JUGAADのススメ - "今のインド" を知るヒント

JUGAAD = 割り切りによる型破り。直面する障害・制約を創意工夫で乗り越えようとす…

JUGAADのススメ - "今のインド" を知るヒント

JUGAAD = 割り切りによる型破り。直面する障害・制約を創意工夫で乗り越えようとするインドの精神・考え方。目的を簡潔に捉え、現実解を手早く重ねて成功を導くやり方 #インド #JUGAAD

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第1回: インドは “グローバル” の道場だ (Jul.2018)

 日本人・日本企業がもはや避けて通れない “グローバル” という言葉は、依然、ある種の憧れを伴って語られることが多いように感じる。“グローバル” とは何か、を考えるところから本コラムを始めたい。  グローバルを “海外” と訳す場合、言葉の定義からすればインドも当然にその範疇に入るはずだ。しかし一般に “海外赴任” には憧れても、“インド赴任” を羨ましがられた、という話は聞いたことがない。  外資系企業の社員は “グローバル” な人材だろうか?何となく英語が堪能で、世界

    • 第77回: 世界的EV不興の中の「EV先進国」インド (Mar.2024)

      2023年 (暦年) に150万台を記録したインドEV市場、結果、30万台を超えた「インドEV元年」の2021年からわずか2年で5倍増、ようやく一つの市場が確立したといえよう。背景に2011年以来、実に12年越しの中央政府による長期振興策があることは紛れもない事実だ。National Mission on Electric Mobility (2011)/ National Electric Mobility Mission Plan 2020 (2013) で明らかにされた

      有料
      300
      • 第76回: 南インドの極彩色、但し天然由来に限る (Mar.2024)

        日本で桜が咲く頃、南インド・ベンガルールも街のあちらこちらで「桜」 (Tabebuia Rosea) を見かける。ソメイヨシノより濃い河津桜のような色合い、偶に群生しているのも見かけるが概ね一本か二本の大木。蕾が緩んできたから満開まであと2週間くらいかな、などという情緒はなく気づけば満開。花弁一枚ずつひらひらと舞い散る、こともなくラッパ型の花ごとボテッと落ちる感じだから、風情を楽しむ余地は少ない。併せて、見渡せば紫 (Jacaranda) や橙や黄 (Delonix regi

        • 第75回: 2021年が「インドEV元年」となった社会背景 (Mar.2024)

          2023年 (暦年) は150万台を超えたインドEV販売 (登録) 台数、2022年の100万台から5割増し。2021年に30万台超を記録した際、前年2020年が疫病騒動下で冷え込んでいたことを割り引いてもなお明白な市場変化を感じて、「インドEV元年」と名付けたが、以来、市場は順当な成長を続けていることになる。殊に都市封鎖下をベンガルール都心で過ごした生活者としての経験からすれば、初めの数週間こそ混乱はあったものの、この社会の対応力の早さには目を見張るものがあった。その革新を

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        第1回: インドは “グローバル” の道場だ (Jul.2018)

          第74回: 「Global Southのど真ん中」で考える機会 (Mar.2024)

          ふと気付けば2024年も早3月。本年度はようやく、「『グローバル』を目指すならインドへ向かえ」という予てからのメッセージが現実化してきた。一年掛かりで戦略を練り武器を磨いて陣を敷き、いよいよ新年度からは具体的な商機を仕掛け、インドにプレゼンスを築く積極投資を始める、という日本企業も出てきた。これまで長らくインド市場に携わってきた企業の中にも、旧来型の製品販売や工場運営に止まらない、新規事業やイノベーションの機会を探る動きが目立って増えている。日本語メディアも少しずつインドをま

          第74回: 「Global Southのど真ん中」で考える機会 (Mar.2024)

          第73回: メタメタに考える技術を養う (Feb.2023)

          ChatGPTを試して素直に驚いたので、記しておこう。 当初、SNSでは珍回答を論う書き込みばかりだったから、カスタマーサービスを省人化するだけで顧客には返って不便でしかないチャットボットの類か、学校の先進性アピールには良いが裏側でひたすらスクリプト書きに追われる先生や授業時間をエラー修正に費やされる生徒には不満しか残らないRobot Teacherの類かと、あまり気に留めていなかった。ところが、なかなか興味深い回答例が目につき始め、つい試さずにはいられなくなった。 まず何

          第73回: メタメタに考える技術を養う (Feb.2023)

          第72回: インドに続く道? "印道"の拓き方 (Jan.2023)

           あけましておめでとうございます。癸卯の2023年、実り多い良き年をご祈念されていることと存じます。  前回投稿から丸1年。ベンガルール生活7年となった今でも「今度はそう来たか」と驚かされるJUGAADな出来事に尽きない当地だが、改めて筆を執ろうとすると概ね過去70回余の「JUGAADのススメ」のどこかに書いた気がする。ふとした瞬間に日本人的な振る舞いが出ることも少なくないが、概ね右か左かの大きな判断を誤ることはなくなった (と思いたい)。"印道" 入門時から数えれば既に干

          第72回: インドに続く道? "印道"の拓き方 (Jan.2023)

          第71回: 日本の作法・インドの作法 (Jan.2022)

           自宅から一時間強のワイナリーにレストランが出来たと聞き、クリスマスに尋ねてみた。自然たっぷりの広い敷地にオープンエアでセンスの良い内装・什器、好みを伝えてアラカルトで注文する限りは食事も十分に美味しい。今のところは4部屋が完成済みというが、宿泊施設やプールも順次増設している様子だから、経過観察も兼ねて何度か通わねばなるまい。葡萄畑に至る散歩コースは、手入れの行き届いた芝生の広場から始まり、蓮の花が咲く池に掛けられた橋を渡り、観賞用か食材用か鶏や七面鳥や兎が放し飼いにされるふ

