じっくりコトコト、温まるココロ。

冬の朝は寒い。玄関から出て、数メートル歩いたとき、手袋を忘れたことに気がついていた。まあなんとかなるかと軽く考えて、取りに戻らなかった自分を責めたい。手が凍るように冷たい。

口で息を吹きかけて温めても、ポケットに突っ込んでこすっても、どうにもならないくらいに手がかじかんでいる。こんなときは温かい飲み物を買わなければ厳しい。

仕事の前に、一息つきたい。寒い中で通勤してきた自分へのご褒美に。心に余裕をもたせるために。

自販機の前に立ち、一番下の段に並ぶ「あったか～い」の飲み物を眺めていた。選んだのはじっくりコトコトのコーンスープ缶。昔から好きだったし、温かい飲み物（スープ）を飲んで、身体を温めたかった。

あとは朝ごはんを食べてなかったから、少しお腹を満たしたかった。だからなんとなくコーヒーより、コーンスープに目がいった。

温かい缶を抱きかかえながら、オフィスへと向かった。
朝1番のりのオフィスは静かで落ち着いているが、早すぎて暖房もついていない。

朝から温かいコーンスープを飲んで、ゆったりとした時間だ。
心も身体も温めることができる…至福の時間だとも思った。

缶を回しながらコーンスープを飲んだ。
最後までコーンの粒を残さずに飲むコツは、
缶を回しながら飲むということをどこかで聞いたからだ。

回しながら缶を見ていると、キャッチコピーが書いてあることに気がついた。普段意識してないので気が付かなかったが、今日はふと目についたのだ。

「コバラもココロもほっとする」

驚いた。
そのとおりに感じていたから。
まんまと買わされていたことに気がついたから。

消費者の気持ちを考えた、ターゲット層のどストライク心理になっていたのだ。これは一本とられたなぁという気持ちになった。なぜか笑いが止まらなかった。1人のオフィスに声が響く。

職業柄、マーケティングの知識はつけていかなければならない。
消費者心理をしっかりと調査されている素敵な商品だと感じたから、参考にしたいなとも思った。

まあただそんなことに気が付かなくても、これが一番うまいから、
このコーンスープがうまいから。これからもファンでいる。

寒い冬のおともに、じっくりコトコト。あたたまるココロ。