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文化財保護部局はどこへ行くべきか

平成31年の文化財保護法改正で、文化財保護部局が従来の教育委員会から首長部局への事務移管が可能になった。これは、文化庁が文化財の取り扱いについて、従来の保護一辺倒から保護+活用にかじを切ったことと連動する。地域の文化財を観光資源として有益に活用できるように、というのが含みとしてあるものと思う。
従来、文化財保護部局が教育委員会の所管だったのは、文化財保護が生涯学習の一貫と位置づけられていたところが大きいのではないかと思うが、文化財の(主に観光資源としての)活用の観点から首長部局へ移管するとして、どの部署に落ち着くのがいいか、考えてみたい。

文化財が観光資源になり得るという点に異論はない

文化財の観光資源化という点から考えると、文化振興や観光を担当する部局(例えば文化観光部)がいいかもしれない。商工観光課との協同で様々なイベントを開催できるメリットがある。一方で、文化財保護課の業務で大きな位置を占める発掘調査は開発に伴って実施されるので、開発担当部局(例えば都市政策部)に入ることも考えられる。その場合、開発行為に伴う事前協議が同部署内なのでスムーズに行える利点がある。ただ、文化財の保護と開発は本来対立する事業なので、この組み合わせは違和感がある。

博物館と文化財保護課は切っても切れない関係にある

一方で、自治体では博物館を持っている場合がある。博物館は図書館と並ぶ教育施設であり、一方で文化振興の拠点ともなり得る施設である。この博物館と文化財保護課は親戚のような関係で、業務においては互いを補完し合っている側面がある。そのような関係の博物館を文化財保護課と切り離すのは得策ではないだろう。その場合、博物館を文化財保護課とともに文化観光部局に入れるか、従来通り教育委員会所管として残すかの二択になるだろう。これはほとんど等閑視されているが、本来、博物館と図書館は生涯学習の両輪であり、相互に補完し合う関係になければならない。そう考えると、博物館と図書館を切り離すのも得策ではない。となると、文化財保護課は教育委員会所管のまま(すなわち現行のまま)が一番良いと考えられる。

https://www.isan-no-sekai.jp/feature/36_03


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