          第71回: 日本の作法・インドの作法 (Jan.2022)

          第70回: 路傍の花 (Jun.2021)

           相次ぐサイクロンの影響もありまとまった雨が降る季節を経て、マンゴーの最盛期。黄緑赤紫の丸いのや平たいのや尖ったのが大中小とりどり、スーパーには毎週新たな香りと姿が現れる。地元の品種が一巡したかと思えば、国内の遠い地方からも続々と棚を賑やかし飽きることがない。隣家の料理番が篭いっぱいのマンゴーを持ってきて、喜んで受け取ったら今度は大ぶりの波羅蜜。暫くして再びマンゴー、と近所からも “今獲れ果実” が届く。よく手入れされたお屋敷の庭の、片隅の小屋に越して数か月。自宅で過ごす時間

          第69回: リモートワークをつなぐ先 (May.2021)

           日本では連日、インドの感染者数が報じられていた様子。天気予報や運勢占い以上に、毎日のメディアのネタとして欠かせなくなった“本日の陽性者数”。日本国内では数百かせいぜい千を超える程度だから “連日40万超” という桁違いの数字はインパクトがありそうだ。在留邦人は帰国も検討せよ、とのお触れだから、再び大半の駐在員が退避を開始。逼迫する当地の医療環境に対して日本政府は55億円相当の支援を表明し、そのお迎え便が続々と酸素発生器が届けている。これを機に長年過ごしたインドから引き揚げる

          第69回: リモートワークをつなぐ先 (May.2021)

          第68回: 選択肢のアリやナシや (Apr.2021)

           第二波襲来中のインド。二重・三重の変異株が報告され、「ワクチン外交」が一転、輸出凍結。加えてロシア製剤の導入・国産化も表明され、数週間の内に一気に180度以上の政策を転換を果たした。45歳以上が対象とされていたワクチン接種も今週から18歳以上に拡大、“Aarogya Setu” のワクチン用タブから登録すれば、近隣の会場が案内され外国人も数百円で受けられる。当地ベンガルールも4月下旬に向けて夜間と週末の外出禁止が発令されたかと思えば、最終週から2週間のロックダウンが宣告され

          第68回: 選択肢のアリやナシや (Apr.2021)

          第67回: めっちゃエエで! (Apr.2021)

           2020年3月末のロックダウン入りから1年が過ぎたこのタイミングで第二波襲来。夜10時以降は外出禁止のNight Curfewが発令され、新規開店のルーフトップレストランも従業員の帰宅時間に配慮して9時閉店。これまで何度となく再ロックダウンが囁かれたBengaluruだが、全域に強制措置が出されたのは一年ぶりだ。賑やかな日常が戻っていたが、思いがけず静かな夜が続き、同時に暑さも一段落。一雨降れば本格的なマンゴーシーズンの到来となりそうだ。現に目の前の青い実は日に日に育ってい

          第67回: めっちゃエエで! (Apr.2021)

          第66回: How Toでなく塩梅 (Jan.2021)

           世界的な活動制限下でも例年通り、32年目として継続実施されたという「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告」。インドは2010年以来、11年に渡って「長期的な有望国」として首位を堅持した。ここ数年は次点の中国に10%ptの差をつけた圧倒的な得票率だが、「長期的」には「今後10年程度」と注釈が付されているから、11年を経てもなお10年後が期待され続けるインドの魅力は圧倒的だ。日系メーカーは悠久の時が流れるインドの世界観を十分に理解している、ということだろう。  「中

          第66回: How Toでなく塩梅 (Jan.2021)

          第65回: シンクロする時間と空間 (Oct.2020)

           明け方にしっかりまとまって降る季節を迎え、深夜から午前いっぱい続く隣地からの鶏鳴も大音量で夜明けを告げるコーランも、雨音に掻き消されてゆっくり起きられる。年中無休でTシャツ・短パン・ギョサンの身、路肩の土埃が舞わず “落し物” も洗い流された朝は実に心地よいが、20度を切れば人々はダウンを着込み毛糸の帽子を被り、ちっチャイグラスを両手で覆って暖を取っている。  秋の祭事シーズンがいよいよ本格化、九夜十日に渡る前哨戦 (?) がBengaluruを生んだ王様の本拠地である隣

          第65回: シンクロする時間と空間 (Oct.2020)

          第64回: 土俵を変える準備体操 (Oct.2020)

           “未知のインド” を案内する際、どこから話を始めるべきか悩むことが多い。何度かやりとりして背景や意図が理解できれば求める情報も想定が付くが、問われている文字面通りの質問ならメールの体裁を整える間に検索もできたはず。数か国を対象とした横並び比較の一候補だったり、国・自治体への報告・提言だったり、後の積極的な活動を導く為の予備調査も多いがこれらの場合、まずは “準備体操” を通じて頭を柔らかくするよう薦めている。  “ミニ・グローバル” であるインド市場は異種格闘技戦、早い者

          第64回: 土俵を変える準備体操 (Oct.2020)

          第63回: Innovationの道? (Oct.2020)

           見覚えのない番号に出ると “再開したよ、いつ来る?” と近所のマイクロブリュワリー。いざ訪れれば貸し切り状態だったり目当ての味がなかったりもするが、やはり気分は違う。引き籠り当初は数日分まとめて遠慮がちに使っていた宅配サービスも、今や各種アプリを使い分け日に3便・5便届くのが常態。Lockdownで路肩が露になってから発注されたであろう道路工事は、車両が戻り始めた今頃になって掘削が本格化、街の活気を増幅している。長らく犬や猫や鶏や人の寝床となっていた土管の山は消えたが、“手