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終わらざる夏

甲子園では準々決勝が行われ、海の向こうでは大谷翔平が43号グランドスラムを放った8月19日の土曜。相も変わらず東京は殺人的な酷暑に襲われた。お盆を過ぎても秋の気配は来ない。終わらざる夏が続く。

神宮球場に来るのは今年3回目。春の早慶戦、初夏の全日本大学野球選手権だ。ヤクルト戦を観るのは2年前以来。そのときは最下位を独走していた頃で退屈な野球だった。今回も同じく最下位争いだがモチベーションが違う。

村上宗隆が欠場したものの楽しみは変わらない。相手は最下位を争う中日だが先発が髙橋宏斗。3週間前に東京ドームで観たが、もう一度あの投球を見られるとは。そしてヤクルトの先発が高橋奎二。WBCでピギーバックとリリーバーを務めた両雄の投げ合い。このふたりならWBC並の9,000円という破格の値段も納得。

恵比寿での用事を済ませ、16時の開門と同時に球場入り。まだ日差しは強い。守備練習のビシエドも辛そうだ。

打撃ゲージでは細川成也がバッティング練習。

一流選手の美しいフォロースルー。高橋奎二との対戦が楽しみだ。

球場メシは中村悠平の福井名物タレカツ丼。1,100円。中村悠平は今日の観戦のお目当てのひとり。

しかし、つば九郎と談笑するものの今日は休養日。ホームでそれはないだろう。休ませるならアウェイのときにしてくれ。恨むぜ高津監督。

ナンダカンダ叫んだって夏も終わろうとしている。17時を過ぎると涼風が訪れ、気温が少し下がる。

初対面の高橋奎二。このストレッチによって今のダイナミックなフォームが完成した。

中日の髙橋もウォームアップ。

WBCの両雄が並び立ってピッチング練習。タカハシ対決を制するのはどちらか。

選手より存在感のあるマスコットつば九郎も見守る中、18時プレイボール。

高橋奎二はセットポジションからユニホームを引っ張ってグラブを隠す。そこから脚を高く上げる。

伝統の平安サウスポーにふさわしいダイナミックなアーリーコッキング。

レイトコッキングも躍動感に溢れている。

体重が乗り、鞭のようにしなるリリース。ストレートの球速は常時150キロを超える。130キロ台後半のスライダー、100キロ台のチェンジアップを使い分け緩急は申し分ない。

ダルビッシュに教わったスライダーも披露。あとはストレートで空振りを奪えるようになれば一気に化けるに違いない。

初回、ストレートを狙い撃ちされ石川昂弥に2ランホームランを浴びる。しかし、失点はこの一打のみ。徐々に調子を上げ6回121球、被安打7の5奪三振とまずまずの成績。将来メジャーに行くには決め球のチェンジアップとストレートをどれだけ磨けるかだろう。

21歳にして中日の顔になりつつある髙橋宏斗。この日は最速154キロと本調子ではなかった。コントロールも甘く三振は3つしか奪えない。

それでも終わってみれば7回117球、被安打5の自責点2。見事に試合を作った。ヤクルトの高橋と違い、ストレートで空振りが奪えるのが大きい。決め球のスプリットも活きてくる。

山田哲人の盗塁を見たかったが、この日は活躍なし。2四球を選んだのは流石だが、これでは物足りない。ボールが全然手前なのにバットはすでに中間地点まで来ている。スイングスピードが速い山田哲人ですらコレ。いかにプロの選手が0コンマの世界で戦っているか。

ヤクルト1点リードの9回表、クローザーは現在セ・リーグのセーブ王・田口麗斗。夏らしいミントグリーンのグローブが映える。

最速151キロのストレートに大きく曲がるスライダー。堂々たるマウンドさばき。

最後のバッターを三振にとると、アロルディス・チャップマンを彷彿させる仁王立ち。セーブ王も納得。これは打てん。WBC戦士の2人とは違う凄みがあった。次は巨人の最終戦。今度こそ中村悠平を見たいが厳しいか。

ここからは球場論。神宮球場は大学野球の聖地であり、球団の持ち家ではない。間借りしている球場。しかし、一塁スタンドからは新国立競技場、NTTドコモビル、新宿の都庁のライトアップが見える。

景色が閉ざされた東京ドームとは違い、東京のランドマークを望める。かつてヤクルトは四国移転(松山坊ちゃんスタジアム)への移転も噂されたが、立派に東京を代表するチーム。

打ち上げ花火も夏を彩る屋外球場ならでは。

日本一柄の悪いかもしれない在京の中日ファン。昭和の匂いがあり大好きだ。逆にバンテリンドームのファンは大人し過ぎる。野球は代理戦争。ファンはこうであってほしい。

最下位を争うチーム同士の試合。内野席は8,900円のセレブ価格。それでも完売御礼の人気コンテンツ。競技人口は減ってるらしいが、野球が日本のナンバーワンSPORTSであることは変わりない。

【お知らせ】
WBCの電子書籍を自費出版しました。世界一詳しい侍ジャパンの本です。ぜひご覧ください。


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