見出し画像

うさぎは猫に嫉妬する

うさぎは繊細でショックに弱いので、すぐに死んでしまう。

うさぎは寂しがり屋で、人の温もりがないとすぐに死んでしまう。

なのにうさぎは人見知りで、警戒心が強く、威嚇をして人を寄せつけない。


猫は気ままでわがままだ。

人にはベタベタと甘えるくせに、すぐにそっぽを向いて、何事も無かったように去っていく。

猫は強い。

危険を察知すると、すぐ人に噛み付いて、逃げ足だけはとても速い。

なのにうさぎよりも甘え上手で、無神経だ。

うさぎは猫に嫉妬している。


けれどうさぎは、猫のことを何も知らない。

猫がどんなに辛い人生を送っているのか、どんなことを考えているのか、何も知らない。

うさぎはそのことを理解していた。

理解してもなお、嫉妬していた。

うさぎは猫になりたかったのだ。


うさぎは考えた。

猫になれないうさぎは、誰よりも努力をして、猫になろうとした。

猫より足は短いし、ビビりだけれど。

それでもうさぎには、考える力があった。

考えて考えて、猫よりも賢いうさぎになろうとした。


運がいいことに、うさぎは思い込みが激しかった。

自分を猫だと思い込んでいたら、猫のような気がしてしまうのだ。

だからうさぎは、猫になれたつもりで嬉しかった。


けど、ふとした時にうさぎを襲う虚無感は、猫に対する劣等感だった。

所詮、自分はうさぎである。

到底、猫には適わない。

だからうさぎは、うさぎを受け入れてくれる飼い主を見つけることにした。

猫ではなく、うさぎとして愛されようと思った。


猫になりたかった、うさぎより。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?