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映画レビュー「エドガルド・モルターラ ある少年の数奇な運命」

今年は実話をベースにした注目すべき作品が多い。
本作もその一つ。
1850年代のイタリアでカトリック教会が7歳になる少年を連れ去り、
世界で論争を巻き起こした史実をベースにしている。

解説を読んだだけでは、何のこっちゃ?と思ってしまう。
映画を観てストーリーは理解したが、問題の大きさは半分も理解していないと感じた。
まずは置かれた環境。

無宗教に近い仏教徒の僕では宗教の持つ力や影響力があまり認識できていない。
洗礼という儀式の重さもあとで調べて分かっただけ。
洗礼が一人の人間を大きく変えてしまう。

ユダヤ教やカトリック教会が置かれた歴史や背景も密接に関わるため、
単に少年を誘拐し騒ぎになっただけでは片づけられない。
どこまで大きな問題なのかと・・・。

それは遠い国の遠い昔の出来事と捉えるからイメージできないだけのこと。
身近に例えれば分かりやすいのかも。
オウム真理教のような新興宗教に子供をさらわれ洗脳されて、
思うがままに動かされたらどうだろう。

とてつもなく恐ろしいし、救い出したいと思うのが正常。
権力を持つ巨大な組織だから正しいものに見えるだけで実態は変わらない。
そんなこともいえると思う。

実際に少年エドガルトの行動を追えば、なんら新興宗教の洗脳と変わらない。
それはいつの時代でも起きること。
思想が行動を変え、最悪の場合、戦争を引き起こす。
今、世界中のあちこちで起きている紛争も元をただせば繋がっていくのか。

あくまでも正しいのは自分たち。
弱い僕らはいつも犠牲になってしまう。
本作が今、公開されるのも大きな意味があり、そんなことも間接的に表現したいのかな・・・。

原題はRapito。
訳すと強奪されたとか、誘拐された。
誘拐されて泣いていた7歳のエドガルトの表情が全て。
純粋無垢な表情は大人になっても変わらないが、大切なものはいつの間にか変わる。

実話だけに説得力があるんだろうね。
映画は無知な僕に思想の怖さを教えてくれた。
感謝ですね。

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