9. 究極のブレストプル #2 -スピード編-
「速さ」を「1ストロークにまで分解」して考えれば、
「最速スピードが出ている時間をどれだけ長く作り出せるか」
が、速さのカギになる。
ブレストの場合、「キックを蹴り終わると最速スピードが出る」から、この「フラットな姿勢」を長く維持して失速を避ければ、スピードが出る。
そう言われた時、「ストリームラインで伸びてる時間だけ」を考えてる選手は、その「思考の浅さ」で負ける。
競泳は、「ZEROコンマ秒」を競っている。ザックリとした思考で勝とうなんて甘い。
体を動かしてるのは、君の脳ミソだ。
「フラットな姿勢」には「手を横に開き終わるまで」の「動作」が含まれる。
「ブレスト ストロークの失速」が「始まる」のは、開き切った腕を内側にグルッと反転させて、
「呼吸動作に移行しようと顔を正面に向け始めた、まさにこの瞬間」から始まる。
「呼吸開始ギリギリの瞬間まで」は、水面に僕の姿が映り込んでしまうほど「水は安定」し、
「まっすぐ伸びたままの下半身」は「胸の厚み内」に収まっていて、
水流の乱れは発生しない。
「なんだ、手を開き終わるまで、真っ直ぐな姿勢を維持してればいいんでしょ」なんて簡単な話ではない。やってみると分かる。
普通に腕を横に開いたら、開いた瞬間からスカーリング効果で上半身が起き上がり始める。
上体が浮き上がり始めると下半身が落ちるから、ビザが曲がり始めて、キックの引き付けタイミングが早まってしまい、大失速する。
この浮き上がり問題に対策を打たなければ、「腕を開き切るまで、水中でフラットな姿勢を維持する」なんて事はできない。
この対策がまた、「また」だよ、ストリームライン水流にある。
そう。「スイマー補完計画」で説明した「背中側に流し込んで浮き上がりを抑え込む水流」、これを利用して「浮き上がる上半身に蓋」をする。
これねぇ、簡単そうに見えて難しい。
文字ではうまく表現出来ないんだけど、「肩をゴム状に外した状態」でストリームラインに入って、「胸は水中に押し込む」けど「腕は軽く水面に置くだけ」にしないと、腕や背中の動きを肩で吸収できなくて、フラットな姿勢を維持できない。
ダメだ。文字で表現しようと頑張ったけど、うまく伝えられない。ごめんね。
雑な表現になるけど、君の頭の中に作った3Dイメージを動かして解析してね。
「ミゾオチを押し込むと、浮心を支点にして背中の筋肉が使えるようになるから、背中の筋肉で"肘"をグルッと回すと、"脇"に水が挟まって、スポッと起き上がれる」
これが気持ちいい。水面に吸い付いた背中がスポッと外れて水上に起き上がる。もうね、これ最高よ。
この「ゴム状に外した肩」で「背中」と「腕」を連動させるプル動作は、フリー、バタ、バックでも同じで、このテクニックを「ひとカキひと蹴り」で使うと、こんなに進みます。
「でも・・・やっぱり掻いた方が、進むんじゃないの?」って、信じられないんだよね。
手をグィッと掻いた方が、進んでる気がするもんね。頑張った気になれるもんね。
じゃぁ、頑張って掻いてみようよ。比べてみようよ。何事も実験は大事。化学者の基本。
ほら、肘が後ろに下がり過ぎ。こんなに後ろまで肘を引っ張ったら、バックキックだけでは腕を伸ばし切れない。
「究極のブレストプル #1 ー動作編ー」のタオル実験を見て分かるように、起き上がった上体の「高さ」は、「お尻のスライド距離と比例」しているから、
そんなに後ろまで手を引っ張って前に乗り込んでも、お尻はもう前には動かないし、引っ張り過ぎた「ムダ」は「手を前に突き出すリカバリー動作」をしなくちゃ伸ばせない。大失速する。
「肘」は胸より後ろに引いたらダメ!引かない!開いて閉じるだけ!
「究極のブレストプル #1 ー動作編ー」で説明したけど、「肘を引いてるように見えるのは目の錯覚」で、「胸の方が肘に近づいてる」のよ。
「開いて、閉じて、開く」から手を前に突き出す事なく、腕が伸ばせる。
「突き出す動作」は、「手じゃなく」て「胸」。その反動でバックキックする。
「上半身が前に乗り込んだら強いキックが打てない」って説明は、「究極のブレストキック #2 ースピード編ー」でしたから分かると思うけど、
「腕を引っ張って疲労したあげく、水の抵抗を受けながら手を前に突き出して、しかも強いキックが打てない」のに、ラスト50Mで勝負する体力が残ると思う?
ちなみに、「練習を積んで持久力をつければ克服できるでしょ」なんて精神論は通用しないよ。
苦しい練習なんて、他のみんなもやってる。「やらなきゃ負ける」ってだけのこと。
誰だって一所懸命、生きてる。
「じゃぁ、プルで進まなくていいの? それで世界記録が狙えるの?」って思う人は、「伏し浮き」を忘れてる。
伏し浮きをしてる時、手先を数ミリ動かすだけで前に進むんだから、開いて閉じれば、ものすごく前に進む。
しかも、「前に突き出すリカバリー動作が不要で抵抗が少ない」から、開いて閉じれば、進む気がなくたって勝手に進んじゃう。
勝手に進んじゃうプルは放っておいて、その時間は「バックキックの加速」に集中する。
もちろん僕も、気持ちはすごく分かるよ。
レースになると体が勝手に闘争心をムキ出しにしてきて頑張ろうとするから、代表選手や世界記録を出すような高いレベルの選手でもこの罠にハマって、ラスト50Mで失速する。
だからこそ、本当に気を付けないと、危ない。「引っ張りたい気持ち」を抑えるには勇気がいる。
勇気はいるんだけど、快感のご褒美もあるんだよ。ラッキー。
プルで発生した「渦巻き水流(10年前に大和部屋で解説済)」が、お腹、骨盤、太モモ、膝、スネ、足先へと肌の表面を撫でるように伝わりながら、下半身を押し上げてくれる。
この「コロコロ渦巻き水流」は、「足を蹴り伸ばすタイミング」を「コロコロ感覚で検知できる便利な機能」も持ってるけど、これがねぇ!気持ち、イイ!
快感をバカにしちゃいけないよ。
優勝した選手、一番速いタイムで泳いだんだから一番疲れてるはずなのに、一番元気でしょ?
快感だからだよ。脳が騙されて「苦痛」を「快感」にスリ替えちゃう。
苦痛だから苦しいんじゃない。快感を感じてないから苦しいんだよ。
「練習中のタイム」、「レースのラップタイム」、そういった「理屈」は自信にはなるけど、苦痛には耐えられない。
実際の泳ぎに快感を感じなくちゃ。それが「速さの源」よ。
もっと楽しもうよ、競泳。思ってるより、人生、短いぞ。
produced by yamato bear. 2021.05.29
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