農協の営農指導について

農協の営農指導の力が落ちているという話は、農家であれば同意せざるを得ない話題だと思います。
元農薬メーカーとして、色々な農協の営農指導員の方々と会って話をしましたが、ちゃんとやってる農協ももちろんあります。
自分が受け持って対等な知識レベルで話をさせてもらえると、話していてとても気持ちが良かったです。

しかし、多くの農協、体感では70%くらいの農協では営農指導力が落ちているという認識です。
これらの農協で多く話を聞くのが「営農指導員はお金を生まない」という話です。
驚くほど共通して同じ話を聞くので、おそらく「営農指導の評価をどうしたらいいか分からん」という管理層が非常に多いのでしょう。

では共通して営農指導に力を入れている農協が何を言っているかというと、「指導員がしっかりしてないと農家がついてこない」という話です。
これについては農家の立場からすると「ごもっとも」という感じです。
農家でない人がこれを読まれても納得されるのではないでしょうか?

さらに営農指導に力を入れている農協の共通点は何かと考えると、「農業が基幹産業となっている市町村」の農協であったり、言い換えると「他に産業がない田舎」の農協であったりします。
農協を金融面で見ると、どうやってお金を集めるか、という戦略によって営農指導、引いては農業がどれくらい重要視されるかが決まってきます。
例えば人口が減ってきている地域の農協では給与を口座に入れる人が少なく、保険商品を売る相手がいないわけで、農協の口座の残高を増やすためには農作物を売って外貨を稼ぐという手法への依存度が上がります。
また農業が基幹産業として成り立っている地域でも、その売上高は決して無視できる金額ではないので、農協の口座に入れてもらいたいわけです。

一方で都市部の農協では、農業従事者ではない人からのお金(保険商品や年金受け取りなど)への依存度が上がってくるため、営農分野に力を入れる必要がなくなってくるわけです。
人口様々ですね。

そんな中で我が実家の農協「JAとぴあ浜松」農協は10年くらい前に方針を大転換し、営農指導に力を入れるようになりました。
逆にいうとそれまでは営農分野は二の次、貯金と保険で成り立つ農協だったわけです。これは親戚や農家の家の友達からの話が根拠なので、そんなことないと言われる方もいらっしゃるかもしれません。
ちゃんと農協をやる、というトップダウンの指示があり、営農指導について体制を階級性にして部下に営農指導の教育をしたり、情報共有しやすいようにアプリとタブレット端末を導入したり、外部コンサルを使うようになったり、資材をネットで注文出来るようにしたりと色々取り組まれてきてました。
今では県内でもちゃんとしてる農協として認知されているのではないでしょうか。
お隣にスーパー営農指導農協である「JAみっかび」があることも変化の原因の1つかもしれません。

浜松市は政令指定都市になりましたが、現在は人口70万人代だったはずです。恐ろしいスピードで人口が減っていっています。
浜松市の未来を考えたところで、いつまでも人口にものを言わせた金融農協が成り立たないというビジョンが見えたのかもしれません。

現在住んでいる静岡県富士市は今年4月から広域農協であるJAふじ伊豆になりました。今のところ大きく変わったことはありませんが、来年から色々変わっていくと思いますので、少し動向を注意したいと思ってます。

具体的に営農指導という内容に入っていきたいと思います。
営農指導とは作物を栽培、収穫し販売するために必要なことをアドバイス出来ることだと考えています。
ポイントは販売するため、というところだと思っていまして、「どう販売するかによってアドバイスの内容が変わる」ことに対応出来るかどうかだと言い換えられると思ってます。販売形態(共販、産直、飲食店etc)、出荷時期、それに関わる肥培管理、注意すべきポイント、発生が予想される病害虫、などを項目として、相手に合わせて話をすることが出来ることが望ましいです。
例えばですが、「この時期に収穫できるブロッコリーの品種は?」とか、「今の時期の追肥に向く肥料は?」、「防除した方がいい?やるなら何がいい?」とか種、肥料、農薬だとこんな感じの質問がくるときに適切な回答を出来るかどうかという感じでしょうか。

新入職員に最初からこれをやれというのはどうしても難しいと思いますが、3~5年目くらいの職員は指導までいかなくても農家が言ってることが分かるくらいになって欲しいです。

前述した営農指導に力を入れている農協は職員を県の試験場や他産地に長期の研修に出す所があります。
これは人件費を考えるとなかなか出来ることではありませんが、これをコンスタントに出来る農協は強いです。
現場で地元の農家から学ぶことも大事ですが、基本的な考え方やポイントをアカデミックに学ぶことは、情報を伝える側になったときに整理された状態で伝えることが出来ます。また現場で学ぶとそれを疑わないということになり、実は見当違いな見方をしていたということも有り得てしまいます。
なので、しっかりとした研修を比較的長期間にかけて行うことが営農指導力を高めていると考えています。

是非農協には営農指導の強化を図ってもらいたいですし、そこに危機感を覚えてもらいたいです。

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