見出し画像

250人の対面,いやハイブリッド授業

 後期の教養科目は,対面で実施すると決めていた。正しく言えば,オンラインと対面を同時に開講するタイプのハイブリッド授業だ。理由は簡単で,これからの大学教育はこれがスタンダードになると考えているからである。

 たとえ今年度中に新型コロナウィルスのワクチンができたとして,来年度から対面授業に戻せる状態になったとしても,オンラインの高い教育効果や多様な学習スタイルを放棄するという選択肢は上がってこないだろう。実験や実習なども現在の技術では対面じゃないとできないだろうが,必ず対面でやらねばならない必要性がない限りは,対面に戻したとしてもオンラインでもできる技術の開発を同時に進めるべきだ。

 テレビや新聞などでは対面授業を希望する学生の声が取り上げられやすいが,授業はオンラインでも良い,オンラインの方が良いと考えている学生だっている。私の授業への参加形態について希望を取ってみたところ,回答者の約25%はオンラインで受講したいとのことだった。

受講形態の希望

 これにはさまざまな理由が考えられる。新型コロナウィルスの感染リスクを避けたい,講義中心授業なのでオンラインで十分だ,朝一授業なのでオンラインの方が楽だ,大学へ行くことに心理的負担があるなど。

 ここでもう一つ注目したいのは,参加形態の希望で最も多かった回答は「基本的にZoomで受講したいが,吹雪の日などはZoomで受講したい」という結果である。皆さんならこれをどう受け止めるだろうか。私は大いに結構なことだと思う。受講生にも私にも,そして吹雪だからZoom受講に切り替える本人にとっても,誰の不利益にもならない。天候のせいで遅れる,あるいは欠席するよりもよっぽど良いではないか。

 それでは,対面で受講することのメリットは何だろうか。授業で疑問に思ったことを他の受講生に相談できる,授業後すぐ教員に質問できる,これはオンラインよりも良い点だと思う。たとえオンラインで授業中にブレイクアウトルームを作って学生同士で疑問点を話し合う時間を取ったり,教員への質問時間を取ったとしても,対面の方がコミュニケーションの気軽さでは勝るだろう。
 その他には,他の受講生が見えるところで一緒に受講するとより没頭できる,教室という場所で受講すると気持ちの切り替えができる,パソコンの画面を見るよりも目が疲れなくて良い,友人と会って話せるなど,人によって様々なメリットがあるだろう。

 いまここで取り上げている講義中心の授業(大学の授業は講義,演習,実験,実習に分類される)の場合は,このような形のハイブリッド,すなわち対面で授業を実施し,同時にZoom等でオンライン配信するタイプ(Hybrid-Flexible:ハイフレックス型)が最も適しているのではないだろうか。

 とはいえ,対面とオンラインの両方の学生に目を配りながら授業をするのは大変だろうし,一人では難しい面もある。Zoomの操作,講義中の自分を撮影するカメラの操作などは,やはり自分でやるのではなく補助スタッフをつけたいところだ。また,対面での資料配布,マイクを使った学生の発表をどうするか,まだ対応を決めかねている部分もある。教室調整の関係で対面授業は第3週目からなので,もう少し検討して決めたい。

 それから,前期同様に講義部分は予習動画にして,授業中の講義時間を減らそうと考えていたが,CommentScreenの可能性を見て,考えが変わりつつある。事前にしっかり理解するまで繰り返し講義動画を見てもらってから,授業に出てさらに理解を深めるのは良いのだが,予習動画の作成にものすごく時間がかかる。一方で,CommentScreenを使えば,受講生と対話しながら講義を進めることができるので,難しいところもフォローしやすいだろう。それでも十分理解できなかった人のために,事前動画ではなく,授業動画をアーカイブとして公開する。これなら,「いつでもどこでも何度でも」のオンデマンド教材の良さは,事前視聴から事後視聴にシフトするだけだ。動画教材の作成時間が減る分,学生へのフィードバックにより時間を使えることになる。全員が確実に予習動画を見て授業に参加するのであれば,予習動画の方が良いかもしれない。学生にとってはどちらが良いだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?