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Dragon Night

そうだ名古屋、行こう。思い立ったのは2日前。秋に出版するWBCの書籍を執筆していたらバンテリンドームに行ってないことに焦った。ナゴヤドームは侍ジャパンにとって重要な地。詳しくは書籍に書くので割愛するが、今回は試合や選手が目的ではなく、あるスポット。

かつてジャイアンツ時代の松井秀喜やイ・スンヨプが叩き込んだライトスタンドの5階、パノラマ席と名付けられたホームランゾーン。12球団で最もホームランが出にくいといわれるナゴヤドームで、こんなところまで飛んでくる心配はない。そこにぶっ飛ばしたのが大谷翔平だった。

8月11日、三連休の初日。予想はしていたが品川駅はごった返し、新幹線の指定席、グリーン車はすべて売れ切れ。自由席に座れたのはありがたかった。11時17分発の新大阪行き。車内でずっと寝ていたが15分遅れの到着。駅員さんが必死に乗客に誤っていた。何かあったのか?

13時9分、中央本線に乗り換え大曽根駅へ。13時半、開場の16時まで時間が余っているので駅前のQBハウスへ。

「旅先で髪を切れ」は水曜どうでしょう軍団の掟。サッパリして野球観戦にのぞむ。安室奈美恵のCAN YOU CELEBRATE?が流れていた。

続いてはドームから歩いて7分ほどの大幸温泉。WBC優勝のTシャツを着ていたら、女将さんが日の丸の国旗のマークを見て右翼と思ったらしい。「WBCのTシャツです」と言っても「なにそれ?」と野球のことを全く知らない。ナゴヤドームの前に住んでいて逆にすごい。

一方、サウナから出てきた近所のおじいちゃんは整うどころか愚痴のオンパレード。「ドラゴンズが弱いもんで、もう野球観戦なんて何年も行ってねえよ。広島戦なんてドームが真っ赤っ赤のときがあるでよう」

2013年からの10年間、2020年の3位が最高で順位で9年間Bクラス。しばらく球場から足が遠のいていた野球ファンにWBCは強力な磁石となっている。

水風呂に浸かったあと、ドームに向かうとドラゴンズカラーのファミマを発見。ただし店内は普通で竜のグッズはなかった。

ナゴヤドーム前矢田駅からのびるドラゴンズロード。3月はここがサムライロードになった。

UFOのような円盤状のバンテリンドーム外観。多くの野球ファンがWBCという未知との遭遇を果たした。

この駐車場も3月は人で溢れかえった。目の前のイオンモールでショッピングや夕食をとりながら胸を躍らせたのだろう。

16時の開場と同時に球場入りすると広島のバッティング練習中。

秋山翔吾や小園海斗が打撃練習をするが、パノラマ席どこから柵越えもない。

そのパノラマ席から望むバンテリンドーム。ゴルフじゃあるまいし、こんな所まで野球の重いボールを運ぶなんて人間業じゃない。

試合開始まで、名物「がぶりもも焼き」を求めて並ぶ。みんな練習そっちのけ。1時間以上も待った末に、なんと売り切れ。それはないだろう。もうちょっと在庫を多くできないか?

ピンチヒッターに球弁(たまべん)のホームラン弁当1,300円。この日、2本のホームランを見れたのは、この縁起のいい弁当のおかげか。

ご飯、おかず、どれも絶品。この日も売り切れ。野球は最下位に沈んでいるが、弁当の美味さは首位ではないか。

野球は試合前の円陣がいい。赤のユニホームと合わさって、余計に元気に見える。負のオーラがない。

広島の先発は野村祐輔。絶滅危惧種になりつつあるワインドアップ。この日のピッチャー17人の中で唯一、振りかぶっていた。いや、今年に入って野球を11回、観戦しているが、振りかぶる投手は野村が初めてではないか。

ピッチャーは振りかぶることでパワーを蓄積し、間を作る。そこから一気に全力を解放し発射する。やはりワインドアップはスケール感、躍動感があってカッコいい。東尾修が「今のピッチャーはセットポジションばかりでつまらない」と嘆くが同意見だ。

最下位をひた走る中日の希望は岡林勇希。最初の打席でレフトへのテキサスヒットを放ち、94年のイチローを超える24試合連続安打。

まだ21歳。3年後はWBCで躍動するか?ライバルはヌートバー。厳しすぎる戦いになるが、どこまで成長するか楽しみ。

9回表、3-3の同点の場面でうれしいライデル・マルティネスの登場。WBCキューバ代表。祈りを捧げる儀式がピッチャーの孤高を語る。

同じくキューバ代表のジャリエル・ロドリゲスがシーズン前にアメリカに亡命したが、マルティネスは中日に帰ってきた。

大谷翔平と同じ193センチ。細身だから余計に長身に見える。長い脚の踏み込みの迫力。

ここまで防御率0.00も納得の最速158キロ。WBCで日本と対戦していたらどうなったか。

先頭打者の西川龍馬にはヒットを打たれるが、その後は危なげなく抑える。バント作戦を取らなかった広島の新井監督もすごい。この駆け引きが野球の醍醐味。

9回裏、今度は広島のクローザー栗林良吏。なんという幸運。WBC戦士を2人も観れた。ロジンをつけるローテーションもピッチャーの崇高さが出ている。

WBCに選出されるピッチャーはフォームの躍動感、球のキレが全然違う。典型的なフォークボーラーと思っていたが、156キロの直球があるからフォークが生きる。地元の名古屋で気合が入ったのか、山本由伸のストレートよりすごかった。

日本のプロ野球は侍ジャパンに選ばれるかどうかが基準のひとつになる。来年のプレミア12でも見たい。セ・リーグの野球はDH制の導入をめぐって議論されるが、代打の面白さは野球の醍醐味。先日のパ・リーグでは代打はゼロ。メリットの多さを考えるとDH制を導入すべきだが、どちらの野球が面白いか聞かれるとセ・リーグだった。

12回を戦い3ー3の引き分け。タイブレークはあったほうがいいか?それともシンプルな延長戦がいいか?野球ファンと議論してみたい。

試合後、グラウンドを整備するスタッフ。美しい夢の球場は陰日向に咲く仕事で作られる。

【お知らせ】
WBCの電子書籍を自費出版しました。世界一詳しい侍ジャパンの本です。ぜひご覧ください。


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