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サンマリンの風に抱かれて

WBCを追いかけて6ヶ月。侍ジャパンの戦士を見るためプロ野球12球団すべての試合を観戦し、トーナメント制の野球を学ぶために高校野球の甲子園、全日本大学野球選手権、社会人の都市対抗野球にも足を運んだ。9月は台湾にU-18のワールドカップ、米国はフェニックス、マイアミでMLBも観た。そして、いよいよ最後の取材。侍ジャパン始動の地・宮崎だった。


10月8日(日)


10月8日(日)3連休の中日。朝6時半のバスタ新宿。相変わらず座る場所がないほど、ごった返している。熱気ムンムン。観光地に向かうバスは満席多発。去年までは観光客ダイエットが起きて、今はリバウンドが凄い。

この1ヶ月で3回目の羽田。国際線の感覚で2時間前に保安検査場を通る。各地を飛び回る取材記者の苦労が少しわかった。文筆よりも移動が大変だ。物書きも体力が命。身体を鍛えないと。宮崎の天気は本降りの雨らしい。明日も悪天候でフェニックス・リーグの試合がどうなるかわからない。それもまた旅。迷わず飛べよ、飛べばわかるさ。

フライトの2時間は爆睡。隣が空いていたので快適だった。宮崎ブーゲンビリア空港のトイレは男女ともゴルフ。さすがゴルフの町。2004年11月、タイガー・ウッズを見るためダンロップ・フェニックスに来て以来、約20年ぶりだが、ブーゲンビリアの花言葉の通りゴルフへの情熱が衰えない。

空港内にはフェニックスリーグのパネル。このあと、西武の山川穂高が到着したようだ。惜しい。ニアミス。無事に開催してくれるといいが。

外は土砂降り。JRで宮崎駅へ。わずか3駅、10分ちょっとの距離で360円。東京の感覚に慣れると、他のすべてが高く感じる。

詩季

JR宮崎駅からホテルは近いが荷物も多く雨がつらい。チェックインは15時からしかできないというので、荷物だけ預けて昼飯。3連休でどこも休業中だが、宮崎県庁のそばにある「詩季」というお店が営業してくれていた。ありがたい。創業50年を超える老舗。ビーフカレーはちゃんとスパイシーなのに、メチャクチャやさしい。喫茶店のカレーは同じ味が多いが、全然違う。

珈琲はブラックで飲むことが多いが、生クリームのまろやかさとミックスすると至高の癒し。 創業50年以上のこだわりと温もりに包まれた昼下がり。

焼肉「犇」

ホテルに戻り、昼寝。昨日は2時間しか寝ていないので、さすがに眠い。17時半にホテルを出発。傘をさしてハイカラ通を征く。

2月20日、侍ジャパンの伝説となった「宇田川会」が行われた場所。今回の旅の大事な目的地。橘通の東に佇む。高級な雰囲気。

店内には14人の投手陣の写真とサイン。偶然かもしれないが、この店を予約した戸郷翔征と宇田川優希のサインが真ん中にあるところに、メンバーの関係性を感じる。

対応してくれた若いお兄さんに侍ジャパンと同じものが食べたいというが、ご存知ない。「スタッフの方で知っている人がいないか聞いて頂けますか?」と伝える。すると店長さんが来てくれ当日のメニューを全部、教えてくれた。ありがたい。詳細は11月に発売する電子書籍で公開する。

クローザーは石焼ビビンパ。腹いっぱいになって9,490円。想像の26倍旨い。来てよかった。最高の取材ができた。ホテルに戻ってWBCの日本vs.イタリアの準々決勝をYouTubeで見だしたが、1日の疲れがどっと出て22時には眠りについた。

10月9日(月・祝)

5時に目を覚ましたが疲れが取れない。二度寝、三度寝をして起きたのは7時。雨は降っていないがシャワーを浴びると再び降り出した。8時24分に宮崎に津波注意報。雨足も強くなってきた。フェニックスリーグの公式サイトを見ると全試合中止。ホテルでMLBのプレーオフ観戦に変更。アリゾナでも雨で飛行機が遅れて試合を見れなかったが、屋外でやる野球観戦の旅は天候との戦い。それにしても野球の神様は試練を与えてくれる。

