4回裏、2点差に離されたヤマハは6番の大本拓海がソロホームラン。

立命館大学出身、都市対抗の決勝戦でもホームランを放った。ますます先ほどのバントが悔やまれる。

古田島 成龍は気迫のピッチングで7回を投げ11奪三振。

5回が終わりグラウンド整備に入るとコーラとお芋さんを買う。

8回裏、ついに先頭の川邉 健司がヒット。大本がホームランを打ってから12打席ぶりのヒット。

しかし、秋利 雄佑になぜか代打。この日は当たっていないとはい、都市対抗の決勝でも9回にホームランを打った。同点ツーランの可能性はある。

相手がサウスポーの相馬和磨だからか?秋利のサウスポーの相性は知らないが不可解な作戦。代打の鈴木光にバントのサインを送り、失敗して追い込まれてからヒッティングに切り替え。

2点差で負けていて、バント?結局、ヒッティングが成功しノーアウト一、三塁。

チャンスを作ればヤマハ名物の『エンドレス』の出番。他のチームも『サンバデジャネイロ』を使うが、ヤマハの演奏は全然違う。

世界の野球でも応援で涙が出るのはヤマハくらいだろう。

残念ながら構造がゲッツーに倒れて万事休す。日本通運はこの日一番の歓声。

波多野 陽介が気迫のピッチングを見せるが集中力が切れてエラー。2点を失い4-1とダメ押し。

最終回も必死に応援し、大本 拓海が四球で出るが最後の代打・青柳 直樹がセカンドフライに倒れゲームセット。

明らかな敗因であるスモール・ベースボールとは逆に、ヤマハの応援は第迫力だった。やはり日本一。

ヤマハには大本と宮崎竜成と2人の立命館大学の出身もいる。ぜひともチームを建て直し、来年の都市対抗に出場してほしい。50回の記念大会には大阪ドームに帰ってきたい。

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