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両面宿儺
両面宿儺は『日本書紀』に登場する飛騨地方にいたとされる怪人である。その姿は以下のように記述されている。
「飛騨国にひとりの人がいた。宿儺という。一つの胴体に二つの顔があり、それぞれ反対側を向いていた。頭頂は合してうなじがなく、胴体のそれぞれに手足があり、膝はあるがひかがみと踵がなかった。力強く軽捷(けいしょう)で、左右に剣を帯び、四つの手で二張りの弓矢を用いた。そこで皇命(すめらみこと)に従わず、人民から略奪することを楽しんでいた。」
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ふたりの人間が背中合わせにくっついているような姿である。『日本書紀』『風土記』にしばしば現れる土蜘蛛と同様、その異形は、王化に服さない勢力に対する蔑視を込めた形容とも考えられる。もしかすると、本当は双子の兄弟で、軍事と行政といったように役割分担して飛騨を治めていた首長だったかもしれない。
『日本書紀』に登場する両面宿儺は反逆者として一方的に処断されるが、飛騨地方の伝説ではまた異なる。あるいは龍や悪鬼を退治し(高沢山・位山)、あるいは寺院の縁起に関わる(千光寺・善久寺・日龍峰寺)など、地域の英雄にふさわしい活躍を見せている。大和王権に抗した古代の豪族を、その土地の人々が尊崇し続けてきたかのようである。これらは寺社縁起に現れる宿儺像であり、伝承としてどこまで遡れるかはわからないが、為政者から見ると反逆者でも、地元の民衆から見れば英雄である、という事実を示してはいないだろうか。ものごとを見るとき、一面だけを見ていると誤った理解をしてしまうかもしれないという戒めとして、頭に入れておきたい。
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なお、頭部や腰が結合した状態で生まれてくる事例は現実にもあり(結合双生児)、したがって、ありえない存在ではないという。
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