小雨になり正午すぎに散歩。

宮崎八幡宮を通ると、今年は前厄らしい。来年は厄年。どうでもいいが。

宮崎風土あっぱれ食堂

フェニックスリーグが中止になったので、もはや食う以外に我が道はなし。『宮崎風土あっぱれ食堂』で、チキン南蛮・冷や汁・宮崎地頭鶏の炭火焼き、そして大トリは宮崎マンゴープリン。3,000円近くしたが、どいつもコイツも美味すぎて五臓六腑に沁みる。ELTの『For the moment』が流れていた。

キママブックス

ホテルに戻る途中、小さな本屋さんがあった。大きい書店にない小さな出版社の書籍や店主が読んで好きな本を置いている。温もりに包まれた癒しの空間。四冊の本を買った。『キママブックス』という書店。

10月の宮崎で2日続いて雨になるのは珍しいとのこと。完全なる雨男になってしまった。紙の本は木からできているから温もりがある。3年は電子書籍オンリーだが、いずれは紙の本を出したい。

昨日に続いて『詩季』で休日の昼下がり。宮崎で50年以上続く珈琲館。一番好きな豆キリマンジャロ。酸味のキレが鋭く力強い。ヘミングウェイの小説で有名な雄大な山の名にふさわしい。美味しい珈琲が癒してくれる。

豊吉うどん

宮崎で創業90年を超える『豊吉うどん』川端康成も安くて美味しいと絶賛したとか。『巨人の星』の春季キャンプで食べているのを読んで、宮崎=うどんのイメージ。

肉うどん、おにぎり2つで700円。地元のお母さんが作ってくれる。宮崎らしい甘くてやさしい味。うどんの理想像。大好きになった。

ウルワシ

食後の珈琲が飲みたいと思ったら、橘通に創業51年『ウルワシ』があった。宮崎は老舗が多くて嬉しい。

広々とした純喫茶。お客さんは若いカップルがチラホラ。店員さんも女子大生くらいのアルバイト。どこがボーッとしている。南国らしい。

店名の由来『麗しのサブリナ』にちなんで『ローマの休日』『マイ・フェア・レディ』『おしゃれ泥棒』『ひまわり』『昼下りの情事』『パリの恋人』『シャレード』などオードリー・ヘプバーンの9種類の映画ブレンド珈琲「名画シリーズ」を選べる。なぜ『ひまわり』があるのか謎。オードリーの最高傑作は『許されざる者』だが、さすがに無かった。次に好きな『ティファニーで朝食を』はブルーマウンテンを使用したブレンド。スッキリして美味しい。アルバイトの女の子にケーキセットの料金になるのか事前に聞いていたが、会計に行くとバラバラの料金で1700円。おいおいと思ったが、気持ちよく1日を終えたいので支払った。

10月10日(火)

5時45分に目を覚ます。外は暗い。晴れそうだ。昨夜、橘通で買った南国プリンを食べる。宮崎のパワーを吸収して最後のWBC取材。7時前に朝日が昇る。アリゾナやマイアミでも旅を包んでくれた。お世話になったホテルにビニール傘を寄付して宮崎駅へ。

7時52分、青島行きの日南線。木花駅にロッカーがないようなので、500円で預ける。背中が軽くなった。

ひなたサンマリンスタジアム宮崎

ジャイアンツ色に染まった木花駅。無人。改札なし。Suicaで宮崎駅を通ったので精算ができない。WBCのときは人でいっぱいだったろう。

駅前にもパームツリー。マイアミを思い出す。

歩いて10分ちょっとで球場が見えてきた。

平日の朝8時。地元の人が朝の散歩やジョギングをしている。

外観は普通の体育館。

立派な壁。緑が美しい。

太陽が昇ってきた。今日は暑くなりそうだ。

秋にはストレリチアの花が咲く。

WBCでも使われたサブグラウンド。

野球は野っ原でやるもの。味がある。

室内練習場。ここもWBCで使われた。雨の日のピッチング練習の場所。

ひなた木の花ドームに向かう途中、ひむかスタジアムの前を通る。中日vs.楽天のフェニックスリーグが行われる。

ひなた木の花ドーム

サンマリンスタジアムからクロガネモチの並木を2キロ歩く。

立派な外観。

人気なし。ラッキーなことに開放されていた。

観覧席からの「ひなた木の花ドーム」

宮崎県産の杉を7,400本使用した単層アーチ構造。

なんとグラウンドにも入れる。こういう時に遠慮してはいけない。

木の温もりと純白の天井が清々しい気分にさせてくれる。

ミニ東京ドームといった感じ。まさにWBCのためにある滑走路。これだけでも来た価値があった。

フェニックスリーグ

フェニックスリーグは5番ゲートのみ開放。ちょっと見つけにくい。

球場に入ると韓国選抜が練習。ジャイアンツの選手はいないようだ。

地方球場らしい座席。シートが日焼けしている。

どことなく台湾の球場に似ている。同じ南国だからか。

サブグラウンドに移動して巨人の練習を見る。浅野翔吾を見るのは今年7回目。

期待の岡田悠希。

今日も熱男な浅野翔吾。

1人だけキャッチボールの球質が違う巨人の育成ルシアーノ23歳(ドミニカ)

