第14回: Innovation in India !! (Jan.2019)

 あけましておめでとうございます。実り多い良き年をご祈念されていることと存じます。

 2018年、当社は日本の技術のグローバル化をテーマに “Innovation in India !!” プログラムを始めた。まずはeMobilityの分野から、日本の革新技術を持ち込み、インド市場をターゲットにプロトタイプし、製品化・量産化する企画を進めている。かつて、日本の現場や研究所で “光る技術” を発掘し、欧米の先端研究所やベンチャー企業と競争力を形にし、中国・新興国の国策企業・現地財閥と協業して市場に展開する、という一連の活動を提案・実践した経験からすれば、殊に日本企業・日本人が付き合う上で今のインドは “研究開発の場” と捉えるのが最も馴染む。

 人口13億の巨大市場を狙うには “コストを1/10にして100倍の数量を売る“ アプローチが不可欠だが、本気で取り組む企業は少ない。東南アジアの先にある低コスト生産拠点と期待しても、品質や労務の管理は一筋縄にいかない。IT人材やスタートアップといっても、日本企業の即戦力にはなり得ない。日本からの視察を重ねた上で思い切ってインド進出をしてはみたものの、中途半端な戦略や覚悟の下で現地の駐在員がひたすら奔走している、というのはよく目にする光景だ。

 先日、懇意にしている工科大学MBA学科が手掛けるカンファレンスに呼ばれた。“International Conference on Innovative Practice in Management & Entrepreneurship” と題された機会にパネリストとして登壇したが、そこでの議論は正に今のインドを反映した興味深いものであった。

 マレーシアから参加した教授が “テクノロジー起点の学習が欠かせない現代、イノベーション起点の学習、起業家精神起点の学習も必須になる” と指摘すると、ある学生は履修中の “伝統的なMBAプログラム” がどこまで実社会で通用するか、という素朴な疑問を示した。現役講師が、学生が授業に積極的に関与する姿勢が薄いことに懸念を示すと、別のMBA校の学長は学卒直後にMBAに進む “Green MBA” よりも一定の社会経験を経た上での履修が有効だ、と述べた。実務家としての視点を求められ、“プログラミングを学んだ者で自らアプリを開発した者はいるか? 機械や電気を学んだ者でバイクを自分で修理する者は?” と問うたが、百数十名中、ほんの数名の手が挙がったのみだった。“インドのJUGAADと日本式モノづくりの精神をどう融合できるか” という問題提起が会場からあり、正に “Innovation in India !!” プログラムとして挑戦しているテーマだ、と答えた。

 当社がベラルーシからの技術教育導入を支援する別の大学からは、企業が抱えるテーマについて教授や学生と共同研究の機会を作れないか、とかねてから相談を受けている。現に米国企業と開発した特許技術をプロトタイプし、同社のグローバルネットワークを通じて臨床研究し、農村向け診断機器として製品化する、というプロジェクトが進められている。莫大な潜在ニーズを見据え、得意のJUGAADで市場開拓しよう、という活動だが、核となる革新的な技術そのものや、試作をはじめ丁寧に製品化まで導く手法は、日本企業など外部の誰かに支援してもらうことを期待している、という。

 翻って日本。先行して製品化されている技術との差異や競争力、既存の技術標準や各種規制との兼ね合いから “商業化投資に見合わない” として日の目を見ない技術が多く眠っている。中小企業が公的資金を得て海外で実証実験を行ったまではいいが、その先の事業化投資が得られずにお蔵入りしているケースも少なくない。

 そこかしこに未充足ニーズが溢れ、技術標準の確立や規制の整備もこれからのインドには、優秀な頭脳とJUGAADの精神と、更に研究開発を協同できる環境まで揃っている。日本で想定するより桁違いに少ない投資で桁違いに大きな市場を狙える “Innovation in India !!”、挑戦しない理由はない。

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