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映画レビュー「コット、はじまりの夏」

なんとなく懐かしさを感じた映画。
こんな作品を昔観た錯覚に陥る。
それはどうだろう。
もう30年も40年も前の作品。

実際はあり得ないが、小さな子供が親の愛情を感じる作品はどんな時代でも公開される。
不変的なテーマであるのは間違いない。

舞台は1980年代初頭のアイルランド。
9歳の少女コットの取り巻く環境を描く。
80年代のアイルランドが経済的にどんな国だったかは分からないが、
田舎町は裕福ではないのは容易に想像できる。

大家族ともなれば生活していくのがやっと。
そして、多くの場合、一家の主はろくでなし。
コットの父親もあまり仕事をしない飲んだくれのギャンブル好き。
いつも子供にはきつくあたる。

その時点でコットは大人に対して不信感を抱く。
同時に親の愛情を欲する。
純粋がゆえに、上手く表現することができない。

つくづく感じる。
どんな親かによって子供は健康的にすくすく育つのか、屈折していくのかが決まる。
子供のせいではなく親のせい。
それは万国共通。

ここまでだと不幸を描く重い作品になるが、そうではない。
夏休みに親戚夫婦の預けられたことでいい変化が生まれる。
必要なのは愛情。
言葉も感情表現も上手い叔母と言葉も少なく感情表現も下手な叔父。
それでも伝わるものは伝わる。

夏休みの何気ない日常が一人の少女を変えていく。
少しずつ会話が生まれ、表情が明るくなり、行動が活発になる。
得意なことにも積極的に取り組む。
観ているこちらが嬉しくなる。

夏休みが終わり、親元に帰った時にどうなるか。
想像はたやすい。
よくあるパターン。

しかし、ここを見逃してはならない。
その行動に、その言葉に僕らの涙腺は・・・。
あの言葉は誰に発しているのだろう。

大人と子供の関係は不変。
どんな時代でも変わらない。
本作はベルリン国際映画祭で子どもが主役の映画を対象にした部門でグランプリを受賞。
また、第95回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートもされた。

9歳のコットを演じたキャサリン・クリンチがメチャ可愛い。
表情もとても繊細。
ぐっと引き寄せられる。

子供を使って泣かせる作品はインチキだと思うが、そんなインチキを僕は許す。
いつどんな時でもたっぷりの愛情で子供には接したいね。

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