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第72回: インドに続く道? "印道"の拓き方 (Jan.2023)

 あけましておめでとうございます。癸卯の2023年、実り多い良き年をご祈念されていることと存じます。

 前回投稿から丸1年。ベンガルール生活7年となった今でも「今度はそう来たか」と驚かされるJUGAADな出来事に尽きない当地だが、改めて筆を執ろうとすると概ね過去70回余の「JUGAADのススメ」のどこかに書いた気がする。ふとした瞬間に日本人的な振る舞いが出ることも少なくないが、概ね右か左かの大きな判断を誤ることはなくなった (と思いたい)。"印道" 入門時から数えれば既に干支も一回り以上、JUGAADな対応にも驚くばかりでなく、どんな場面で真似してやろうか考える余裕は出てきたが、まだまだ稽古が必要だ。茶や書や柔の道として馴染みのある思考回路・立ち居振る舞いとは対極に映る印道、日本の看板と使命を背負って当地を訪れる多くの駐在員には入門する前から強い拒絶反応も見える。

 2期2年を務めた自治体のインドデスクは3期目の提案を辞した。「海外販路拡大」のコンテキストではインドの魅力は伝え難く、欧米やASEANを勧めた方が顧客満足度が高いなら、敢えてわざわざインドを推す理由もない。値付け一つをとっても日本の製品・サービスがインド市場にフィットすることはまず稀だし、半世紀か少なくとも四半世紀は変わっていない日本企業の話は歴史の授業のネタにこそなれ、当地のビジネスパーソンの関心から遠い。買い付けや投資など「金の力を借りる」アプローチは分かり易いが、無意識の「当たり前」の基準が高い日本人は当地で思い通りのモノを得る術を心得ていない。"印道"の極意その1は「まず自らの理想を語る」ことだ。インドはグローバルの道場、常識も共通認識もない世界で細かい差異を逐一指摘始めたらキリがない。むしろ明確に「オレはこうしたい。どうやったら実現できるか」と指針を示して議論を始めることこそ、インド事業のはじめの一歩と言えよう。

 間口を広く構えて焦点が定まらない行政連携に替えて、「今のインド」をより立体的に伝える発信を強化した。クルマに代表される都市交通分野で、「ベンガルール通信」の連載に加えてResponse.jpで始めたのが「今のインド」モビリティの実態セミナー。社会課題に挑むプレイヤーの着眼点やアプローチのアイディアを推進者本人の生の言葉で伝えている。街角で見渡せば二輪・三輪・四輪、電動・内燃・人力・馬力、プライベート・ビジネス・パブリック・シェアード、と多彩な交通手段が目に入るが、生活習慣や経済事情が異なる利用者各人にとっての選択肢が多いわけではない。外国人が傍から眺めても分からない文化的境界・技術的制約、不都合・不便さの垣根を解消できれば散在するニーズや資本・資源を自社の事業基盤として取り込めるから、ここに機会を見出すスタートアップは多い。"印道"の極意その2は「独自の価値 (WOW Value) を示す」こと。日本の知恵や技術がインドの都市交通に貢献している事例は多いし、まだまだ眠っている貢献余地も多いはず。明確な理想を示して実現の鍵となるWOW Valueを示せば、JUGAADな仲間を得て実現に向けた歩みも進め易い。

 "印道"の極意その3は「意思と興味をもって試行錯誤する」こと。よもや今どきインドを左遷人事先と目する企業はないだろうが、インド嫌いを公言する日本の経営者は少なくない印象だ。数か月おきにいやいやながらの出張を繰り返したり、家族と離れて口に合わないスパイスまみれの食事を気に病む担当者では、自然と目に入る景色も記憶に残らない。複雑で広大な市場にWOW Valueを売り込むには類似製品の販路に乗せるだけでは済まないし、たまたま近くに見つけたインド人に任せて全てがうまくいくわけもない。流暢な日本語で近づいてくる者が誰の為にそう振る舞うかも明白だ。若手で経験不足でも、意思と興味をもって市場で動き回ることを厭わない配役が何より大切だ。

 2022年を振り返って当社が実践してきた "印道" の極意3つ。その成果としては「EV電池の二次利用」や「本業比率を高めるDX」に目鼻が付いたこと。2023年も大和合同会社は「インドでイノベーション!」を目指して "印道" に精進して参ります。本年もよろしくお願い申し上げます。

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