豪球、剛球。

ぜひ登板して欲しい。とてつもない日差し。たまらずドリンクを買いに行く。

素晴らしい自販機。こういうのが各地に欲しい。

ヨーグルッペは『秒速5センチメートル』で見て鹿児島の飲み物と思ってたけど、宮崎だと初めて知った。

今日は浅野翔吾はスタメン外。宮崎の人は滅多に見れないから代打でも出場してほしいところ。

試合前の円陣は萩尾匡也。守備練習でも周りを笑わせていた。

来年こそは丸佳浩を代打に追いやって欲しいところ。

菊田 拡和が4番なのは嬉しい。鈴木大和も注目。しかし残念ながら良い場面は見れず。

韓国選抜。カタカナ表記がありがたい。

いよいよプレイボール。ひなたサンマリンスタジアム宮崎、つくづく美しい球場。バックスクリーンの頭上に太陽、広大なファウルゾーン、海から吹く風がグラウンドの匂いを連れてきてくれる。東京ドームが築地に移転するなら天然芝にしてほしい。

3回1安打ながら、おそらく最速は144キロだった先発の堀田賢慎。

後半にかけてのストレートのキレはさすが。本人も満足はいってないはずなので、来年の飛躍に期待。

ここ数試合、別格の活躍を続ける山瀬慎之助。今日も3打数3安打の猛打賞。しかも全部が右方向の技あり。

打てるキャッチャーは全チームの課題なので、打撃でアピールできるのは大きな戦力。

鬼肩の慎之助バズーカーも健在。

アジアプロ野球チャンピオンシップに呼んでもいいのではないか。来年は無理でも2025年は巨人の正捕手を奪取してほしい。東京ドームの入場曲はセプテンバーでどうか。

韓国選抜。巨人のユニホームかと間違う。

とにかく振りが強い。ホームランは出なかったが、初対戦のピッチャーでも強振しまくる。

韓国の野球は面白い。来年の球春は高尺スカイドームに韓国プロ野球を観に行く。

2安打の岡田悠希。

平安高校の出身だけで大応援なので、来季は1軍で活躍を。

試合中に外野へ移動。サンマリンスタジアムの全景が見える。

台湾の球場がそうであるように、野球場は余計なものを削ぎ落としたシンプルな構造のほうが好き。

グラウンドや土の匂いが伝わってくる。ここを本拠地とする球団があればと願うほど素晴らしい球場だった。

韓国選抜の先発ハン・スンヒョク。韓国のボールはMLBの公式球に近いと言われるので日本の球と合わないのかノーコンなのかコントロールに難あり。

このフェニックスリーグで見た選手が3年後のWBCに出てくれると嬉しい。

嬉しいことにルシアーノが登板。

荒削りもいいところで、良い球と悪い球の波が激しすぎる。安定感が出てきたら1軍でも無双できるポテンシャル。

初対戦の韓国は強振し1回で3点を奪う。

飛行機の時間が迫っていたので7回途中で帰る。駅に向かう前に近くのモスバーガーへ。WBCのときの様子を教えてもらった。

宮崎駅に戻りロッカーから荷物をピックアップ。駅内にある豊吉うどんで、たぬき冷やしうどん。温うどんのほうが美味い。

宮崎空港

晩ご飯は宮崎空港のマンゴーソフトと日向夏ソフト。

3ヶ月間でWBCゆかりの地である大阪、名古屋、台湾、フェニックス、マイアミ、そして宮崎を巡ったぶっ飛びカードの旅もひと段落。

映画『フィールド・オブ・ドリームス』と同じく貯金が底を尽いた。後悔などあろうはずがない。あとは原稿を完成させ、新宿で仕事三昧。

【お知らせ】
WBCの電子書籍を自費出版しました。世界一詳しい侍ジャパンの本です。ぜひご覧ください。


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